五刻
早い展開ですいません。
わかりずらくてすいません。
そして、今回も呼んで頂き、ありがとうございます。
玲、あなたに触れたこの手や心はもう既に穢れているの
真っ赤な真っ赤な血で塗りたくられているこの腕で、あなたを育ててしまった
でも、決して忘れないでほしい。
「私は、貴女の事を本当に愛していた」
「..。」
楓は、静かに私を見据えた。
慈愛に満ちた瞳は、うるみ、滲んだ自分を映している
「こんな話を聞いて信じられる訳が無いけれど、貴女を拾って私は生きる事に輝きを見つけた」
「…..。」
「小さいけれど、貴女が見せる仕草に全ての苦しみがかき消された」
「…っ。」
私はその場から動けず、抗議する声さえもあげられなかった
楓が、
楓が遠くに行こうとしている_______......。
「店を始めたのも、拾って2日めに始めたばかりだったのよ?見栄はって受け継いだとか色々言っちゃったけどね。」
「.....だ」
「玲、話は済ませてあるから、隣の州の知り合いの所に行って、幸せになって」
「嫌だ!!!」
私の叫びに、楓は口をつぐんだ
僅かに、湯のみに残った茶が揺れた
ゆっくりと楓は瞳を閉じた まるで、私に殴られるのを待っている様に
,,,私は静かに、席を立った
「僕...私は、貴女に育てられて幸せに生きた。それは今も変わらない」
「え,,,」
「なのに貴女は、もう僕を愛していないように話すね。」
「そんなつもりは!!!」
楓が驚愕の目で私を見つめる
彼女の瞳から、一筋の涙が流れた
僕は、大量の水を涙から零しながら、笑みを作る
「なら、それでいいじゃない」
「でも、..でも私は!」
悲痛な叫びを、咎める様に手で覆い隠した
そして、再び微笑む
「僕は、ここを出て行きます」
「…」
「けれど、忘れないでほしい。僕はいつでも貴女を守る為に生きているのだと言う事を」
楓のようなヘマをするほど、僕はこの世界になじんでいない訳じゃないから。
いつか、こんな風に出て行く事は予想できていたから。
もう、この世界の理は大体理解したから
もう、貴女の元を離れても死なないから
もう、貴女を守れるぐらいの力はあるから
だから、もう悲しまないで笑っていてほしい。
楓を抱きしめて、「母さん、凄い顔してるよ。」と笑った
「生意気よ、私の娘のくせに」
楓も、笑った。
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あれから私は楓のもとを離れて、楓に紹介された李安さんのもとで、生活していた
李安さんは、五虎将軍に数えられる趙雲という人に指導もしていた凄い人らしい。流石は楓の知り合い。
歳は40後半らしいのに、容姿は随分と若くみえる。(彼如く、「毎日顔あらって頑張ったからなぁ〜。」)
それに、やけに言動が幼い。というか、軽い。まぁ、そっちの方が親しみやすくて良いんだけど。
彼はどうやら、私を男の子と間違っている様で(まぁ、この身長とまな板具合だから当たり前か。)
「日々精進しないと〜」「もしもの時にやられないようにさぁ〜。」と護身術を教えてもらった。
すると、彼が嬉しい提案をしてくれた。
__『ちょっと〜玲君!君、飲み込み早いね〜』
__『え?そうですか?』
__『うん。で、もしよかったらドンドンわざとか覚えない?』
__『っ是非とも!!!!』
異世界に来て、やたら身体能力が上がっている私。
いろんな技を使えるなんて、夢のまた夢だと思っていたが........くぅっ!!!!!
彼も彼で、俺に色々教えてどんだけ成長するのかを見たいらしい。
まぁ、そういう流れで、李安さんからは様々な事を教わった。
とりあえず、今の私がもっているスキルを整理しようか。
え?なんでそんな事するのかって?
頑張った成果を見たいんだよ、悪い?
・この時代のお金の計算(勝手に単位を変えて考えたら出来た。)
・この時代の読み書き(漢字ばっかだけど頑張ってみた。)
・この時代の礼儀、上下関係及び官位その他
・この時代の職業
・若干現在進行形ではあるが、武芸(ほぼ全部の形)
うん。
こんだけだったりするorz
なんでだ〜、あんなに頑張ったのに〜
4歳ぐらいの姿でここに来て、12年間必死に頑張ったのに〜
もうちょっと神々しさ溢れる、なんていうの、魔力的なのがほしかった......。
くそ、ラノベ好きな私の夢を壊すのか、この世に神は居ないのか!!
まぁ?別に期待してないけど?
ここに来るまでに神様に会わなかった事もあったし?うん、別に期待なんてしてないけど?
まぁここで愚痴っても何も変わらないので、今はただひたすらこの国を出る事だけを考える。
懸命な判断だよね。うん。
でも、たとえ1人で旅に出れる力があったとして、どんな所でのたれ死ぬかわからないから
森の中で小さな生き物を殺したりて、旅の食料として肉を干した。
手頃な竹を割って、削り、水筒を作った。
一日生きれる食料を適度に摂って、今日まで健康に生きた私は、
拾われた時に持っていたと言う黒い剣を腰にさし、李安さんの家を出る前に彼がくれた黒い馬にまたがって
蜀の国境を越えた。
馬の名前は何にしよう?
これからどの方向に行こう?
どの国にこの身を預けよう?
私の思考はぐるぐるとまわって、まわって、,,,,,
いつの間にか、夜になった。
夜は一段と冷えて、盗賊に遭わないように必要最低限の身動きや音はたてなかった
時折強い風に驚く黒い馬の頭を優しく撫でながら
私はゆっくりと、浅い眠りに堕ちた。
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真っ白な光が目に焼き付く。
そんな感覚に陥った私は、ゆっくりと、瞼を持ち上げた
空は快晴。よく見れば何処かの廃城の前だった。
どれだけ疲労していたのか覚えていないが、目の前にこれだけ大きな建物があったのに気付けないとは
自然の作る闇とはなんとも恐ろしい物だと改めて実感した。
とにかく、ここを少し調べてから発つとしよう。
何か大事なモノを盗られていて、気付かずに行ってしまうなんて嫌だからね。
それに、何か興味をそそる跡地を散策して見たくもあったから。
頭の良い黒馬は、甘える様に私にすりよってくると、背中を押してくれた。
荷物はいつのまにか黒馬の足下に隠す様な、守る様な形となって置かれている
「…..。君の名前、決めた」
「ヒン?」
馬は可愛らしく(?)首を傾げた
自然にこぼれる笑みに、馬は先程よりも深く首を傾げる
「ふふ、優しくて、早くて、賢い君に相応しい名前だと思うんだけどね」
「ヒ~ン」
「お気に召さなかったら悪いなぁ。」
「ヒン!ヒヒン!」
最初は猫の様に目を細めて喜んでくれてたけど、私の言った言葉が気に障ったのか、首を激しく振った
……軽く落ちそうで怖いんだけど。
「わかった、わかったよ!」
「ブルルル….」
「君の名前はね、鳳にしようと思うんだ」
「ヒン!!!!!!」
馬…否、鳳は喜んで、荷物をひきずらないようにクルクルとまわった。
そして、何かに気付いた様に振り返り、私の背中を押した。
きっと「早く行け」という意味なんだろう。
この配慮に感謝して、私は静かに足を踏み入れた。
そびえ立つそれは、異物を拒む事無く受け入れる
物陰からの視線に気付かぬ異物は、慈しむ様にそれにふれ、目を閉じる
その姿は、荒れ果てた城に帰って来た、勇者のようにもみえた。