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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第五章 副所長のお仕事

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75 ダンジョン

 発見されたダンジョンはごく一般的なダンジョンで、階層ごとの難易度も適切で、優良ダンジョンと言ってもいいくらいのものだった。

 ギルマスのドゥウェインさんも大満足だ。


「ここまで良心的なダンジョンはなかなかないぞ。アトラスの「試練のダンジョン」と、このダンジョンがあれば、中級の冒険者までの育成は完璧だ。下層はどうなっているか分からないが、間違いなく低階層は優良ダンジョンだろう。安心安全のアレクはどう評価する?」


 因みにアトラスのダンジョンは正式に「試練のダンジョン」という名称になっている。

 少しでも実力をつけようと軍人や冒険者が集うことからそうなったようだ。


「間違いなく優良ダンジョンですね。自分の実力にあった活動をしていれば、事故は少ないでしょうね。ただ、安心安全を追及するなら、階層ごとにある池や湖の調査をしたいものです」


 このダンジョンには1階層から5階層には必ず池か湖が設置されているのだ。

 池や湖に危険な魔物が潜んでいないとも言いきれない。


「アレクは相変わらずだな・・・しかし、その意見は一理ある。でもなあ・・・好き好んで、池や湖に潜る冒険者はいないんだな。これが・・・」


 そんな時、ミケに同行していたフロッグ族の青年が声を上げた。


「その調査、俺たちにやらせてほしいケロ。こう見えて俺たちは泳ぎが得意なんだケロ」


「許可するニャ。だけど、絶対に無理はしてほしくないニャ」


「「「はいケロ!!」」」


 ミケに許可をもらったフロッグ族たち3名は次々に湖に飛び込んで行った。

 しばらくして、大きな魚や貝類を獲って上がってきた。


「危険な魔物はいなかったケロ。それにしても、この湖はいい魚も貝もいっぱい獲れるケロ」


 フロッグ族たちが獲ってきた魚や貝類をミケが鑑定する。


「この魚は高級魚のサマスだニャ。それに貝もけっこういいニャ。これは大儲けのチャンスだニャ」

「おい!!だったら冒険者ギルドも噛ませてくれ」

「定期的にフロッグ族の護衛依頼を出すニャ。多少色をつけてあげるニャ」

「頼むぜ」


 フロック族はというと、誇らしげに胸を張っていた。

 俺はアンドリュー皇子に言う。


「今回、俺は何もしてませんが、殿下が抱えていた問題が解決したようですね?」

「信じられません・・・」


 まあ、信じられないだろうな・・・


 しばらくして、フロッグ族たちがアンドリュー皇子の元に来て、お礼を言っていた。


「僕がお礼を言われるのは違うような・・・」

「殿下、神様が殿下の頑張りに応えてくれたのかもしれませんし、お礼は受け取っておきましょう。それにサマスを使って料理をすれば・・・」

「そうですね!!最高の料理を作ってみせますよ」


 それから調査を終えた俺たちは、ダンジョンの外に出て、野営をすることになった。

 ダンジョンの湖で獲れたサマスや貝料理に舌鼓を打ち、楽しい夜を過ごすことができた。


 ★★★


 まあ、ここまでくれば分かると思うがすべて自作自演だ。ダンジョンの制作をメインで行ったのは俺だしな。

 ダンジョンフェアリーのファーベルも大満足だ。


「オープン早々、ここまで来場者が多いダンジョンも珍しいわ。それにしても、凝ったダンジョンよりも、オーソドックスなダンジョンが好まれるのは、勉強になったわ」

「そうですね。初心者から上級者までを満足させようと思えば、階層ごとのレベル管理が重要ですからね。また、幅広い種族が活躍できる設計になっているので、それも来場者が多い要因かと思います」

「そうね。それにダンジョン入口一帯をダンジョンポイント回収スポットに設定することも驚いたわ。今ではダンジョン内よりもダンジョン入口付近のほうが回収率が高いのよ」


 ダンジョンポイントは冒険者がダンジョン内に滞在してくれるだけでも回収できる。

 ダンジョン入口付近は、宿屋や飲食店が建ち並んでいるので、それだけで多くのダンジョンポイントを回収できるというわけだ。


「アレクには、ダンジョン管理の才能があると思うわ。本格的にダンジョンの勉強をさせてあげてもいいわよ」

「それは遠慮しておきます」


 バネッサ所長が会話に入ってくる。


「ファーベルが人間を名前で呼ぶのも珍しいのう・・・」


 そういえば、ファーベルが名前で呼んでいるのはバネッサ所長だけだ。フィオナ嬢なんて、縦ロールだし・・・


「まあ、功績を考えたら、そうしてあげてもいいかなって思ったのよ」


 ファーベルは俺のことを認めてくれているようだった。


「副所長よ。引き続きファーベルを手伝うように。ダンジョンポイントが貯まれば、わらわも得をするからのう。ゴーレムの部品も最近では、ダンジョンポイントで購入しておるのじゃ」

「そういうことだから、引き続きスタッフとして働かせてあげるからね」


 どうやら、またこき使われるようだった。

 そうはいっても、しばらくは俺がいなくてもなんとかなりそうだけどな。


 所長室を出ると、フィオナ嬢に声を掛けられた。


「フロッグ族の問題は解決しました。それでアンドリュー皇子の功績を上げる件についてですが・・・」

「その話か・・・まあ、ダンジョンを発見しただけでも、かなりの功績だぞ」

「そうなんですが、もっと皇族として・・・」


 フィオナ嬢が言いたいことは分かる。

 ダンジョンを発見しただけなら、「運がいい奴」で終わってしまうからな。これ以上、俺は手伝うつもりはないけど、アドバイスくらいはしようと思った。


「一般的な官僚の評価方法は書面によるところが大きい。今もダンジョン付近は急速に発展しているから、アンドリュー皇子の功績として報告すればいいんじゃないか?」

「その手がありましたね。では引き続きお願いしますね」

「それは無理だ。君のためにならない」


 もうこれ以上、仕事を増やされたくないからな。


「フィオナ嬢、君はもう一人前の刑務官だ。自分で考え、行動したほうがいい」

「それはそうですが・・・私にできるでしょうか?」

「それは分からないけど、魔法少女ならどんな困難も乗り越えるんじゃないのか?」


 フィオナ嬢は決意に満ちた表情で言った。


「分かりました!!絶対にやり遂げてみます」


 去って行くフィオナ嬢を見送る。


 これでフロッグ族の問題も、新規ダンジョンの製作も、アンドリュー皇子の功績を上げることも解決した。それにすべて俺の手から離れたからな。


 この時、俺は久しぶりに安心安全な生活が戻ってくると喜んでいたが、すぐにそれが絶望に変わるのだった。

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