悪魔
急いで城を飛び出し、空を見上げる。すると、そこにあったのはほかの雲より暗く、禍々しいなにかであった。
「それで、出てきたヤツとやらはあれか?」
一番に団長が口を開いた。そして指を指した先には巨大な蛇のような生物が街で暴れていた。
「は、はい。そうです。」
怯えた表情で門番は答える。見た限りでは恐らく僕らに勝算は無いだろう。自分の剣が通じるとは到底思えない。
「さあ、新人諸君。来るか、来ないか、あいつは俺でも倒せねぇだろう。死にたくない奴はここで待機していても構わん。生き長らえたいと思うのは人間として当然の事だからな。」
少し震えた声の団長の質問に対して出した答えは、
ーー全員で挑むだった。
「ここで行かなきゃ、王国騎士団に入った意味がねぇからな。」
ザークフレトが軽い感じで答えるが声の震えが隠しきれていない。
そして皆が同意の意を示した。それを見て団長はニカッと笑い、
「んじゃ、初任務と行くか!」
雄雄しく叫んだ。
そして大蛇との距離が数十メートルになった所で武器を構えた時、何処からか声が聞こえた。
「おお、やっと強者に出会えたようだ。そろそろ街を壊すのにも飽きてきた頃でな。俺の相手になる気はないか?」
話の内容からこの声は蛇であることが容易に想像できる。
「相手になる気が無きゃここには来ないだろ。」
団長が答える。
「ハハハ、それはそうだな。では名乗ろう。我が名はファブニール。それと、一応言っておくが俺の鱗を断つことはお前らの武器じゃ無理だぞ。」
「そんな事は分かっているさ。だが生憎僕らはこの国を守る立場にあるからね。」そう。僕らは王国騎士団だ。僕らがやらなければならないのだ。
「ハハハ、それはいい心がけだ。だがな、勇敢と無謀は紙一重だぞ。お前らは無謀だと俺は思うけどな。」
「アンタみたいなバケモノに言われたところで私達はもう止まらないわよ。」
強気で言うが、槍を持つ手は震えている。
「そうか。では始めるとしよう。」
数分の激闘の後、立っているのはイスカ・イランダルだけだった。しかし、団長も傷だらけで立っているのがやっとだ。
「なんだ、この程度か。まあ大体の予測は出来ていたがね。」
悔しい、手も足も出なかった。そこで団長が叫ぶ。
「お前ら、ハァハァ、生きてるか。生きてるなら耐えろ。絶対、ハァ、死ぬんじゃねぇぞ。」
その言葉を聞き、立ち上がろうとするが、やはり出来ない。
「おいおい、そんなに無理しなくていいんだぜ。俺の任務は飽あくまで敵勢力の調査だからな。別にもう用はないんだ。戦いたいって言うなら別にいいがな。」
そう言った蛇の体が光の粉になり、人間台の大きさに集まる。
そして現れたのは手や足に鱗があり、尻尾が生えている。
言うなれば「悪魔」だろう。
「さあ、どうする?もしお前が俺と戦うと言うのなら、そのへんの奴もぶっ飛ばすが?」
挑発じみた質問に団長は即答した。
「もちろん戦わないさ。部下を死なせたくないのでね。」
「そうか、ならばまた一年後に会おう。その時は魔龍国の全勢力での攻撃だ。と言っても俺を含めて七人だがな。」
そう言って悪魔は黒い何かに帰っていった。
その後、僕達は他の騎士たちに助けられ、全員怪我程度ですんだ。




