14:とある男の帰還
電車から吐き出される人々。
その中に、紛れ込むようにしながらも若干の異色を放つ二人の人影があった。
一人は、ベージュのトレンチコートを纏った男性、そしてもう一人はその男性に手を引かれる小さな少女だ。
親子と言うには男性は若く、少女もそれなりの年を経てしまっている―――とは言え、少女の年齢は10歳前後と言った所だったが。
あえて言うならば、年の離れた兄妹と言った所だろう。
しかしながら、二人の雰囲気はそれほどに通っていると言うものでもなかった。
と―――駅のホームから見える外の景色へと視線を向け、男性はぽつりと呟く。
「……三上町、久しぶりだな」
「……そうなの?」
まだそれなりに自然の残る、下町と言った風情の街並み。
それを懐かしそうに見つめる男性を見上げながら、少女はそう問いかける。
対し、男性は苦笑と共に視線を降ろした。
「言っただろ、ここは俺の育った街なんだ。小中高と、ずっとここにいたんだよ。まあ、卒業してから別の所に行っちまったんだが」
「その結果が、プー太郎」
「うぐっ……い、いや、探偵だよ探偵。事務所は無いけど、しっかり仕事してる」
「でも、自称でしょ?」
返す言葉を持たず、男性は表情を引き攣らせながら沈黙する。
日々困窮している事は事実で、日雇いのバイトなどで生計を繋いでいるのだから、否定する事はできないだろう。
己の不甲斐ない状況に関しては彼も自覚しているので、結局この少女に言い負かされる事となるのだ。
半眼で口元を吊り上げる、勝ち誇った表情を浮かべる少女から視線を外し、男性は渇いた笑みを浮かべながら歩き出す。
「さ、さぁ、折角帰ってきたんだ、色々案内してやろう」
「ん……コースケの故郷、楽しみ」
「ああ、そうだな。でも、とりあえず腹ごしらえと行くか」
「昔の知り合いにたかるの?」
「……ゴメン、俺の所為だよな、ナチュラルにそういう発想が出てきちゃうのは」
割と深刻に落ち込みながら、コースケと呼ばれた男は少女の手を引いてとぼとぼと歩き出す。
けれどその胸中はやはり高揚し―――かつて己の育った街がどのように変わったのか、その好奇心に沸き立っていた。
* * * * *
この間の事件から二週間。
結局犯人が捕まるような事はなく、まるで手がかりが無いままに捜査は未だ続けられているようだった。
あれ以来被害者が出ていない事から、事件の動機も個人的な怨恨であるとされ、もうじき部活禁止も解かれるようであった。
私としては、毎朝やってきていた野球部が戻ってきてしまうのが少し面倒と言うか何と言うか。
まあ、今でも熱心な連中は自主練やってたりするんだけれども。
宣言通り、私達は部活―――怪異調査部に加わる事となった。
ひきこさん……都市伝説がヒメの事を狙っているかもしれないという話は、嶋谷にだけ通してある。
ヒメに直接話す事で起こるであろう厄介事は以前に考えたとおりだけど、トモにも出来るだけ秘密にしておくつもりだった。
色々と態度に出やすいのだ、コイツは。ヒメを大事に思う気持ちは誰よりも強いからこそ、あからさまな態度を出されてしまえば、いかな天然のヒメとて何かに気づいてしまうかもしれない。
とにかく、またいつ都市伝説が現れるかは分からないけど……可能な限り、隠し通すつもりだ。
「ふぅ……今日も終わったー、と」
校門の前、ヒメと他愛も無い話をしていた私は、ふと聞こえてきた声に視線を飛ばした。
見れば、嶋谷とトモが連れ立ってこっちの方に来ている所である。
時間が合う時は、私達はいつもこうやって高校組を待っている。ちなみに、誠也は別の友達と一緒に帰る事が多い。
運動神経がいいし、結構ノリもいいから、友達を作るのが得意なのだ。まあ、私たちよりは健全だと思う。
こうして待っているとたまに声をかけてくる連中がいるけれど、去年一年間の私の努力によって、その数も大分減っていた。
とまあ、そんな余談はともかく―――
「おつかれー、二人とも」
「お疲れ様、賢司君、お兄ちゃん」
「ふっ、日々の疲れを労わってくれる妹……これぞ、勝ち組の特権……!」
「あー……まあ、二人ともお疲れ」
嶋谷の奴、ツッコミ入れようとして途中で断念したわね。
結果的にいつも私がその役目をやる事になるんだから、正直勘弁して欲しいというか。
まあ、今更と言えば今更なので、私もあんまり気にしてはいないが。
って言うか三言に一回シスコン発言が混ざるトモを一々相手にするのは面倒臭い。
放置するのも愛だ、という事で。
「部活禁止も、もうすぐ終わりね」
