69 思わぬ再会
色々とあったが、慣れてくれば仕事も楽になる。
業務のほとんどが、刑務官の仕事とは程遠いけど、俺は刑務官をしたいわけではなく、国から定額の給料を貰うことが目的だから、ぶっちゃけ仕事内容なんて、どうでもいいのだ。
ただ、給料を自分で稼がなくてはならないのは、どうかと思うけど。
まあ、最近は刑務所内の文官も成長してきたし、俺も楽ができるようになってはいる。
そんな時、俺はフィリップに呼び出しを受けた。食事をしようと言われた。
「いいレストランを見つけたから、飯でも驕ってやろうと思ってな」
そのレストランはアンドリュー皇子の店だった。
フィリップのことを思って、知っているとは言えなかった。
「いい店そうですね。期待できますね」
「そうだろう?大隊長権限を使って、無理やり予約したんだからな」
それは駄目だろう・・・フィリップが今後、問題を起こさないか、心配になってきた。
予約していた個室に入ると驚きの再会をすることになる。
「父上、母上・・・それにマイケル兄さんとレーナさんまで・・・」
そこにいたのは俺の家族だった。
それにマイケルの妻のレーナさんとその子供たちもいる。
「私もマイケルも、不思議なことにアトラスに異動になったのだ」
詳しく聞くと、父は魔法省が管轄するダンジョン管理局の局長に、マイケルは教育省アトラス研修所所長に任命されたようだった。アトラスのダンジョンの管理は冒険者ギルドではなく、国が管理している。ほとんどの業務は冒険者ギルドに丸投げしているのだが、国の体面を保つためには責任者を置かないといけないようだった。
「局長とは言っても、閑職には違いないがな」
「私は、局長職なんて凄いと思うわよ。それにこうしてまた、アレクやフィリップと近くで暮らせて満足よ」
マイケルが続く。
「貴族学校は、本格的にアトラスに研修所を作ることにしたからな。ダンジョン研修だけでなく、幅広い職場体験ができることが決め手になったようだ。まあ、他にも事情があるのだがな・・・」
多分、アンドリュー皇子の件が関係しているのだろう。
「教育省の本流からは外れるが、私は満足だ。家族ともゆっくりできるからな」
そんな話をしていると、フィリップが自慢話を始めた。
「俺の部隊は凄いんです。なんとダンジョンの最高記録を更新したんですよ。三日三晩、死ぬ気で戦いましたからね」
それはそうだろう。
三日三晩戦い続ける部隊なんて、正気の沙汰ではない。
「それとこのレストランは、俺の大隊長権限を使って予約したんですよ。凄いでしょう?」
これには母が苦言を呈する。
俺の代わりに言ってくれてよかったと思う。
「フィリップ、そういったことをしては駄目よ。隊長ともなると、責任がついて回るのだからね」
「そうだぞ。上に立つ者こそ、公私混同してはならんのだ」
「フィリップ、しっかりするように」
母だけでなく、父とマイケルにも注意されたフィリップは落ち込んでしまう。
「で、でも・・・気持ちは嬉しいわ」
「ああ・・・とても旨い」
「いい店を予約してくれて、感謝しているぞ」
三人はフィリップに甘い。
フィリップはというと、注意されたことも忘れて、レストランのことを嬉しそうに語っていた。
「実はこの店は、熊山亭の流れを組む料理人が・・・」
空気を察した他の家族たちは、その話に乗る事にしたようだった。
「凄いわね。もっと話を聞かせてくれるかしら?」
「もちろんです、母上」
また家族と再会できて、本当によかったと思う。
★★★
次の日、久しぶりに刑務所内を見て周ることにした。
驚いた。大発展している。
ちょっとした都市と言ってもいいくらいになっている。それはまだ許せるが、深刻な事態に陥っていることが判明した。
あの巨大ゴーレムが動いていた。
慌ててゴーレム神殿に向かい、バネッサ所長から話を聞く。
ダンジョンフェアリーであるファーベルの助力で、飛躍的に技術が向上したようだった。
「ファーベルのお蔭で、もうすぐ本格的に運用できるぞ。やはりダンジョンでの実験が大きいのう。データがたくさん取れるからな」
忙しさにかまけて、こっちの管理をしていなかったことを後悔した。
仕方ない・・・もうあまり手は残っていないが、アレを使うか・・・
「バネッサ所長、実はこのゴーレムは完成形ではないようなのです。というのも・・・」
俺はバネッサ所長にある提案をした。
これはバネッサ所長の夫であるレントン教授の手記にもメモ程度に記載はされていたアイデアなのだが、技術的にかなり難しいようで、レントン教授も開発を断念した経緯がある。だから、俺はこの案を提示することにしたのだ。
こんな大量破壊兵器を開発されるよりは、開発が頓挫するほうがマシだからな。
「妾には、副所長の言っている意味が分からん。その機能を付けたところで何になるというのじゃ?」
「そ、それは・・・」
答えに窮した。
俺が提案したのは、ゴーレムを変形させる機能だ。これはトレーラーがロボットに変形する海外アニメを参考にしたもので、こちらの世界に合わせて、馬車や荷車をゴーレムに変形させることを提案したのだ。レントン教授もこれを考えた理由は「カッコいいから」だったし、俺が有用性を説明するなんてできない。
そんな時、側で聞いていたフィオナ嬢が言う。
「馬車から変形するゴーレムなんて、カッコいいです!!是非やりましょう」
「しかしのう・・・」
するとリオネッサ将軍が言った。
「なるほど・・・流石はセンパイだ。それが可能なら補給部隊に偽装できるな。補給部隊と侮って襲撃して来たところをゴーレムに変形させれば、返り討ちにできる。また護衛として、1台だけゴーレム馬車を補給部隊に組み込むのも・・・」
リオネッサ将軍は既にゴーレム馬車を運用する戦術を思いついたようだった。
「お主らがそう言うのなら、そうしよう。おい!!一旦開発を中止して、ゴーレム馬車を開発するぞ!!」
何とかなったようだが、また新たな恐ろしい兵器を開発してしまうかもしれない。
まあ、先のことは考えないようにしよう。
俺は現実逃避するのだった。
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