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みえにくいアヒルの子

作者: 零位雫記

とある森の池のほとりに住んでいるアヒルのお母さんに、雛が数羽孵(かえ)りました。

みなかわいい子ばかりです。

ただ一羽だけ、お母さんアヒルがみて、そこにいるのかいないのかよくわからない雛も生まれたのです。いいえ、他の雛もその子のことがよくみえません。


「なんだこいつ気持ち悪いな」

「そうだな、なんなんだよこいつ。おれたちとは違う種類じゃないのか」

「だなだな。こんなやつほっとこうぜ」


その見えにくい雛は、ほかの雛からからかわれ、しまいには除けものにされてしまい、両親にさえ相手にされなくなりました。

だれにも相手にされなくなった見えにくい雛は、しかしここしか自分が生活する場所はないと思っていたので身を縮ませながら自分の家族と池のほとりで生活していました。

雛たちが孵って数週間後のある日のこと、そのアヒル一家はその日の昼過ぎ突然キツネ夫婦の襲撃に合いました。

被害は、アヒル一家全滅――

――と思われましたが、見えにくい雛だけは無傷で助かりました。

他のアヒルのお父さん、お母さん、きょうだいたちはキツネ夫婦にその場で襲われて喰われ、または口に咥えられどこかへ持ち去られました。

見えにくい雛は、池のほとりで家族の血痕を見ると突然孤独感に襲われ、


「キョー!」


と泣きながら叫びました。

あれだけからかわれ、仲間外れにされていたのに、見えにくい雛はみんながいなくなって悲しくなったのです。


「キョー!」


と、もう一度見えにくい雛は空に向かって叫びました。

見えにくい雛は涙を瞳に(たた)えたまま空を見ていました。

すると空のかなたから一羽の大きな鳥がこちらにむかってくるのが(うる)む視界でもわかりました。

大きな鳥は、見えにくい雛の前に着地しました。大きな鳥は全身から光を発しており、見えにくい雛は目を細め大きな鳥を見ます。


「まぁこんなところにいたのね、かわいいわが子よ」


大きな鳥は見えにくい雛に言いました。


「あなたは天上界で生息するカーラドリオスという鳥よ。本来なら地上では生まれないのだけれど、なにかの拍子で天上界からこの地へ落ちてしまったのね。でもあなたの鳴き声であなたの居場所がわかったからここまで迎えに来たの。さぁ帰りましょう、天上界に」


そう言うと、大きな光り輝く鳥は、片方の翼を広げ、見えにくい雛をその翼に包み込み、もう片方の翼をはばたかせ、天上界にむかって飛びました。

それから、見えにくい雛――カーラドリオスこと、サンジャンと名付けられた鳥は、天上界で幸せに暮らしましたとさ。




おしまい


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