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『校長が築いた密やかな王国』  作者: 中村 忠政
26/28

秘密保守テスト

薄暗い部屋だった。


豪華でも簡素でもない。

ただ“余計なものがない”空間。


テーブルの向こうに、ひとりの試験官が座っている。


---


「理解度テストは合格です」


淡々とした声だった。


対面に座る青年――ゲームの上位プレイヤーは、少しだけ息を吐いた。


だが試験官は続ける。


「ここからは“次の段階”です。まだゲームの範囲内です」


その言葉に、青年はわずかに眉を動かす。


---


差し出された紙には、たった一行だけ書かれていた。


**「秘密を守れるか?」**


---


「はい」や「いいえ」を選ぶ形式ではない。


ただ、その問いだけ。


---


試験官が説明する。


「これは知識の問題ではありません。経験の問題です」


「秘密を守ることで失敗したことがありますか?」


---


青年は少し考え、答える。


「あります」


---


「話さなかったことで、遅れたことは?」


「あります」


---


「逆に、話してしまって失敗したことは?」


「……あります」


---


試験官は小さく頷く。


「では、次です」


---


新しい紙が置かれる。


そこには四つの項目が書かれていた。


・水源・水道

・土地・証券

・流通・輸送

・情報・構造


---


試験官は言う。


「これらは“国家の基盤”です」


「ただし、ここではまだゲームです」


---


青年は静かに聞いている。


---


「ここから先は選択になります」


試験官の声が少しだけ低くなる。


「あなたは、これらに“関与する側”になることができます」


---


間が空く。


---


「ただし条件があります」


「協力する場合、あなたには“真実”が開示されます」


「しない場合、ここまでの内容はすべて“ゲーム”として終了します」


---


青年は初めて、はっきりと聞き返す。


「真実、とは?」


---


試験官は少しだけ言葉を選ぶ。


「あなたが遊んできたゲームの、現実側です」


---


沈黙。


---


青年の頭の中で、いくつかのことが繋がり始める。


理論ゲーム。

情報の%。

歴史勘違い。


そして、なぜこれが“ゲームとして販売されていたのか”。


---


試験官が最後の問いを置く。


「協力意思はありますか?」


---


部屋は静かだった。


外の音は一切入ってこない。


---


青年は少しだけ目を閉じ、そして開く。


---


「……あります」


---


その瞬間、試験官の態度がわずかに変わる。


硬さが消え、代わりに“確認”の色になる。


---


「了解しました」


---


新しい封筒が差し出される。


今度は封がされている。


---


「ここから先は、ゲームではありません」


---


青年が封を受け取る。


重さはほとんどない。


だが、その中身が軽くないことだけは理解できた。


---


試験官は最後にだけ言う。


「あなたは選びました。ここから先は“選び続ける側”になります」


---


扉が静かに開く。


---


青年は一歩、外へ出る。


---


その瞬間、これまで見ていた世界と、

これから見る世界が、


**同じでありながら違うものに変わった。**


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