一刻
...頭、痛ぇ...。
パソコンに向かう体勢が、ねっころがってちゃイカンという法律があるのかっ
,,,無意味に叫ぶ
そして、今回も読んで頂きありがとうございますっ
深夜の森に 人影が走る
まだ幼さを残す容姿をした"それ"は 無表情でただ森を駆けた
その後ろを続く者どもの息づかいは荒く、心底疲れきった様子だった
「ま、待ってくれえええい!!!」
「お頭ぁ!!もう諦めましょうぜぇ!!」
「仕方が無いか….惜しい事をした.....」
ついに追う者は力つき、夜の深い森に倒れ込んだ
濡れた芝生の上は じっとりとしていて、まるで何かの生き物の上に寝転がっているような感覚に陥った
そんなはずは無いと自らに言い聞かせた追っ手たちは、ゆっくりと先程まで追いかけていた人影を見つめた
「….つまんないの」
声がした
それも、近い場所で
追いかけていた者は 一瞬背筋が凍る思いをした
何故だかわからないが、「ここは危険だ」「殺られてしまう」と、本能が警鐘を鳴らしていた
しかし、体は動かない 足はすくんで立ち上がる事すら出来ない
分けも解らぬまま、お頭と呼ばれた男は
「何処にいやがる!!!で、出てこねぇとその頭もぎ取るぞ!!」
と 力任せに叫び、刀を持ったままの手を振り回した
がしかし。
パシッ
「危ないでしょ?仲間に当ったらどうするの?」
「なっ…」
”それ”は いとも容易くその太く、鍛えられた腕を掴んだ
ガコッという音がして、肩の関節が外れる
瞬間、男の断末魔が森にこだました
仲間の男達は 震えながらその様子を見ていた
…中には泡を吹いて気絶している者も居た
黒い影は 強い光を放つ美しい瞳で、男を見た
「誰が、僕の頭をもぎ取るんだっけ?僕、忘れちゃったんだけど」
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!お助けぇええええええええ!!!!!」
にっこりと妖艶に笑うそれに とうとう男達は腰を抜かしながら逃げて行った
間接を外された男も 泡を吹いて倒れ込む
人影は 仕方ない..という様に首を振って また、森を駆けた
その顔には 恐ろしい程美しい、残忍な笑みが広がっていた
* * * * * * * * * * *
「ただいまー」
「おかえりー…ってなによ、その阿呆みたいな顔」
「”良い事"あったからにきまってるじゃない。ってか阿呆って..」
「あっそぅ 2日も還ってこなくて心配したのよ?」
「漢字違うから。それだと僕、一回死ななきゃだめだから」
「あ、そうね。殺さなk「ごめんなさい」よし」
朝から漫才のような会話が繰り広げられる
最も、この時代に漫才など存在しないのだが…
ここは 俺が住んでいたセカイとは違う。
俗に言う二次元ぶっとび事件、通称異世界トリップ
朝起きたらここ、三国志の蜀の街に居て(しかも幼児化してさ?)
偶然出会った、宮廷に使えていた女、楓に拾われたのだ
今は甘味屋を営んでいるらしい
相手は、僕が捨て子だったと思っているらしく、多少のワガママは通してくれる
本当の僕の両親はすでに亡くなっているから、楓の纏う空気は懐かしくもあり、新鮮でもあった
「ちょっと買い物行っていい?」
「あら、何買うの?」
「内緒」
「….あっそう。じゃぁ買って来なさい」
大抵これを言えばなんとでもなる
優しすぎるこの人は 一体どれだけの人に好意を寄せられているのだろうか…
実際、この街の人達の中で、楓を知らない者は居ない
それほどまでに この女性は人脈に富んでいる
目立つ程美しい事も無いのに、魅力的で、何かに惹き寄せられるのだ
だから、色んな男が寄り付いてくる
僕は、それが不愉快で堪らない(..決してマザコンではない)
実は
…楓には 夫が居ない
事実上は居たのだが 今はもうこの世に居ないらしい
政略結婚によるものだったと、最近知った
そんな状態の、か弱い女性にすり寄ってくる男達が、心底気持ち悪く思えた
ここの世界では、愛しても居ない者と結婚させられる
そうでなければ 家族や大事な物全てを失うのだという
一見、気楽で幸せそうだが、裏側では悲痛な泣き声がいつも何処かで響いているのだ
そう考えれば、前に居た世界がどれだけマシだったかが解る
まぁ、あの世界にも、簡単に人を刺す殺人鬼が居たりしたけれど……
「ちょっと、どうしたの?早く行ってきなさいよ」
「え、あ….うん。行ってきます」
「変な玲。行ってらっしゃい」
楓がため息をつきながら部屋に戻るのを見届けた後、
僕は市場へ出かけた
「やぁっと見つけた、私の可愛い玲♥」
ゆっくりと弧を描く紫色の唇
ふわりと揺れたツインテールの黒髪は、するすると、まるで自我があるかの様に細い足に絡み付いた
ゴスロリ調の服には、赤いどろどろした液体が染み付いていた
きゅっと引き締まった足の下にあるのは
何だったのだろう......。
「玲、玲、玲玲玲玲玲玲玲玲玲玲玲玲玲!!!!!」
狂った様に叫び、己の体を抱きしめて立ち上がった少女は、
瞳に狂喜を宿して笑った
「愛してるよ、玲♥」
愛らしい容姿の中には
禍々しい闇が宿っている