「そうだな……って言っても、依頼が無ければ特にする事も無いんだけどな、あの部活は」
「それでいいのかな……?」
「顧問が認めてるからな、大丈夫だよ。ヒメもあんまり難しく考えるな。部活って言うのは、別に義務でやるものじゃないんだから」
ああ、あの先生が顧問だったっけ……本当に適当に済ませてそうね。
ともあれ、嶋谷が言う事は尤もだ。部活なんだから、部員が楽しんで活動できなきゃならない。
まあ、あの部活は楽しんでというのも中々難しいかもしれないけど……義務感を覚えるべきものでも無いだろう。
別に、これが仕事って訳でも無いんだから。
「さて、それじゃあどうする?」
「遊びに行くことは同意だぜ?」
放課後の行動について、嶋谷が切り出す。
それに対して、トモは小さく笑みを浮かべながらそう返答した。
私としても、遊びに行く事はやぶさかではない。
ただ―――
「制服のまま遊んでると警官に注意されやすいのよねぇ」
腕を広げて自分の服装を見下ろし、私は肩を竦める。
事件の犯人は捕まっておらず、事件の調査は未だ続けられている。
正直、真相を知っている身としては少し心苦しいけれど、話した所で誰も信じてくれないのは明白だ。
あの件は私達の胸の中に留める事となったけど……正直、解決していると分かっているのに行動を制限されるのは窮屈極まりない。
危険はないと知りつつ、私達はこうして毎度遊び場を考えなければならないのだ。
「……じゃあ、俺の家でも来るか?」
「嶋谷の家? どっちの方?」
「『コンチェルト』の方だ。姉さんが皆に会いたがってたしな」
嶋谷の言葉に、私は納得して頷いた。
嶋谷には、家と呼ぶべきものが二つある。
一つは、普通に住居として使っている実家の方。そしてもう一つが、秋穂さんの営んでいる喫茶店『コンチェルト』だ。
正確には、『コンチェルト』は嶋谷の親戚の人が営んでいた店で、今は秋穂さんが引き継いで経営している。
だから実際には嶋谷の家という訳ではないんだけど―――
「……あの頃は、大変だったわね」
「ん? 杏奈ちゃん、何か言った?」
「いいえ、何でもない。とりあえず、私はそれでもいいけど……ヒメとトモは?」
思わず口に出していた自分自身の呟きに苦笑する。
私だってあんまり思い出したくない事故なのだ、嶋谷にとっては尚更だろう。
かつては酷いショックを受けていたのだし、今だって完全に立ち直っているのかと聞かれれば疑問だ。
だからこそ私達の間では、嶋谷の前でその話題を出すのは暗黙の了解としてタブーになっていた。
「秋穂さんの所に行くのならば、俺に異論などあるはずも無いッ!」
「うん、私も大丈夫だよ。最近は、あんまり話してなかったし、楽しみだね♪」
力の限り断言するトモと、嬉しそうに顔を綻ばせるヒメ。
二人とも秋穂さんに懐いているから、あの人と話が出来るのはある種ご褒美なんだろう。
まあ、秋穂さんの料理は美味しいし、美人で優しいから人気があるのも当然だ。
喫茶店には秋穂さん目当てでやってくるお客さんも少なくない。
半ばアイドルみたいな扱いで、手を出しちゃいけないという暗黙のルールがあるらしいけど。
「良し、全員一致だな。それじゃあ、行こうか」
私達の返答に頷き、嶋谷は校門を通り抜けて歩き出す。
嶋谷の家は両方とも、通学路の桜並木を通り抜けた先を公園とは反対の方向に進む事で着く。
『コンチェルト』はそんな通りの右手に建っていて、オープンテラスなんかもある中々いい雰囲気のお店だ。
まあ、流石に大きさが大きさだから、秋穂さん一人で手が回ると言う訳でもなく、バイトを雇っているみたいだけど。
時々、私達も仕事の手伝いをしたりするぐらいだ。
「ん……」
「ヒメ? どうかしたの?」
と、桜並木に差し掛かったところで、ヒメが小さく声を零す。
いい加減桜も散り、遅咲きの種類以外は葉桜となってしまっているが、それでもまだそれなりの花弁を降らせている。
それを見つめ、ヒメはどんよりとした苦笑を浮かべながら声を上げた。
「いや、あれ以来桜並木を通るのがちょっと怖いと言うか……我ながら凄い事してたなぁと言うか……」
「あー……やってる間は全然大丈夫そうだったのに、ホント怖がりねぇ」
「だって、本当に怖いんだよ!? 戦いとか云々以前に、怪談なんだよ!?」
「……いや、怖がるポイント違うでしょ、ホントに」
まあ、確かに存在自体もかなりホラーではあったけど、改めて聞いた本来の逸話よりはマシな姿をしてたし。
一応ながら身体は小学生―――しかも、時代が昔だから身長だってそう高いわけじゃない。
いくら怖い様相していたからって、自分より小さい相手ではその威圧感も低くなる。
