表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『校長が築いた密やかな王国』  作者: 中村 忠政
20/28

公共事業は儲からない

石橋は、公共事業に関する「認識のズレ」こそが不正の温床だと見抜いていた。


多くの人間はこう考える。


「水道や橋は大きな金が動く=儲かるはずだ」


しかし実際に計算すると、まったく逆になる。


---


石橋は公務員学校で、徹底的に“総コスト”を叩き込んだ。


対象はすべて同じ。


・水道

・橋梁

・ライフライン管

・敷設工事


そして必ずセットで計算させる。


・初期建設費

・通常メンテナンス費

・中規模改修

・大規模改修(更新・総取替)

・事故対応費

・長期維持人件費


ここまで含めて初めて「本当のコスト」になる。


---


計算結果は毎回ほぼ同じ結論に落ちる。


**「利益は出ない」**


正確には、出してはいけない構造になっている。


なぜなら、


・長期維持が前提

・故障すれば社会損失が巨大

・安定供給が最優先


つまりこれは事業ではなく、


**“損失を出さないための装置”**だからだ。


---


石橋が狙ったのは、倫理教育ではない。


「構造理解」による抑制だった。


不正が起きる典型はこうだ。


・儲かるはずという誤認

・短期的な金の動きに引っ張られる

・長期コストを無視する


これを逆にする。


・最初から儲からないと理解させる

・長期コストを前提にする

・維持そのものを仕事の本質と認識させる


---


授業では繰り返し同じことをやらせる。


数字を変えても結論は変わらない。


その結果、ある変化が起きる。


「抜く余地がほとんどない」ことに気づく


---


さらに石橋は一歩踏み込む。


「もし利益が出ているなら、どこかが壊れている」


・メンテナンスを削っている

・品質を落としている

・将来コストを先送りしている


つまり“黒字”が異常のサインになる。


---


この認識が定着すると、不正の構造が崩れる。


・抜いてもすぐバレる

・長期的に自分に返ってくる

・そもそもやる意味がない


結果として、不正は「道徳的に悪いから減る」のではなく、


**「合理的に割に合わないから減る」**状態になる。


---


王宮の監査報告にはこう記される。


「倫理教育よりも、構造理解の方が効果が高い」


---


そしてストーンブリッジの記録には、石橋の一文だけが残る。


「人は善だから正しく動くのではない。間違えると損だと理解したときに正しく動く」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