67 副所長のお仕事 2
予定通り、3日間全体で研修をした後、コースごとに分かれて研修を行うことになった。
しかし、予想外のことが起きる。
どうして、俺のコースに・・・
俺が指導する初心者コースにアンドリュー皇子、近衛騎士団長令息のスティーブが参加することになっている。それにアンナという特待生枠の平民も俺のコースだ。
このアンナという女学生は厄介だ。平民でありながら魔法の才能を認められ、特待生となった者だ。因みにジョブは「土魔導士」だ。
それだけなら、何の問題もないが、このアンナという少女はスティーブと共通する点がある。
それは魔力こそ全てと思っている点だ。だから平民、貴族関係なく馬鹿にする。貴族学校の研修担当者からも要注意人物として引継ぎがあったくらいだからな。
俺は憂鬱になった。
スティーブやアンナといった問題児たちをリオネッサ将軍やフィオナ嬢に押し付ける予定だったのに・・・
それにアンドリュー皇子の面倒も見なければならない。これもどちらかに押し付ける予定だったのが、本当に上手くいかないものだ。しがない刑務官としては、なるべく関わらないのが一番なんだけど・・・
★★★
研修が始まると早速トラブルが起きた。
「お前ら!!もっと気合いを入れろ!!」
「そうよ!!何をチンタラしているのよ!?」
スティーブとアンナが騒ぎ出す。
そもそもこのコースは、将来戦闘職に就かない者たちが楽して単位を取得できるように設計されているのだ。戦闘も申し訳程度だし、前世の日本でいうボーイスカウトくらいのことしかしないのだ。カリキュラムは薬草やキノコなどの採取や討伐した魔物をみんなで料理することをメインにしているしな。
だったらなぜ、このコースをお前たちは選んだんだ?
そんなことを思っていたら、この二人を諫める者がいた。アンドリュー皇子だ。
「二人とも、我儘を言ってはいけないよ。それにこのコースを選んだのは君たちだろ?戦闘や魔法をバンバン使いたいのなら、別のコースにすればよかったわけだしね」
「そ、それは・・・」
「で、でも・・・」
この二人が俺のコースを選んだのには、理由があるようだった。
見知った学生に聞いたところ、スティーブはリオネッサ将軍にアンナはフィオナ嬢にフルボッコにされて、このコースに来たようだった。舐めた態度が治るまでここで修業をするように言われたらしい。
どうやら、厄介者を押し付けられたのは俺のほうだったようだ。
俺としては、問題さえ起こらなければそれでいい。
だから、仲裁に入ることにする。
「スティーブ殿はリオネッサ将軍から期待されていると思う。だからここに来た意味を考えてほしい。多分、実力のない者を指揮することを求められているんじゃないのか?それと魔法少女ナナは、アンナ嬢に実力がない者たちを如何にして守るかを学んでほしいんだと思う」
「そうだな・・・うむ」
「そうよね。私の実力からして、当然よね」
二人が単純な奴で助かった。
二人が去った後、アンドリュー皇子が声を掛けてきた。
「ありがとうございます、アレク先輩。流石は情報通りですね」
「いえいえ・・・って、情報通りとは?」
「アレク先輩は伝説に近い存在ですからね。まあ、一部の生徒にとったらですがね」
アンドリュー皇子は皇族とは思えないくらいフレンドリーだ。
それに気遣いもできる。なので、少し聞いてみることにした。
「どうして、殿下は私のコースを選ばれたのですか?こう言ってはあれですが、高度なスキルが身に付くわけではありませんし・・・」
「それはですね。僕の生い立ちにも関係することなんですが・・・」
アンドリュー皇子が言うには、アンドリュー皇子は母親が側妃であり、皇太子となれないことから、属国や友好国の王族の結婚相手として、早い段階で国外に出されることが決定しているらしい。だから、教育も帝王学ではなく、なるべくトラブルを起こさないような教育になる。
我を通さず、とにかくトラブルを収める能力を求められたという。
「だからこういったことは良い訓練になるんですよ。それと他にも目的がありますしね」
「他の目的というのは?」
「それは料理です。実は僕のジョブは「料理人」なんです」
「殿下・・・一介の刑務官にそのようなことを言うのは・・・」
皇族が自分のジョブを教えるなんてあり得ない。
ジョブによっては皇位継承権を剥奪される場合があると聞いたこともある。多分、母親が側妃というだけでなく、「料理人」というジョブが皇太子になれない理由なのかもしれない。
「料理人」が悪いジョブというわけではないが、皇帝には絶対に向かないからな。
「アレク先輩のことは信頼していますし、それにクロネコ商会で扱っているレシピの多くはアレク先輩が開発したものですよね?少しでも教えてもらおうと思いまして・・・」
「俺は専門の料理人ではありませんよ。ちょっとした節約料理が得意なだけで・・・」
「そういうのがいいんですよ。高級な料理なんかは、宮廷料理人が作れますしね」
俺は少し考えて言う。
「殿下がお望みならば、少しカリキュラムを変えても構いませんよ。料理実習を増やし、専門の料理人も用意しますからね」
「有難いですが、くれぐれも無理はしないでくださいね」
「できる範囲でやりますので、ご心配なさらずに」
俺はアンドリュー皇子のためにカリキュラムを少し変えることにした。
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