異世界のアルタイルへ
私の大好きな幼馴染は異世界転移したようです。
有田紘が四月のある日に行方不明になった。
「この誕生日プレゼントはどうするのよ。」
織田美姫は同じ高校に進学したての紘の誕生日に今まで貯めたお小遣いを奮発してソーラー発電式の腕時計を買ったのだった。
それを自室の机の引き出しに押し入れて、溜息を吐く、そんな日々が繰り返されていた。
美姫は学校の帰り道に空を見上げる。
厚い雲が空を覆っていた。
「あの雲のカーテンの向こうで織姫と彦星はイチャイチャしているのかしら。なんか腹立たしいわね。」
随分と荒んでいる美姫であった。
家に帰り部屋に戻ると机の上が白く輝いていた。
その光の中に一通の手紙が佇んでいる。
美姫は慌てて封を切って手紙を読む。
『美姫へ
突然俺が消えて驚いているだろう。悲しんでくれてもいるかな。
俺は元気に生きています。
簡単に言うと俺は異世界転移したみたいだ。
美姫も知っているだろう例のアレだよ。
この2ヶ月手を尽くして今日がそっちと近付く一年に一度の日だと判明した。
俺がありたひろと名乗ったらコッチでは上手く発音出来ないらしくアルタイルと呼ばれているよ。時期的にも七夕近辺だと思うし、お前は織田美姫で織姫だし偶然て恐ろしいな。
1つ朗報が来年の今日は十年に一度の大接近らしくそっちに帰れそうだ。
0時までは繋がってるから返事くれると嬉しいな。』
「良かった。やっぱり…生きてた…。」
美姫の目に涙が溜まっていく。
「…返事、書かなきゃ。」
手で乱暴に涙を拭うとノートを一枚破り返事を描いてハート形に折りたたむ。
プレゼントの箱と一緒に白く光る魔法陣の上に置くと一拍置いて消えた。
『時計ありがとう。凄く嬉しい!ソーラーがこっちでも使えるといいな。丁度今日が七夕だったんだな。それにしても“この始まり文”はどうなの。』
それからも何度もやり取りを繰り返す。
『そっちへ帰ったら伝えたい事がある。なんて書くと死亡フラグになるから今伝えるよ。
俺は美姫が大好きだ。来年意地でも帰るから返事を考えておいて欲しい。』
「ギリギリにずるいよ。」
〜〜〜
デジタルのゼロが3つ並ぶ。
「あれ、まだ消えないぞ。」
紘は美姫が時計を合わせる時は1分進める癖を思い出した。
そして光が消えるとそこには二つ折りの紙が残っていた。
『“異世界のアルタイへ”
言い逃げなんて許さない!
私も紘が大好き!待ってるよ。』




