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ふわりふわふわ。
私は白い空間に漂っていた。
いつからいたのか、どこからきたのか、どうしてここにいるのか、よく思い出せない。
今の自分の身体のように、思考がふわふわして纏まらない。
同じようにふわふわと周囲に漂う色とりどりの光の玉が、時々揺らぐのを見て、ふと思い至る。
たぶん、私は死んだんだろうなぁ…。
その事実に何の感情も浮かばないことに、私は諦めて静かに視界を閉じると流れに身を任せた。
『 』
徐々に薄れゆく意識の中で、誰かの声を聞いた気がした。
舞い上がる風と花の匂いを感じ目が覚める。
気が付くと私は一面の花畑に座り込んでいた。
ぼんやりとした思考のまま周囲を見渡すと、薔薇によく似た美しい花々が咲き誇る中で、一際大きい花に目が囚われる。
白い花と黒い花の蔓が絡み合い、空へ伸びるその姿に身体が惹き寄せられていく。
何故か白い花には淡く光が灯り、黒い花には光が灯っていない。
『 』
無性に黒い花に触れなければいけない気がして、手を伸ばす。
あと少しで触れるというところで、美しい女性の声が辺りに響いた。
『それに触れてはだめよ』
咄嗟に伸ばしていた手を下げ、声のするほうを見る。
そこには全身が銀色に染まった美しい女性が佇んでいた。
圧倒的な存在感を纏って現れたその女性は、美しい微笑をたたえながらゆったりと私に近づく。
『妙な気配を感じて来てみたら、異界の魂がいるなんて。きっと青の子が連れて来たのね…』
女性は傍まで来ると、座り込んでいる私にそっと手を伸ばし、両頬を包み込むと顔を覗き込んだ。
鼻先が触れるのではないかというほど近くで、うっとりと私を見つめるその女性の瞳は、人間にあるまじき美しい虹色をしていた。
『うふふ、なんて素敵なのかしら……素晴らしいわ。私の可愛いあの子によく似ている、美しい魂…』
彼女が言っていることが私にはよくわからなかった。
その美しい虹色の瞳に見つめられると、何も考えられなくなる。
『柱なんかにさせないわ。貴女は私の御子になるのが相応しいのだから…』
そう囁くとおもむろに彼女は私の額に口付けを落とす。
私は静かに目を閉じて受け入れると、そのまま意識が落ちていった。
初投稿です。
生ぬるい目で見守ってください。