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このままだと悪役令嬢確定となりそうです

灯りをつけすぎるとバレそうなので、窓際の机に座り、カーテンを、思いきってあげてみた。割と綺麗な月が出ていて、それなりに書き物が出来そうな明るさだった。庭を警備している人がいるようだけど、窓をあけなければバレないだろう。

私は、静かに引き出しを開けてノートを取りだした。鍵のかかったノートは、本来日記を書くためのものらしい。似たようなノートが引き出しにしまわれていて、今までのアンネローゼの日記が書かれている。書いてあることはたわいもないこと。

「1年で1冊って感じなのかな」

独り言が出てしまう。なかなか贅沢な使い方。でも、誕生日から書き始めてるから、誕生日プレゼントなのかもしれない。今は、15歳のノートに書き込まれている。今度の誕生日に新しいノートが貰えるのだろう。

「さて、思い出したことを書いていこう」

今日の日付を書いて、出来事を書き込む。転生のこと、事故のこと、自分の名前。忘れないように書いていく。もしかすると、この世界に馴染んでいったら忘れてしまうかもしれないから。

あとは、乙女ゲームの相関図。

古い日記を、開いてみると、やっぱり書いてあった。

12歳の時に、王子と婚約をしている。王子は乙女ゲームの設定と同じ2歳年上だ。今、私は15歳で、学校に通っている。つまり、1年生。相手の王子は3年生。

「うん?ゲームが、進行中ってことは…」

主人公と王子は出会ってる?

いや、まて、確か……攻略対象1番目の王子は、婚約者(私アンネローゼ)がいる上に、同じ学校にいるのが1年しかないと言う、高難易度だった!だから、普通にプレイしていたらまず不可能。恐ろしい勢で自分のスキルを上げまくらなくては攻略出来なかったはず!

もし、もし仮に、主人公が攻略しようとしていたらかなりまずい。だって、私アンネローゼは、乗馬が出来ない。勉強も、未来の王妃と言われながら全くやってない。わがまま令嬢なんだもん!

「まずいわ、これはまずい」

明日、確認しなくては!

私は決意を胸に眠りについた。



翌朝、当たり前だけど父と母、つまり公爵夫婦はものすごーく私を心配していた。そりや、学校帰りの馬車の中で一人娘が気絶したんだからね。まぁ、でも、私は健康です。

当たり障りのない返事をして、朝食を終えると自室に戻り学校に行く身支度を整える。

制服のスカートの中に、パニエを履いているのだが、これが何だかよろしくない。

「ねぇ、リリス」

私は、着替えを手伝ってくれているリリスに声をかけた。

「はい、なんでしょう?」

リリスは、手を止めて私の顔を見た。

「ねぇ、このパニエ、履かなくても良くない?」

私の申し出に、リリスは絶句していた。



どうやら貴族の令嬢は、制服のスカートの中にパニエを履くのが普通だったらしい。履いていないのは平民の生徒たち。そう言う習わしになっているようで、私が履かない。と言い出したのがかなり衝撃的だったようだ。

が、昨日馬車の中で気絶したのが暑かったから。ということにしたら、アンネローゼ様のお体のため、とあっさり承諾してくれた。

パニエを履かないと、馬車の乗り心地が違った。お尻の乗り心地が大変よろしいのだ。これならクッションはいらない。

「あれ一枚ないだけで快適だわァ」

私は思わず声に出してしまった。慌ててリリスをみたけれど、リリスは特に気にして様子もなく、にっこりと微笑んでくれた。「よかったですね」って



学校に着いてからは、リリスとゆっくりとした足取りで教室にむかった。そんなとき、1枚の掲示物が私の目に止まった。

「ダンスパーティー?」

掲示物をよく読むと、1年の終わりに全校生徒で催される学校1番のスペシャルイベントの告知だった。

そうして、私の記憶はまた蘇る。こ、これは!これこそ下克上イベントのクライマックス!主人公が悪役令嬢アンネローゼの婚約者である王子を、パートナーに指名して参加するダンスパーティーではないか!

これだ、これなのだ。

1番の攻略対象である王子を、陥落させるスペシャルイベント!なぜ、平民の主人公が、婚約者のいる王子をパートナーに指名できるのか?それは、校内テストで1番の成績を取ったから!そう、主人公の聡明さと気高さ、そして、内面から出る美しさに王子は惚れてしまうのだ!そうして、何にもできない悪役令嬢に成り下がったアンネローゼを見限るのである。

まずい!まずいわ。

「アンネローゼ様?」

掲示物を、前に微動打にしない私にリリスがためらいがちに声をかけてきた。

「あ、ねぇ、リリス」

私はとっさに取り繕うつもりだったが、

「この告知だけど、今の段階で可能性の高い生徒は誰なのか知ってる?」

悪役令嬢の破滅回避のために、私はリリスに聞いてみた。

「今、ですか?」

リリスは怪訝な顔をした。私が突然こんなものに興味を示したのが不審だったようだ。

「たしか、平民の……」

「かしこまりました。お調べします」

私が言い終わる前にリリスは承諾してくれた。さすがは公爵家のメイドさんだ。私が何をしたいのか察してくれたようだ。

リリスが学校の成績を調べてくれるので、とりあえず私は授業に集中でき……た?

いや、国語と数学?はなんとかなるけれど、問題は政治と経済と歴史。やっっばいぐらいにわけがわからない!これでは悪役令嬢へまっしぐらだ!



お昼休み、垣根の中の木の下で読書をするのが私の日課、らしい。本を読むのが好きなのに、勉強が出来ないとは……まぁ、読んでる本が恋愛小説とか詩集なんだよね、さすがは令嬢だわ。

リリスが調べた情報を確認して、やっぱり。とうなだれるしか無かった。

そう、今現在成績優秀者ベストテンに主人公が入っているのだ。もちろん、1番の攻略対象である王子がいるのは当たり前なのだが、他の攻略対象もいる。

「平民なのに、乗馬ができるって、明らかに狙ってるわ」

ボソッと独り言がもれた。

「平民は、馬に乗れないのか?この世界」

それに対して、誰かが、反応した。

「誰?」

私はとっさにメモ帳を隠した。

そんなこと言うなんて、このゲームの世界に私以外の転生者がいたのだ。

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