それよりも、私はあのふざけた身体能力による直接的な恐怖の方が勝っていた。
しかしそれがヒメの場合、ストーリーばかりに怖がって直接対決する事はあんまり怖がっていなかった感じが……いや、戦いに対する恐怖はあるでしょうけど、それを理解して闘ってる部分があったのかな。
やっぱり、戦に臨む人間の思考って言うのはよく分からない。
「お兄ちゃんやら煉さんやら蓮花さんやら……あの辺の思考は私には分からないわ」
「ん? 誠人さんは分かるけど、その二人は?」
「あー、お兄ちゃんの友達よ友達。変な人だけど」
特に煉さんに対しては、お兄ちゃんは仲良さそうにしていたのに、私に説明する時にはすごく色々忠告してきた。
持物に触っちゃいけないとか、動かす時はちゃんと許可を取れとか……見てる分には普通の人なんだけど、その注意事項を守らないと本気で怒るらしい。
蓮花さんに関しても同じなので、やってきた時は一々気を使わなきゃならないのが大変と言うか。
まあ、何か忙しいのか、滅多に来る事はないけど。
しかしそんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、ニコニコした様子でヒメは声を上げる。
「あ、そっか。いづなさんに聞いた事あるよ。凄く面白い人だって」
「おお、俺もあるぜ。師匠はその人達を観察するのが趣味らしいが」
「……まあ、傍から見てる分には楽しいでしょうね」
私は、お兄ちゃんにあそこまで言わせた相手と言う事で、どうしても警戒が抜けないのだ。
いい加減、あの人も謎だなぁ……まあ、最近は姿を見ないし、あんまり気にしなくてもいいだろうけど。
と―――考え事をしている間に少し遅れ始めていた事に気づき、私は若干足を速める。
話していれば気も紛れたのか、桜の花弁の仲を落ち着いた表情で抜けたヒメは、嶋谷に小走りで駆け寄りながら声をかける。
その嬉しそうな顔は、どこか飼い主に駆け寄るわんこを思わせ、私は微笑ましさを感じながら視線を外した。
既に、曲がるべき角に差し掛かっていたのだ。
「おお、秋穂さんの気配が近寄ってくる……この瞬間こそが歓びであると俺は断言しよう!」
「いや、何て言うか……警察に捕まるような事はするんじゃないわよ?」
何か色々と不安になり、私は思わずそう呟く。
それなりに広い道とは言え、四人横並びでは歩きづらい。
必然的に二人と二人が並ぶ事となり、そういう時の配置はいつもこうだった。
普段ならば、ヒメは私の隣を歩く事が多い。けれど、この道を歩く時だけは、昔の習慣が出てしまうのだ。
―――嶋谷が両親を亡くした、あの頃の事を。
「……杏奈」
「何よ?」
「いや……何でもねぇわ」
珍しく発された真面目な声音に、私は視線を上げてトモの方へと視線を向ける。
けど、トモはどこか苦笑じみた表情で首を振り、私から視線を逸らしてしまった。
時々、コイツはこうして真面目な表情を見せる時がある。
昔からの付き合いだから分かる……普段のアホな言動も、半分本気で半分道化、という感じなのだ。
無論本心からの言葉である事は確かで、そういう発想をするバカさがあるのは事実だ。
けど―――自らのそれを揶揄するように道化を演じるようになったのは、嶋谷の事があってからだ。
あの出来事は、良くも悪くも私達を変えてしまった。変わってないのは―――
「到着ぅ! 秋穂さん、この篠澤友紀、今行きますよォォォォ!」
「……」
……いや、やっぱりただのバカかもしれない。
『コンチェルト』の中へと走って行くトモの背中を半眼で見つめながら、私も嶋谷やヒメに続いて店の中に入る。
中は西洋風の洒落た内装になっていて、カウンターの向こうには一人の女性が立っていた。
嶋谷秋穂―――長い髪を緩くお下げに縛り、柔らかそうな笑みを湛えたこの人こそが、嶋谷のお姉さんだ。
「こんにちは、友紀君。それに姫乃ちゃんと杏奈ちゃんも、会いたかったわ。あと賢司、お帰りなさい」
「ああ、ただいま姉さん。あと、今日は俺も客だから」
「あら、呼び込みしてくれたのね。それじゃあ……案内お願いね」
店内に入って騒ぎ出すかと思いきや、トモは意外と大人しくしている。
騒ぐと秋穂さんの迷惑になると十分理解しているのだ。
普段からそうしてくれていればいいのに、と思いながら、私は秋穂さんが声をかけたバイトらしきウェイトレスの方へと視線を―――
「ってぇ、テリア先輩!?」
「お、やっほー我が部員達よ。そしてお客様は四名様ですね、こちらのお席へどうぞ~♪」
