83 再建計画
俺は資料をまとめ、女王陛下に説明を始めた。
女王陛下も傍らにいるルートナー伯爵も渋い顔をしている。
ルートナー伯爵が言う。
「流石にこれは・・・できんことはないが・・・陛下、よろしいのですか?」
「うむ・・・センパイ、もっと詳しく説明してくれ」
俺が思いついた案は、帝国の規模を縮小することだった。
これには事情がある。どう考えても普通の再建は無理だから、再建はできるけど女王陛下が呑めない内容にすることにした。それは現在のオンボーロ帝国の規模から考えると信じられないくらいに領土を縮小するというものだ。
属国や植民地を独立させ、国軍も縮小する。具体的に言うと、帝都アルトモとその周辺、スペンサー侯爵領とその周辺の領土だけになる。もう帝国と名乗るのも、おこがましいくらいになってしまう。
そうなると他国から攻められると思うかもしれないが、それは大丈夫だ。
帝都周辺もスペンサー侯爵領周辺も守りやすく攻めにくい地形なので、侵略を考えなければ必要最低限の兵力で何とかなる。場合によっては、ゴーレム兵器の運用も考えているしな。
女王陛下はというと、目を閉じて考え込んでいた。
多分、この案は採用されないだろう。これではオンボーロ帝国ではなくなってしまう。それでも俺がこの案を提案したのは、女王陛下に断ってもらえるようにと思ってだ。
これはよくやる手なのだが、ワザと相手が吞めないような提案をすることによって、プロジェクトから外してもらう作戦だ。
俺が頑張っていることはアピールできるし、呑めない提案だから俺が仕事をさせられなくて済む。
しばらくして、女王陛下は口を開いた。
「国の体を成さなくなるのは心苦しい。しかし、アルフレッドは国を大きくすることが最大の目的ではなかったのを思い出した。困っている者たちを救っているうちに自然と国が大きくなったのだ。困っている民を救うことが目的で、国を大きくすることはただの手段だったと思い出した。それが最善手なら、我も決断しよう。センパイよ、存分にやってくれ」
あれ?想定と違うんですけど・・・
俺は今更、「やっぱりできません」と言うことはできず、この一大プロジェクトの責任者にされてしまった。
★★★
次の日、プロジェクトメンバーを集めて会議を行った。
メンバーはアンドリュー皇子、フィオナ嬢、リオネッサ将軍、ルートナー伯爵だ。バネッサ所長にも声を掛けたが、「妾は忙しい」と言って断られた。
俺は集まったメンバーに対して、プランを説明した。
「・・・つまり、今の帝国の大部分の領土を放棄して、小さな国にするということです。もうこれくらいしか手は残されていません。アンドリュー皇子、心中お察し致しますが・・・」
アンドリュー皇子が言う。
「分かりました。それでいきましょう。僕は皇帝の器ではありません。ですので、皇帝としての最後の仕事としてやりましょう。そしてその後、責任を取って皇帝を退き、平民となって生きていきます」
俺は心の中で、料理人として生きていきたいだけだろうと思ってしまった。
「殿下!!ご立派です。このフィオナ、殿下の決断を尊重致しますわ」
フィオナ嬢は高評価のようだ。
リオネッサ将軍が言う。
「私としては、帝都周辺とスペンサー侯爵領も別に国にしたほうがいいと思うがな。スペンサー侯爵領だけなら、どんな軍隊が攻めて来ても、どうとでもなる。帝都を含めると兵力は3倍は必要になるからな」
ルートナー伯爵が続く。
「将軍の言うことは一理ある。帝都を含めると碌でもない貴族や仕事をしない官僚を抱えることになる。そう考えるならスペンサー侯爵領だけにしたほうがいいかもしれんな・・・」
アンドリュー皇子が言う。
「僕はそれで構いません。国の広さなんて関係ありませんよ。それで具体的にどうすればいいのでしょうか?」
俺は事前に作成していた計画書をメンバーに配った。
「流石センパイです」
「これは凄いな・・・」
「うむ・・・計画は完璧じゃ。後は実行できるかどうかじゃな」
アンドリュー皇子が決意に満ちた表情で言う。
「絶対にやりきりましょう。その覚悟はできています」
その後詳細を詰めながら会議は進んでいった。
ある程度、煮詰まったところで女王陛下に報告に向かった。
「なるほど・・・この短気間で、ここまでのことをするとは流石はセンパイだな」
「いえいえ・・・安心安全な生活を維持するためには必要ですからね。国から給料を貰うために公務員になったのに、国が無くなってしまえば本末転倒ですよ。この計画が上手くいけば、俺一人を公務員として雇うことなんて、どうとでもなりますからね」
「相変わらずだな・・・」
報告後、女王陛下に呼び止められた。
「まさかとは思うが・・・センパイはアルフレッドの生まれ変わりなのか?センパイの口癖「安心安全な生活」は、アルフレッドの口癖「みんなを笑顔に!!」に似ている。そうか!!センパイは我にヒントを出してくれていたのだな?」
絶対に俺はアルフレッド大帝の生まれ変わりなどではない。現代日本からの転生者だからな。
何とか、誤解を解こうとしたが無駄だった。いつもの冷静な女王陛下とは違っていた。
「そ、その・・・多分違うと思いますよ・・・それにみんなを笑顔にしようとは思いますが、それよりも安心安全な生活のほうが大事で・・・」
「みんなを笑顔にするためには、安心安全な生活が大事ということだな。会いたかったぞ、アル!!」
その後、俺は女王陛下に押し倒された。
若い俺は誘惑に負け、女王陛下を堪能してしまった。今更、違いますとは言えない状況だ。
「あのう・・・申し訳ないんですが、記憶がないので・・・」
「気にするな。おいおい思い出せばいい」
「努力します・・・」
こうして俺は仕事、プライベート共に絶対逃げられない状態に陥ったというわけだ。
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