「8:美女と野獣及び白濁した体液。」と「9:エンカウント。」と「10:フォーリンフォーリン。」と「11:ラヴ&セックス。」
運営さまから以下の通り文句を言われましたので、一部訂正しました。
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本日、立花 凛様の投稿されている作品に関しまして、適切な年齢制限指定がなされていないとの判断を運営側にて行いましたことをご連絡申し上げます。
■当該小説
Nコード:N4150P
小説名:私とボクの瀉血デイズ。(短編版)
該当部分:「8:美女と野獣及び白濁した体液。」と「9:エンカウント。」と「10:フォーリンフォーリン。」と「11:ラヴ&セックス。」
当該小説を拝見させていただきました結果、
・明らかな性行為の描写が存在すること
・医学を題材としている等の理由により性的描写が必要であると判断できないこと
以上の点におきまして、当該小説1点をR18相当であると判断致しました。
つきましては、R15指定として改稿を行われるか、R18指定として再投稿を行われるか、いずれかの対応をお願い致します。
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私としては、青春を描くのに性的な描写は場合によって欠かせないものであり、それをR-18だというのは非常にナンセンスなことだと思うのですが、運営さまのご判断ですので従わせていただきました。
8:美女と野獣及び白濁した体液。
「やっぱり。」
ひたすら嘔吐を続ける私を見下ろしながらヒサが笑っていた。笑うなブス、と罵ろうと思ったけれどヒサは残念なことに私に似て美女なので、というかそれ以前に嘔吐中で罵れなかった。
「痩せ細ってるから何となくそうなんじゃ無いかな、って思ったんだ。それで確かめてみたんだけどね。」
私がモノを食べられなくなったのは小学六年生の時だった。それまでも兆候はあった。食べ物を前にすると急に空腹感が消えて気分が悪くなったり。でも無理矢理胃の中に放り込めば何とかなった。たまに食べたものが込み上げてくることもあったけれど、それも飲み下せば問題無かった。
けれど、今は何も食べられない。見るだけでもう駄目。サプリメントで何とか生きながらえているけれど、そんなもので体調が維持できるわけが無い。その上瀉血なんかやるから、よく倒れるのだ。これも全部、決してあいつが母親とは認めたくないあの母親の所為。
土曜日だった。まだゆとり教育が始まっていなかった頃だから土曜日も三時間目まで授業があって、私はその三つの授業をしっかりと受けてから帰宅した。帰り道は、家々から昼ご飯の匂いがして酷く哀しかったのを覚えている。だって、我が家の母はもう何年も私にご飯を作ってくれていなかったから。
まあそんなことはどうでもいい、どうでもいい。とにかく私は帰宅して、そして自分の部屋に入った。私とユリの共用だったその部屋と母の部屋は隣同士で、だから母が、連れ込んだ男と喋っている声もよく聞こえたのだ。「あの子たち本当に邪魔」と言う声。
「金食うしか能が無いのよ。」
真っ黒な声で母が呟いた。私より先に帰っていたユリは、部屋の隅っこで耳を塞いで蹲って震えていた。私は拳を握りしめる。
「でもお前、一応捨てずに育ててるだろ。結局大事なんじゃ無いの?」
母の男がからかうような口調でそう言った。私は馬鹿なことに、本当に馬鹿なことに、その問いに対する母の答えに、何か優しいものを期待をしていた。「あ、バレた?」とか「まあ何だかんだであたしの子供だから」とか。死ぬ程馬鹿なことに。そんなの、考えなくてもあり得ないって分かる筈なのに。
「馬鹿じゃないの、綺麗に育てとかないと身体売れないでしょ。」
「……ぁ。」
ぱん。私の中で何かが弾ける音がした。そして私は死ぬ程、死んであの世に行ってまたあの世でも死んじゃう程馬鹿なことに母親の部屋へと入って行ってしまったのだ。自分の生活領域を犯されるのが死ぬ程大嫌いな母の部屋へ。あ、間違えた、死ぬ程じゃ無くて殺す程だった。
驚く男。いつも不機嫌な顔から機嫌成分をさらに抜き出したような顔をする母親。むしろ不機嫌100パーセント濃縮還元的な。
「死ね」
四秒と三分の一くらいの沈黙の後、静かに母親はそう言って、私の体はいとも簡単に吹っ飛んで壁に叩きつけられた。思い切り殴り飛ばされたと気づいたのは七秒と五分の四くらい後になってからだった。
見上げると、母は床にうずくまって痛みに耐えている私を全く感情のこもらない冷たい目で見下ろしていた。私は痛みと恐怖で嗚咽を上げながら泣いた。そんな私の背中に母親の足が乗る感触。
「ねえ、こいつ犯していいわよ」
男の足元に蹴り飛ばされて、鳩尾に衝撃がぐわっと来て吐きそうになる。
「処女は高く売れるだろうから挿れちゃ駄目だけど、口とかなら使っていいから。」