赤茶色の髪をツインテールに縛り、どこかメイド服っぽいデザインをしたウェイトレス服を纏うその人は、間違いなく我等怪異調査部が部長、テリア・スリュースだった。
しかも私達の来訪にまるで動揺する事無く、実に手馴れた仕草で私達を席へと案内する。
「こちらがメニューとなります。それでは、お冷をお持ちしますので、少々お待ち下さい」
優雅に一礼し、先輩はコップとお冷の置いてある台の方へと歩いてゆく。
その背中を呆然と見送り―――私達の視線は、一斉に先輩の方へと向いた。
「どういう事!?」
「先輩ってここでバイトしてたんだ……あ、そういえば今までも見た事があったような気が」
「む、確かにあのおっぱいには見覚えがあるな……しかし学校の制服の時より大きく感じる。やはり下から上げるようなデザインの給仕服では更に大きく見えるのか……」
「冷静にセクハラ発言してんじゃないわよ、トモ」
顔を寄せ合って相談し始める私達の姿に、嶋谷は小さく嘆息を零した。
その視線をちらりと先輩の背中へと向けつつ、肩を竦めて声を上げる。
「まあ、何つーか……本人の許可なく喋る訳にも行かないから触りだけ言うが、あの人はうちの親戚みたいな扱いなんだよ」
「扱い……?」
「その辺の事情は複雑なんで、本人の許可があったら話す。まあとにかく、先輩と俺の学費の元は大体同じなんだと考えてくれ。で、先輩はそれを少しでも還元する為にここでバイトしてるんだ」
「ふーん……それなら話してくれればよかったのに」
「あー……」
あくまでも善意で話すヒメに、嶋谷はバツが悪そうに頭を掻く。
まあ、その理由は何となく分かるけど。
「またあの先輩の都合みたいなもんなんでしょ? ホント、謎が多いわねあの先輩……流石は《ミステリアス》って言うか」
「何だ杏奈、その渾名知ってたのか」
「まあ、多少調べたからね。ミス・テリア・スリュースで《ミステリアス》……何か色々用法間違ってるような気がしないでも無いけど、確かに謎よね、あの人」
嶋谷の言葉に、私は小さく嘆息する。
まあ、あの先輩が変わってるのは今に始まった話じゃないし、踏み込んじゃいけない話だって言うなら無理に聞く事もない。
本人が話してくれるかどうかは分からないけど、無理に話させる気は全くなかった。
小さく息を吐き、私は隣のヒメに見せるようにしながらメニューを開く。
と、そこで先輩が戻ってきた。
「失礼します」
堂々と、しかし優雅に。随分と堂に入ったその仕草は、ウェイトレス歴の長さを窺わせる。
先輩はそうして全員にお冷を配り終えると、私達に対して声を上げた。
「ご注文はお決まりになられましたでしょうか?」
「あ、はい。えっと……こっちはブレンドティーとブルーベリームースケーキで」
「私はアッサムティーと、ラズベリータルトでお願いします」
「軽食のサンドウィッチとウーロン茶で」
「お前な……ブレンドコーヒーでお願いします」
喫茶店なんだからウーロン茶選ぶなとか言いたそうな視線を向けつつ、嶋谷もまるで色気の無いメニューを選ぶ。
しかしそんな二人にもまるで反応する事もなく、にこやかな笑顔のまま先輩は復唱した。
「ブレンドティーがお一つ、アッサムティーがお一つ、ウーロン茶がお一つ、ブレンドコーヒーがお一つ、サンドウィッチがお一つ、ブルーベリームースケーキがお一つ、ラズベリータルトがお一つですね。以上でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。それでは、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
流石にこんな所で妙な罠は仕掛けないだろう。
優雅に礼をして去ってゆく先輩の背中を見ながら、私は小さく息を吐く。
何て言うか、色々な発見があるものだなぁ、などと思いながら―――ふと、鳴り響いたドアベルの音に私は視線を入り口の方へと向ける。
半ば条件反射なんだろう、秋穂さんと先輩は、入り口の方へと笑顔を向ける。
「いらっしゃ―――ぃ」
からん、と。尻すぼみになった秋穂さんの言葉は、先輩が取り落としたお盆の音に掻き消される。
入り口に立っていたのは、二人の人影。二十代半ばほどと思われる男性と、それに手を引かれる十歳前後の女の子。
私が訝しげに眉根を寄せる中、その男性は秋穂さんに向けて気軽に手を振りながら言葉を発した。
「よう、久しぶりだな、秋穂」
「こ……浩介、くん……!?」
―――ある意味、これが、私達の巻き込まれる第二の事件の幕開けだったのかもしれない。
しかしこの時の私には、その事に気付く術など一つとして存在していなかった。




