出会い
入団試験の時、合格者は1週間後に王都フェアラルの中心部にあるフォルト城に来るようにと言われた。
今日がその日だ。1週間の休養のおかげですっかり痛みは治まり、体の調子は空を飛びたくなるほど絶好調だ。
ちなみに城はアドラベル家の屋敷から二キロ程度の所にある。
いつも通りルルカと並んで道を歩く。
「どんな奴が合格したのか楽しみだな。」
僕は気絶していたため、誰が合格していたかなど知らない。まともな人間がいることを願う。
「ええ、そうね。」
「ルルカは誰が合格したとか知らないのか?」
「そんなの知らないわよ。あの後ずっとアンタの看病してやってたんだから。」
言い方が少しきついような気がするが、ずっとつきっきりで看病してくれたというのだから感謝しか浮かばない。
そして、王の住まう城に着いた。門番に新しい王国騎士団の一員だ、と話すと城の中に招かれこのまま真っ直ぐ進めと言われた。
言われるがまま進むと目の前に無駄にでかい扉が見えた。
「これって王座の間じゃない?王様に挨拶しろって言うのかしら?」
「多分そうだろうな。少し大袈裟な気はするが。」
扉を三回ノックし、相手の反応を待つ。すると、中から陽気な声が聞こえてきた。
「お、来たきた。どうぞ入ってー。」
恐る恐る扉を開け、中に入るとそこには団長と七人の騎士、それと煌びやかな服を着た人物がいた。
「失礼します。新しく王国騎士団に入ることになりました。セ...」
「そんな堅苦しい挨拶辞めて早くこっちおいでよ。名前はイスカからもう聞いてるよ。彼の全力のキックを喰らった可哀想な子だってね。」
何てお喋りな王様なんだ。これが正直な感想だった。年齢はおそらくまだ三十路前だろうが、この人を王だと言えるだけの風格が確かに備わっているように見える。ルルカは驚きの余り声が出ない様子。
「まぁそんな事はいいか。それでは、今回皆に集まってもらったのは新入生同士が仲良くなれるようになんだが、まだ一人来ていない。」
急に顔が真面目になった。そして王が話していると、扉を開ける音がした。振り向いてみると、
「すいませーん、遅れましたぁ。」
試験の時の阿呆がドタバタ走ってきた。ルルカはまたも驚きの表情を見せた。
「お、一番面白いやつが来たな。よし、これでみんな揃った。ではそれぞれの名前と得意とする武器を発表してくれ。」
楽しそうに王は話している。
「では僕から。セグネル・アドラベル、主に刀を使います。」
「ルルカ・アドラベル、槍使いです。」
「オレはザークフレト・ファー二ル、主に剣を使ってる。」
「はい、僕はアギリス・マクザイン。主に弓です。」
「は、はい。わたしはクルムルハ・グンナ。え、えっと、武器は短剣です。」
「私はユリアニア・ローザ。見ての通り、魔法使いでーす。」
魔法使い?何故そんな人がここに?この世界で言う魔法使いとは孤独な存在である。自分のやりたい事をやる為に自分の工房に篭もり、ひたすら研究し続ける。そして自分の子供に研究成果を託し、この世を去る。そしてこの国ではまだ魔法が馴染んでいないため、他の国にはある「魔法協会」という組織が無い。
すると、団長が口を開いた。
「彼女はローザ家の九代目。とても正義感が強くてな、どうしても入りたいと言うから魔法の威力を見たのだが、申し分ない一級品だったものでな、合格させてやったのだ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
魔法使いが嬉しそうに丁寧なお辞儀をする。
「では、拙者の番でござるね。某の名前は服部勘造。忍でござる。」
名前が先生と似た感じだと思ったが、恐らく同じ土地出身なのだろう。
「ウチはタマモ。見ての通り武器は素手でーす。」
「俺はオルギス・ラインザル。二刀流だ。」
「妾はオルトニア・ダーイン。弓を使えましてよ。」
「では改めて、私はイスカ・イランダル。ご存知の通り戦斧を扱う。」
何か全体的にキャラが濃い気がする。僕が消えてしまいそうだ。
「うん、全員が終わったところで、次は俺と行こうか。」
陽気な王が口を開く。
「俺はフォルト王国の王、ツヴァイオレン・ドルトニア・フォールト。皆さんよろしく。」
全員が口を揃えて「よろしくお願いします。」と言った。
「さあ、今日はみんなで飲もうか?」
これは流石に予想外だった。まさか酒を飲もうと誘われるなんて。
その時、この部屋に大慌てで門番が入ってきた。そしてこう言った。
「大変です、王よ。空が一瞬にして黒く染まり、そこから何かが降りてきました!」




