試験ー①
今朝は早起きだ。いつもならまだ布団でごろごろしている時間帯だが、もうしっかり身支度が整っている。
と、ここで大きなあくびを一つ。やはりまだ眠い。
襲いかかる睡魔と戦いつつ、朝食を摂りに行った。
部屋に入ってみると、すぐさま罵声が飛んできた。
「アンタ準備ホントに遅いわねぇ。亀か何かかしら?」
オホホ、と高笑いが続きそうな明るい声だ。
「はぁ、お前はいつでもテンション高いよな。それと言っとくけどな、これでも今日はいつもの半分の時間で準備終わらせたんだよ。」
何故か不思議そうな顔でこちらを窺っている。
「な、なんだよ。そんなにこっち見て。」
「いや、亀は否定しないんだな、と」
「全力で否定させていただきます!」
ああ、こいつの相手は面倒臭い。まあこんなくだらない会話も幸せだと思わないことも無いのだが。
「それより、早くご飯食べちゃわないと試験に間に合わないわよ。」
そんなこと分かってる。全く誰のせいだと思ってるんだか。
朝食を食べ終わり、刀を腰に提げると今の両親に出発を伝え、玄関に向かった。すると、槍を持ったルルカが壁にもたれ掛かっていた。
「あれ?先に行っててもよかったのに。」
「そんな訳にはいかないわよ。あのね、私は、えと、その」
頬を赤らめ、視線を泳がせている。
こんな弱気なルルカは初めて見るが、これはこれで面白い。
「方向音痴なのよっ!」
これは初耳だ。いくら一緒にいた時間が長いとはいえ、一緒に外出はしたことがなかった。
「へー、いいこと聞いちゃったかも。」
「ちょ、これほかの人に行ったら絶対許さないからね!」
顔を真っ赤にし、俯くルルカ。
からかってみると案外面白いものだ。
「ほら、そんな事言ってふざけてると本当に遅れちゃうわよ。」
時計を見ると、かなりヤバイ時間だった。
「本当だ。よし、走るか?」
返事を待たずに扉を開け、走り出す。
「え、ちょ、ちょっと待ちなさいよ。」
ーー空は清々しい快晴だった。
王国騎士団の試験場に着いたのは受付時間ギリギリだった。
乱れた息を整え、受付の人に挨拶をする。
「王国騎士団の試験で参りました。サグネル・ス...アドラベルです。」
「同じく、ルルカ・アドラベルです。」
後からルルカが続く。
「よくぞ来てくれた。歓迎しよう。」
そう言われ、案内されたのは広大な平原だった。




