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休日ー①

今日は朝から商店街に来て買い物をしている。明後日から長旅になるだろうから買っておきたいものがあるのだそうだ。

それにしてもこの辺りは被害が出ていなくてよかった。

勿論、僕が買いたいものは特にないのですっかり荷物持ちになってしまっていた。そしてこの買い物の後は二人の人物に会いに行く予定だ。一人目はこの刀を鍛えてくれた鍛冶屋、クルーラン。

二人目は僕が知っている魔法使いの一人、カナリア・ハルムバルト。ルルカはカナリアと仲があまり良くなかったから少し心配だが、いざとなれば僕が止めればいい。


買い物をしていたら昼近くになってしまったので、近くの店で食事をとることにした。

「よし、これで一通りのものは買えたわ。」

いつになく上機嫌な様子。いい買い物が出来たのだろう。

「じゃあ、次はクルに会いに行くか。」

「そうね。さっさと用事済ませちゃいましょう。」


アドラベルの家から徒歩五分くらいの所によく行く鍛冶屋がある。商店街は真反対にあったため、来るのに少し時間がかかってしまった。ドアを開け、中に入る。

「こんにちは。クルはいますか?」

店番をしていたクルのお父さんに問いかける。

「おお、セグネルにルルカじゃないか。ちょっと待っててくれ、今剣を打っているところだから。」

工房からは心地よい鉄を打つ音が聞こえてくる。

少しして、音が止むと、奥から身長百四十センチ程の少女が出てきた。

「おっ、セグ兄にルル姉。なんかすごい久しぶりな気がするよ!」

たたたっ、とこちらに駆け寄ってくる。

「前来たのは確か、一週間ぐらい前でしょ。そんなに久しぶりって程じゃないわよ。」

「クルは、ルル姉とは毎日会いたいんだもん。一週間会ってないだけでも十分久しぶりなの。あ、セグ兄もだよ。」

クルは見た目も性格も子供っぽいが、僕らとは一つしか違わない。ちなみに今の呼び方はルルカが仕込んだものである。

「それで話なんだけど、これからちょっと来れなくなるかもしれないから。って事なんだ。」

クルは残念そうな顔をして、

「ちょっとかぁ...でもお仕事なんだよね。それならしょうがないよ。帰ってくるまで待ってるから。」と言った。

「ああ、ごめんな。それじゃ、また今度。」

「うん、バイバーイ。」

満面の笑みで送り出してくれたことがちょっぴり嬉しかった。


鍛治屋からさらに十分歩くと、図書館がある。そこの管理人であるカナリアは魔法使いであり、地下に工房を構えている。

道中、

「はあ、次はあいつか。なんだかテンション下がるわぁ。」

大きくため息をつくルルカを横目で見ながら歩く。

「今日は僕がいるし、揉める事がないようにするから。そんなに落ち込まないでくれ。」

「まあそうね。アンタが居るだけましね。」

そんな会話をしているうちに、図書館についた。

ルルカは心底嫌そうな顔をしている。

「こんにちは、カナリア。久しぶりだね。」

「ええ、そうね。本当に久しぶりだわ。あなたが来ない間に二つも魔法作れちゃったのよ。」

彼女はかなり凄腕の魔法使いだ。一ヶ月の間に二つの魔法を作ることは老いた魔法使いにとっても至難の業である。それを余裕でやってのける彼女は実は二百十五歳。言うと怒るが。

そんな彼女の難点はよくわからない魔法を沢山作るところだ。

『武器に命を』とか『獣を人に』とか色々なものを見せられた記憶がある。

「ところで何であの小娘がここにいるのかしら?」

やはりこうなったか。

「なによ、悪い?」

「ええ、悪いわ。視界に入って欲しくないランキング第一位なの、あなた。」

ダメだ。昔より悪化している。

「まあまあ、そのへんにしといてくれ。」

これで黙ってくれてよかったと心から思った。

「今日はこれからしばらく会えなくなるって伝えに来たんだ。」

「あらそう、分かったわ。まあ私は魔法の研究をしてるだけで、あなたたちに会えないくらいで日常のサイクルが狂ったりはしないけどね。」

二人はまだにらみ合っている。早めに撤収しよう。

「んじゃ、そういう事で。」

急ぎ足で図書館を出た。

ーー帰り道、ルルカはずっと不満そうな表情を浮かべていた。


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