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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
最終章

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87 帝国崩壊 4

 戦争の責任者となった俺だが、やっていることは地味だ。

 情報によると皇帝ウイリアムが率いるオンボーロ帝国軍はオンボーロ公国最南端のムーデンをまず押さえようとしているとのことで、ムーデンの防衛についてはリオネッサ将軍に一任し、俺はというと、補給線の確保をメインで担当していた。最近、アトラス、ムーデン間のゴーレム列車が開通したから、多少は楽ができるけどな。


 そして、万が一に備えて巨大ゴーレムをいつでも実戦投入できるように整えた。

 レントン教授の手記をすべて翻訳し、バネッサ所長たちに開示した。その内容にダンジョンフェアリーであるファーベルも驚いていた。


「なかなかやるわね。流石に人間がここまでの技術を持っていたとは驚きだわ」

「当たり前じゃ。我が最愛の夫ルークの技術を舐めるでない」

「私も負けられないわね。この技術と私の技術を融合すれば、もっと凄いゴーレムが作れるわ」

「せいぜい頑張るがよい」


 どういう訳か、巨大ゴーレムを3体作ることになってしまった。

 元からある巨大ゴーレムはバネッサ所長が担当し、もう一体はファーベル、そしてマリベラを筆頭にしたゴーレム技師たちも独自でゴーレム開発をすることになった。


「所長たちに負けないゴーレムを作るッス!!」


 全く緊張感がない。

 この件について、俺はもう関わらないことに決めた。



 2ヶ月後、とうとうオンボーロ帝国が宣戦布告をしてきた。

 聖戦の発動を楯に無条件降伏をこちらに求めてきたが、当然呑めるわけもなく、のらりくらりと躱していたのだが、相手も痺れを切らしたようだ。


 この報を受けて、多くの志願兵が集まってきた。

 リオネッサ将軍を慕う元軍人、フィオナ嬢とアンドリュー公爵のご学友たちだ。俺の同期も来てくれた。意外に俺は友だちが多かったのかもしれない。

 フィオナ嬢が言う。


「センパイは伝説の存在だって言ったでしょ。センパイをよく知る者からすれば、どちらがこの戦争に勝つか分かりますよ」

「そ、そうか?俺なら、しばらく様子見するぞ。大勢が決したら勝っているほうの陣営にすり寄るな」

「相変わらずですね・・・」


 その他にも多くの冒険者も参加することになった。

 ギルマスのドゥエインさんが言う。


「安心安全のアレクが失敗したことなんてないからな。皆、勝ち馬に乗りたいんだよ」

「それは絶対失敗しない依頼を選んでいただけで・・・」

「つまり、お前がオンボーロ公国を選んだってことは、負けるはずがないってことだ」


 そうなのか?

 まあ、味方は多いほうがいいからな。



 ★★★


 とうとうオンボーロ帝国軍が動き出したとの一報が届いた。

 アンドリュー公爵を総大将にムーデン近郊に砦を建設して、迎撃態勢を取る。優秀な魔導士や職人が多くいるから、建設はあっという間だった。多分、オンボーロ帝国軍は腰を抜かすだろう。


 今回の迎撃作戦はただ待っているだけではない。

 積極的に夜襲に出て、オンボーロ帝国軍の戦意を削ぐ作戦だ。こちらは夜目の利く獣人や魔族が多いからな。

 シフトを組み、昼は冒険者や志願兵を中心に、夜間は獣人や魔族の混成部隊をメインでオンボーロ帝国軍に襲い掛かる。


 ここで絶大な戦果を上げたのは、自爆型ドローンゴーレムだ。

 ピンポイントで輸送部隊を攻撃する。食料を満載した馬車が、一瞬にして火だるまになる。オンボーロ帝国軍はかなり疲弊しているようだった。


 軍議で報告を聞いたリオネッサ将軍が怒鳴る。


「帝国軍はどうなっているのだ!?これしきのことで、脱走兵が大量に出ているだと!?

 進軍速度を落とし、常に結界を張りながら進むとか、逆に罠に嵌めるとか対策があるだろうに・・・

 将軍として軍を率いていた身としては恥ずかしいかぎりだ」


 敵の不甲斐なさを怒るのはどうかと思うが、本当にオンボーロ帝国軍は寄せ集めだった。

 フィオナ嬢が続く。


「それで脱走兵の一部が盗賊となって、付近の村や町に被害が出ています。ですので、そちらの防衛も必要かと思います。我が国の領土ではありませんが、元々同じ国の民ですし・・・」

「仕方がない。冒険者を中心に対策部隊を編成しよう。それにしても、軍人の風上にもおけん。嘆かわしい・・・センパイ、編成を頼む」


 仕方なく、ギルマスのドゥエインさんにお願いする。


「いいぜ。盗賊対策の依頼はお手の物だ。その代わり、依頼料はもらうぞ」

「いいですよ。5割増しで出します」

「冗談のつもりだったんだがな・・・まあいい。受けた仕事はきっちりやるよ」


 こうして、戦況は有利に運んだ。

 もうムーデンにたどり着く前に瓦解するのでは?という意見も出始めた頃、急報が飛び込んで来た。報告に来たフェイさんも少し焦っている。


「巨大ゴーレムです。巨大ゴーレムが進軍してきました。それに・・・」


 酷すぎるな・・・


 報告によると、巨大ゴーレムは問答無用で付近の村々を踏みつぶしながら進んでいるようだ。

 幸い、冒険者部隊が避難誘導を適切に行ったようで、人的被害はないのだが、被害に遭った村は無残な状況らしい。


「酷すぎます!!元婚約者として、恥ずかしいです。そこまでするなんて・・・」

「仕方がない。夜襲は中止して、難民対策を最優先にする。それにここで待っていれば待っているだけ、被害が増える。討って出ようと思うのだが・・・」


 アンドリュー公爵が言う。


「僕も賛成です。こんな馬鹿げた戦いで、不幸な民を生み出すなんて、間違っています。アレク兄上、どうにかなりませんか?」


 勝つだけを考えれば、このまま動かないことが得策だ。巨大ゴーレムの動力は魔力だ。魔石や魔導士を大量動員しても、稼働時間は決まっている。なるべく疲弊させるのが鉄則だが・・・


「分かりました。すぐにゴーレム部隊を招集しましょう。流石に村人たちを見捨てては、寝覚めが悪い。安心安全な生活を送りづらいですからね・・・」


「相変わらずですね・・・」

「センパイらしいな」

「頼もしいです」


 こうして、満を持して、こちらも巨大ゴーレムを投入することになったのだった。

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