76 皇子の町づくり
俺は驚きで腰を抜かしそうになっていた。
「えっ!!帝都から視察団が来るだって!?」
「申し訳ありません・・・少々やりすぎました・・・」
平身低頭するフィオナ嬢から事情を聞く。
一言で言うと、フィオナ嬢はアンドリュー皇子の功績を盛りに盛って報告してしまったようだった。
「とりあえず、提出した報告書を見せてくれ」
「分かりました・・・こちらです」
報告書を見て、膝から崩れ落ちそうになった。流石にこれはやりすぎだ・・・
フィオナ嬢は、アンドリュー皇子が町を発展させた功績を盛大に盛って報告していた。報告書によると、アンドリュー皇子が発見したことになっているダンジョン付近の収益予想が、スペンサー侯爵領最大の都市ムーデンをも凌ぐものとなっていた。新しく発見されたダンジョン付近一帯は既に町と言っていいくらいにはなっている。しかし、それでもムーデンを凌ぐほどの収益を上げてはいないだろう。流石にこれはやりすぎだ。
ここまで凄いことになってしまえば、流石に視察に来るよなあ・・・
今回の件は、フィオナ嬢だけを責められない。
俺が何のチェックも指示も行わず、完全にフィオナ嬢に丸投げしていたからだ。流石に部下に仕事を丸投げし、問題が起きたら責任をなすりつけるようなことはできない。
「とりあえず、女王陛下に相談してみよう。あの人ならいい助言をしてくれるだろうし、もしかしたら、凄い裏技を教えてくれるかもしれないからな」
「ありがとうございます。ご迷惑をお掛けします」
俺とフィオナ嬢は、女王陛下を訪ねた。
俺が事情を説明すると女王陛下は大笑いした。
「ハハハハ・・・フィオナ嬢、愉快なことになったな」
「陛下、笑い事ではありませんよ」
「それは失礼したな。それでセンパイはどう対処するのだ?」
「すぐに対策は思いつかなかったので、陛下に相談に来たのです。まあ、最悪「ちょっと盛りすぎました」と謝れば、処分はないかと・・・」
女王陛下は報告書を確認し、少し考えて言った。
「それでは芸がない。何ならこの報告書が嘘にならないようにすればいいと思うのだが?」
「それはどういうことでしょうか?」
「つまり、この報告書に記載されている収益を上げればいいのだ」
「そんなに簡単に言いますけど、かなり厳しいですよ。それに刑務所の秘密もバレるかもしれませんし・・・」
「それは気にしなくていい。秘密はいずれバレるからな。それにあくまで収益予想なのだから、6割程達成できれば、それで納得してくれるのではないのか?」
6割だったら可能だ。
「分かりました。何とかしてみます」
★★★
俺たちは、その足でルートナー伯爵を訪ねた。
ルートナー伯爵はベテランの文官だ。こういった経験も豊富だと判断し、協力を求めることにした。
「陛下から話は聞いておる。儂が自ら手伝ってもいいが、それよりも部下に経験をさせてやりたい。見繕ってやったから、協力して頑張ってくれ」
ルートナー伯爵に紹介されたのは5人の魔族たちだった。何れも幹部候補生らしい。
「それで町を発展させる方法はセンパイたちで話し合っていけばいい。儂としては体裁を整える手伝いをすることにする」
そう言ってルートナー伯爵は俺に申請書を手渡してきた。
「これは・・・ダンジョン付近に刑務所の出先機関を設立すると?」
「うむ。この者たちは囚人という扱いじゃ。この者たちを合法的に使うにはそれしかない。それにその出先機関の責任者をアンドリュー皇子にすれば・・・」
フィオナ嬢が叫ぶ。
「かなりの功績が挙げられます。それに囚人を更生させたことにすれば・・・」
「そういうことじゃ。しっかりと頑張りなさい」
俺はルートナー伯爵にフィオナ嬢が作成した報告書を手渡し、懸案事項を伝えた。
「これは・・・かなり厳しいものがあるのう・・・」
「ですよね?サイショウさんならどうしますか?」
「ダンジョンの収益だけでは難しいのう・・・何か目新しい施設があれば、冒険者や商人以外の人間が多く集まると思うのだが・・・」
税収を上げる方法は色々とあるが、何よりも人口を増やすことが先決だ。
実際、アトラスもダンジョン付近の町も人口は増えてはいるが、ほとんどがダンジョンの素材目当ての冒険者や商人、研修で来る学生だ。一流の研究者や貴族が好き好んで、この田舎に来ることはないしな。
少し考えたところで、俺はあることを思いついた。
「人口を増やす方法なら思いつきました」
「しかし、誰でもいいというわけにはいかんぞ。ある程度、技能や教養を身につけた者でなければ、逆に治安を悪化させるだけじゃからな」
「それは分かってます。なので・・・」
フィオナ嬢が感嘆の声を上げる。
「流石はセンパイ、ゴーレム神様の使徒ですね!!」
俺はゴーレム神の使徒じゃないけどな・・・
すぐにバネッサ所長と作業員たちに許可を取りに行く。
皆、大喜びしていた。
「妾もここら辺で成果を発表することは必要だと思っていたのじゃ」
「でも、流石に巨大ゴーレムは秘匿にしますよ」
「もちろんじゃ」
俺が考えた作戦は、ゴーレムを町の発展に利用することだった。
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