或る日、記念日になった今日(三十と一夜の短篇第3回)
深夜、日付が変わる。
時計が示した無機質な数字。
特別な日だけど、まだ今は普通の日。
時間が過ぎていく。静かに、ただただ過ぎていく。
やがて空が白みだす。
墨色の世界に光が灯り、人の暮らしが目を覚ます。
そろそろ、特別な日が特別になった時間。
突然、その日が意味を持つ。
カレンダーにつけた花丸の印。
特別な日だから、もう今日は記念日。
時間が過ぎていく。周囲の人には、なんでもない日。
やがて日が暮れる。
夕闇の中に明かりが灯り、帰る家が見えてくる。
片手に、ケーキの箱を下げて今夜は特別な時間。
「誕生日おめでとう」
明け方に生まれた君の、今日は特別な記念日。
誰かが生まれる。するとその瞬間、誰かが父になり母になり祖父母になり、兄姉になる。
そんな奇跡の日を思い、出来る限り短い言葉で記してみました。