恐る恐る男の顔を見上げた。男は、にたぁ、と言う効果音が聞こえて来そうなくらい笑っていた。にたぁ。
それからはあまり覚えていない。ただ、気付くと私は裸で床に横たわっていて、口の中には苦くてドロドロした気持ち悪いモノが溜まっていた。ただただ気持ち悪くて体中がだるくて動くことすら出来なくて、そうして私は何かを食べると言う行為が出来なくなってしまったのだった。
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9:エンカウント。
「俺三年のフルタタスクなんだけど好き好き大好きマジ付き合ってくれ。」
油断してた。思いっ切り油断してた。ここ数カ月全然告白とかされて無かったから、まさか三日ぶりに学校に来た瞬間階段で告白されるとは思ってませんでした、はい。顔を見るとなかなかのイケメン。眉毛無いし、ピアス私より大量に開いてるし、あと前髪無駄に長いけど。
「とりあえず、聞きたいことがあるんだけど聞いていい?」
「任せてくれ!」
「今もう授業始まってるよね」
「授業よりキリの方が大事に決まってるじゃ無いか!」
うわ、超いい笑顔で断言された。キモっ。ちゃっかり下の名前で呼び捨てだし。今まで告白してきた男子の中では珍しいタイプ。と言うかキモっ。もう少し柔らかめの表現をすると……キモっ。ごめんこれ以外思い浮かばない。
「あの、す」みませんと謝って断ろうとしたその時、「おいお前ら授業に行け」と言う教師の声が聞こえた。振り向くと理事長がそこにいた。学校のパンフに写真載ってた87歳のおじいちゃん理事長。何で理事長がこんなところ歩いてんだよ、と突っ込もうとして理事長の服装が目に入って私は言葉を失った。何で学校の制服着てんだよ、しかも女子の。
「じゃあ俺は授業行ってくる。昼休み返事聞きに行くから、考えといてくれ。」
「あ、ちょっと、待って」
……行きやがった。断ろうと思ったのに。ああ、今から昼休みのことを考えると頭が痛い。こんな人の話を聞かない野郎相手に断ったところで「あれか婚約者でもいるのか安心しろそんな奴俺がぶっ飛ばしてやる」とか言いだしそう。
けれど、その心配は杞憂に終わった。何故なら。
「で、付き合ってくれる? マジ大好きなんだけど。」
そんなバカ野郎が昼休みまで待つ筈も無かったからである。まだ一限目の休み時間だってのに、教室に飛び込んできやがったのだ。イケメン上級生がいきなりそんなことすりゃ当然周囲の視線が一気に突き刺さる。ぐさぐさ。血とか、出そう。
「とりあえずここじゃ何ですからどっか別の場所に行きましょう」
視線から逃げるために教室からゲットアウトしようとバカ野郎の手首を掴んだらさらに視線を集める羽目になった。もう勘弁してくれ。
「なら俺に任せてくれ、とっておきの場所があるのさ!」
もう、勘弁してくれ。
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10:フォーリンフォーリン。
ヒサにおにぎりを無理矢理食べさせられて結局食べれなくて吐き散らかした夜。嘔吐が治まって気持ちも治まって私はヒサと喋っていた。主に互いの家の話を。「一人っ子だからお母さんがとっても優しくしてくれる」らしいヒサは、私が母に酷い扱いを受けて姉に先立たれて自傷行為にのめり込んでいることを聞いた瞬間目を輝かせて「見せて見せて」と飛び跳ね出したのだった。こいつ頭のネジ数本は飛んでるな。
袖をまくって傷痕とか針の痕とかを見せつけると、ヒサは「うわ、酷いね」と笑った。こいつ頭のネジ数十本は飛んでるな、と私は溜め息を吐いて俯く。するとそこにはちょうどいい具合にネジが落ちていた。
「あんたの頭のネジ、焼け石に水かも知んないけど少しだけ戻してやる」
「駄目駄目それ本当に駄目洒落にならないから!」
あ、逃げられた。
「って言うか何でリストカットとかするの? 痛いじゃん。」
「リスカじゃ無い、アムカ。」
「そこはどうでもいいってば。」
よくない、すっごい大事なとこ。リストカットなんて怖くてできないし。
「うーん、よく分かんないけど、血液を見てると生きてることとか愛とか色々感じて気持ちいいからじゃねーのって感じ。」
「つまり愛液だね」
「死ね。」
こいつ、無邪気キャラを装って下ネタを吐きやがった。流石私のドッペルゲンガー、一応知ってることは知ってるのなぁ。
「って言うかあんたこそ何でそんなに怪我ばっかりしてんのさ。」
ヒサの左腕の包帯が巻かれた場所をぐにぐにしながら聞いてみた。だって普通こんなに怪我しないじゃん。この間だって私の目の前で車に軽くぶつかられてたし。
「あー、ボク反応鈍いからさ、危ないって思っても逃げられないんだよねー。」
そう言えば轢かれているのを見た時も、近づく車の方を眺めたまま凍りついてたもんなぁ。あれじゃあ逃げらんねえよ。
