表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第五章 副所長のお仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/89

72 申請

 俺とフィオナ嬢とアンドリュー皇子は書類作成をしながら、アトラスの有力者への根回しを行っていた。

 有力者といっても、ほとんどが縁故関係者だが・・・


 まずは魔法省ダンジョン管理局局長の父の元を訪ね、事情を説明して協力を求めた。


「流石はアレクだな。直接関係のない私の所に挨拶に来るとは感心だ。お前も官吏の何たるかが分かってきたようだな」

「ええ・・・少しでもトラブルは避けたいですからね」

「うむ。それでは同意書にサインしてやろう」


 父に話を通した後は、その足で教育省アトラス研修所所長のマイケルを訪ねる。


「礼を言うぞ、アレク。こちらも直接関係がないとはいえ、公に協力要請が無ければ、上のほうがへそを曲げるからな・・・」

「そう思って、ここに来ましたからね」

「それでこの後はフィリップの所か?」

「はい」

「だったら、これを持って行ってくれ。アイツも喜ぶだろうしな」


 マイケルに渡されたのは、大量のお菓子だった。

 マイケルとしては、俺がフィリップに気を遣ってお願いに来たことにして、フィリップを喜ばせたいのだろう。

 俺はそのお菓子を受け取り、フィリップの所に向かった。


 フィリップが大隊長を務める北部方面隊を訪ねると、いつも通り大歓迎をされた。

 まるで皇族がやって来たくらいの歓迎だった。まあ、こちらもアンドリュー皇子がいるからある意味、間違ってはいないが・・・


 フィリップはというと、特に詳しい話を聞かず書類にサインしてくれた。


「よし、悪いことをしたり、暴れたら俺がやっつければいいんだな。任せておけ」

「フィリップ兄さん、今回刑務所から外に出るのは正確には囚人ではありません。あくまでも刑務所内で育った囚人の子供たちです」


 今回、アラクネやケンタウロスたちを刑務所外に出すのに、囚人ではなく刑務所内で生まれた囚人の子供という設定にした。これなら申請が通りやすいと思ったからだ。そもそもの話、彼らは囚人ではないんだけどな・・・


「まあ、何でもいい。困ったら俺を頼れ」

「は、はい・・・」


 心の中では、絶対に頼らないと思ったけどな。


 それからは冒険者ギルド、商業ギルドを周った。

 商業ギルドは最近できた施設で、支部長はなんとミケが務めている。


「もちろん協力するニャ。それで・・・」

「分かっているよ。優秀な人材は一番に回すよ」

「センパイもよく分かっているニャ」


 相変わらず、ミケは抜け目がない。


 そして最後は、フィオナ嬢の父親であるスペンサー侯爵を訪ねる。

 各所から集めた同意書を見ながら、スペンサー侯爵は言う。


「まあ、町の者の同意が取れているのなら、こちらが反対する理由もない。しっかりとやるように」

「はい」


 帰り際、フィオナ嬢が言う。


「お父様は、こういったことには慎重なんですが、あっさりと承諾したくれましたね」


「フィオナ嬢も殿下も覚えてほしいのですが、私たち官僚は根回しが重要なのです。私を含めて、官僚とは責任を取りたくないものです。なので・・・」


 俺は二人にそれとなく指導をした。


「副所長、ありがとうございました。僕の失敗をフォローしてくれて・・・でも、これで大丈夫ですね?」


「そう上手くはいかないと思いますよ」


 俺としては、アトラスの有力者については、特に心配していなかった。問題は別にあるからな。



 ★★★


 3日後、俺たちは書類を揃えて、帝都までやって来た。法務省に許可を得るためだ。

 初めて利用する転移魔法陣にアンドリュー皇子は驚いていたけどな。


「こんなものがあるのですね・・・これは皇族でも知っている者はごく一部でしょうね」


 帝都に到着してすぐに法務省に向かった。

 かなり時間が掛かると思っていたが、すんなりと手続きが進んで行く。そして・・・


「だ、大臣・・・」


 なんといきなり、法務大臣が応対してくれることになった。


「アンドリュー皇子、お久しぶりでございます。書類も完璧ですから、すぐに許可をしましょう。それと責任はアンドリュー皇子が取られるということでよろしいんでしょうか?」


 アンドリュー皇子が答える。


「もちろんです」


「分かりました。陛下からの書状もありますし・・・断るなんてできませんよ」


 大臣室を退出後、アンドリュー皇子に声を掛ける。


「流石は殿下ですね。私たちとは待遇が違いますよ」


 アンドリュー皇子はバツが悪そうに答えた。


「僕はどちらかというと、皇族の中では冷遇されてきました。いくら僕にゴマをすっても、この国から、いずれはいなくなるからです。ここまで待遇がいいとなると・・・」


 アンドリュー皇子は書類の束の中から、一枚の書類を取り出した。

 それは女王陛下がサインした同意書だった。法務大臣は刑務所内の式典に出席していたし、女王陛下と何かしらつながりがあるのだろう。普通なら興味を引く内容だが、ここで深く詮索しないのが、安心安全な生活を維持する秘訣だ。

 俺は話題を変えることにする。


「法務大臣の許可がもらえましたので、すぐに関係各所を周りましょう。今日中に済ませますよ」


「はい」


 関係各所を周っていたところ、嫌な人物に遭遇した。


「アンドリュー、こんな所で何をしているのだ?」

「ウイリアム兄上・・・実は・・・」


 皇太子のウイリアムだった。傍らには厚顔無恥な男爵令嬢エミリーもいる。

 フィオナ嬢が冷たい表情になる。


「出来損ないのお前にピッタリの職場だな。皇族の名を汚すことがないようにしろよ。俺はお前とは違って、この国の中枢の仕事を任されているからな」


 そう言うと、ウイリアム皇太子は去って行く。元婚約者のフィオナ嬢には一瞥しただけで、全くの無視だった。

 相変わらず、最低な奴だ。


 フィオナ嬢が言う。


「本当に腹が立ちます。全く成長していないどころか、更に悪化しています。それに何が国の中枢ですか!?厄介払いされただけなのに・・・」


 フィオナ嬢が言うには、ウイリアム皇太子は最初は軍で勤務していたようだが、トラブルを起こし、財務省に異動になったそうだ。


 俺としては、ウイリアム皇太子よりもアンドリュー皇子が皇帝になったほうが、この国はよくなると思う。

 しかし、しがない刑務官の俺が、皇位継承問題に口を出すつもりは全くないけどな・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