試験ー③
刀の柄をしっかり握る。覇気が恐ろしく、なかなか一歩が踏み出せない。
「どうした?来ないならこちらから行くが?」
ゴクリ、とつばを飲む。一つ深呼吸をし、刀を抜く。
先ず正面から振り下ろす。そして振る、更に振る。
これは全て戦斧で弾かれる。それならば、連携で攻める他ない。
後ろに控えたルルカとコンタクトをとり、疾走する。そして全体重を乗せた一斬り。この刃が通る訳も無く、しっかりと受け止められる。目眩ましの一斬りを加え体を右に流す。
そして僕が元いた所の後ろからルルカが攻撃を仕掛ける。
一突き、更に一突き。これは当然の如く避けられる。
続けて横薙ぎ。これを戦斧で受け止める。
ーーそして後ろから渾身の一斬りを振り下ろす。
「グハッ!」
腹部に激痛が走る。そして刀は標的に掠る事もせず、カランと音を立て力無く地面に落ちる。そして体も崩れ落ちる。
「二人とも、よくぞここまでやった。ここまで連携が出来ているとは誠に驚いた。努力を称え、王国騎士団へ招待いたそう。」
心からの笑みを浮かべて団長は言う。
しかし僕は医務室のベッドの上、ルルカが心配そうにこちらを見ている。どうやらあの後意識を失ってしまったらしい。
「ああ、有難うございます。嬉しいです。」
起き上がろうとしても力が入らない。
「いてて、スゲェの貰っちゃったな。」
「怪我してるんだから無理しちゃダメよ。」
慌てた感じで注意してくる。本当に優しいやつだ。
「先ずは謝らせていただきたい。本当にすまなかった。身の危険を感じて全力で蹴りを入れてしまった。」
「いえ、謝られるような事じゃありません。勝負ですから。」
笑いながら答えると、団長も笑い、
「これは頼もしいやつが入ってきたもんだ。これから、よろしく頼むぞ。」
そう言って、団長は去っていった。
「あんた本当に大丈夫なの?結構えげつない蹴りだったけど。」
心配の色を浮かべて顔をのぞき込んでくる。
「もう大丈夫だよ。多少は痛むけどね。」
「ならいいんだけど。」
カレドニア草原からの帰り道、そんな会話をしながら歩く。
ルルカはよほど心配なのかチラチラと様子を窺っている。
僕は自分の事を気遣ってくれる人がいることに僅かながら感謝した。
そうして家に着いた頃には日が沈みかけていた。
すぐに夕食を済ませ、風呂に入り終えて部屋に戻る。すると部屋の前にはルルカの姿。
「今日はごめんね。私のせいでこんな事になっちゃって。」
「あのな、これはお前のせいじゃないって言ってるだろ。作戦は僕が立てたんだから。」
それでもルルカは表情が暗い。
「お前にはいつも通り笑ってて欲しいな。」
笑顔でこういった。ルルカに反応はない。
そしてドアを開け部屋に入ろうとした時、後ろから勢い良く抱きついてきた。
「私、アンタがにいなくなって欲しくないのよ。だからこれから無理は絶対しないでね。絶対よ。」
弱々しい声で告げてくる。
「大丈夫。僕はどこにも行かないよ。」
だって大事な人がいなくなる寂しさは僕自身がよく知っているから。
「それじゃ、お休み。」
「うんおやすみ。」そして床についた。