「多分ボクその内死ぬよね。」
「死ぬんじゃない? 後数年の内には。」
「うーん、でもどうせ死ぬなら事故じゃ無くて自殺とかの方がいいかも。」
……危ない危ない、もうすぐで本当にネジを突き刺しそうになるところだった。でも本当に突き刺してあげた方がいいかもね、姉に自殺された奴の前で自殺がいいとか言いだすようなクズ野郎は。
「死ぬならねー、あっこのビルがいいなー。」
彼女は少しだけいつもとは違う妖しい表情で、近くの高層ビルを指差した。私はその指の先を眺めながら「本当に落ちて死んでしまえばいいのに」と罵ったのだった。
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11:ラヴ&セックス
「とっておきの場所があるのさ!」と張り切ってフルタタスク、略してフルタスクが連れてきたのは保健室だった。保健室の中には驚くべきことに誰もいなかった。いや養護教諭いろよ。おかしいだろこの学校。
「で、返事を聞かせてくれるかい?」
ずい、と顔を近づけてくるフルタスク、に爽やか成分を足してみるとフリスクになるよね。どうでもいいね。あと、「ずい」って何となく「ずわいがに」と似てるよね。え、似てない? ああ、そう。とか心の中で呟いて直面した現実から逃げようとしたけれど、フリスクはずっと私のことを見つめている。私は自分を誤魔化すのをやめてフリスクと向き合うことにした。
「先輩、フリスクって呼んでいいですか?」
ごめんやっぱり向き合えませんでした。
「キリがそう望むのなら構わないさ。」
意味の分からないことを言い出した私を、意味不明な寛容さで包み込むフリスク。私は観念した。流石にもう逃げられない。そしてフリスクになら任せてもいいと思った。
「フリスク先輩。」
「何だい?」
「私のこと愛してますか?」
「え? な、何を急に言い出すんだ。」
フリスクは目に見えて動揺し出して、私は少し失望した。フリスクならきっと迷わず「愛してる」と答えてくれる筈だと期待していたから。まあでもよく考えればいきなり愛してるかなんて聞かれたらそりゃ戸惑うよねぇ、仕方無い。
「好きだけど、大好きだけど、愛しているとかよく分からないと言うか」
「愛してるんですかしてないんですか」
「……愛してる。」
「愛してるなら抱いてください。」
空気がぴしっと凍って、それからフリスクはあたふたし出して「え、ちょっと、何でいきなりそう言う方向になるんだ」とか呟き出してとりあえず大変なことになった。私はそれを冷めた目で見つめる。私はフリスクになら任せてもいいと思ったのだ、私の処女を奪う役を。母への復讐の為に。
まだ混乱しているフリスクを待たずに、ベッドにごろんと横になって、それから制服の裾をちょっと上げたりして誘惑。こう言うのを何の違和感も無く出来てしまう私はやっぱりどうしようも無くあいつの娘なんだけれど、でもあいつとは違ってこのセックスには愛があるから。私からフリスクに対してはともかく、フリスクから私に対しては、愛があるから。ラヴ。ラヴ&セックス。あんたとは違う、あんたとは違うんだ。
やがて、フリスクはまだ少し戸惑いながらもベッドへと上がって来て、私の唇を奪った。初めは触れるだけのキス。そして、それを何度か繰り返した後に舌が入ってきた。私は目を瞑る。強く、強く、目を瞑る。身体を彼の手が撫でた。胸。足。鳥肌が立った。びくんびくんと身体が痙攣した。
「感じてるのかい?」
吐き気。耳をくすぐる優しい声が、気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。けれど、私は今日ここで膜を失わなくちゃならないんだ。そして腕以外の場所から血を流さなくてはならない。私は必死に頷いた。感じている、と頷いた。幸い、私の<<自主規制>>は濡れていた。気持ち悪くてたまらないのに愛液を分泌する<<自主規制>>。笑ってしまいそう、結局ディーエヌエーには勝てないって、ねぇ。
「そろそろ挿れるよ。」
気がつけば私はフリスクに覆いかぶさられていて、彼の<<自主規制>>が私の<<自主規制>>に触れていた。少しずつ私をこじ開けようとするそれ。私はもう耐えられなくなってフリスクを突き飛ばした。駄目、駄目、駄目。私の膜を破らないで、私を包む膜を。それが無くちゃ私は何か黒いものに侵されて生きていけなくなるから。
ワイシャツを羽織って、スカートを着けて、乱れたまま下着を着けることすらせずに逃げ出す。情けない格好で床に倒れながら「ちょっと待って」とフリスクが叫んだけれど、振り返ることもせずに保健室を飛び出した。ボタンを留めていないワイシャツの前がはだけて、近くにいた用務員が私を凝視しているのが見えた。
そろそろ鬱展開突入。これからラストまでは多分一気に進んでいきます。感想とか、気軽に書いていただけると嬉しいです。