逃げた先には、1
森の木々に光を遮られ薄暗いある獣道にあるゴブリンの一隊がいた。
そしてその最後尾で西村は走っていた。
ゼィ、ゼィ、ハー、フー、ヒィ、ヒィ、フー
足が重たい、頭がクラクラする。
何キロ走ったかも分からない。
足がもう、動かない…。
ついに足が躓き、倒れると思った時、
ガシッ
肩を掴まれ、走ることを強いられる。おそらくゴブリンの内の一人。顔を上げ走らなければならないと思い直す。
意識が朦朧とし、それでも恐怖に急かされ足を動かす。
しかし、限界とはあるもので、
ドサリ、
今度は、あっけなく倒れてしまった。
目を開ける。
知らない、天井だ。と言いたいがそれより、汚い壁だ。
目がさめると体は横になっていてまず目に入ったのはなるほど泥でできた壁だった。
「目が覚めたか」
すると後ろから声がした。
人がいることに驚き、慌てて起き上がろうとする。
しかし、
「痛っ!」
「大丈夫か?」
頭に痛みが走る。
手でいたいところを抑え、今度は隣にいる人に手伝ってもらい、ゆっくり起き上がる。
そして顔を見て、ありがとうの「あ」を言って止まった。
そこにはあぐらで座るゴブ剣がいた。
あの悪夢は夢ではなかったようだ。
「聞きたいことがある」
固まった俺をスルーして話を進めるようだ。
「何故あの場にいたっ!!!」
近距離で大声を出され、俺は慌てて耳を抑える。
俺の様子を見て、コホンと喉の調子を整えるゴブ剣は叫んだ時に浮いた腰を下ろしてまた問う。
「何故あそこにいたのだ」
今度はしっかりと聞き取れ、答えを返そうとするが、
「はて、何でだろう?」
「ふざけているのかっ!!!」
いきなりの奇襲に手が間に合わず、直に大音量をくらった俺はあまりの大きさにまた気絶しそうになる。
やっと気を取り直して、もう一度答えを発す。
「知らないんだよっ」
思わず少し大きな声になってしまった。
「何で知らないっっ!!!!!!」
「うるっせぇんだよっ!さっきからつばが飛んでんだヨォっっ!!!!!!」
更に大きな声で返され、ブチっときた俺はお返しのつばを広範囲に飛ばしつつ、跳び上がる。
ゴブ剣も立ち上がり、メンチをきってくる。
こちらも切りつつ、
「やるのか?おい?」
おきまりのセリフを言う。
「口だけは達者だな。走ることもできねえザコが」
あっちもあっちでまあまあのセリフを言い、分かってながらもブヂッときてしまった俺とゴブ剣はついに拳をつくる。そしてぐわっと同時に動かす。
そして当たる直前、二人の頭に別の拳が入ってくる。
「いい加減にしなさいっ!!!」
ゴゴンッ!!
頭の中にこれこそ直に入ってきた鈍い音を聞きながら、また深い眠りについた。