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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第五章 副所長のお仕事

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66 副所長のお仕事

 最近、勤務時間の大半を刑務所外で過ごしている。

 北部方面隊や冒険者ギルドに武器や防具、ポーションなどを卸す他にも、ミケに頼まれて、宿泊施設のスタッフを手配した。これは刑務所内で暮らしている希望者を宛がうことにした。刑務所外の移住者から話を聞いて、刑務所外に興味を持った者たちが増えたから、希望者たちをスタッフにすることにした。

 まあ、アラクネ族やケンタウロス族などの全く姿形が人間ぽくない種族は流石にスタッフはさせられないけどな。アラクネ族やケンタウロス族も刑務所外に出たい者は多いので、その対策もおいおい考えなくてはならない。


 また、今日から貴族学校の学生の第一陣が来るので、ダンジョン研修の指導者をしなければならない。

 これが刑務官、それも副所長の仕事かと思ってしまう今日この頃だ。


 時間になり冒険者ギルドに赴く。

 学生は上級貴族、下級貴族、それに高額納税者枠の平民や特待生の平民と多種多様だ。学校側の意向で、実験的な意味があるのだろう。何人か見知った者がいたので、話を聞く。


「宿も料理も素晴らしいです」

「スタッフに獣人が多いから親しみがあります」

「できれば、平民向けにもっと安い価格にしてくれれば・・・」


 平民や下級貴族には評判がいいようだった。

 一方、上級貴族はというと、少し不満も上がっていた。


「期待してなかったが、思ったよりも宿や料理の質はいいな」

「だが、スタッフに獣人や亜人が多いのはマイナスポイントだな」

「平民にとったら、高級な宿に思えるかもしれんが、我らは平民ではないからな」


 まあ、予想した反応だ。


「後は指導者も問題だな。軍人でも騎士でもないただの刑務官が、趣味で冒険者をしているだけなんだろ?俺は、ちゃんとした指導をしてもらいたいのだ。大した指導ができないのであれば、別行動にしてもらおうかと考えている」


 何気に俺がディスられている。


「流石はスティーブ様ですね」

「まあ、戦闘経験のない平民の研修ですからね。期待しないほうがいいと思いますね」

「スティーブ様にしてみたら、物足りないかもしれませんね」


 アイツがそうか・・・


 大柄で赤毛の少年スティーブ・ジェームス、ジェームス公爵家の三男で、今回の研修の要注意人物の一人だ。

 ジェームス公爵家は代々近衛騎士団長を務める武門の家系で、プライドは高い。軍の効率化を図るために騎士団を解散して第一騎士隊として運用しているのに近衛騎士団だけは、そうはならなかった。プライドが許さなかったようだ。近衛騎士団長の令息だけあって、スティーブも変なプライドを持っているようだ。まあ、そこそこ腕は立つようだが・・・


 ある程度話を聞いた後、俺は学生の前に立つ。


「私が指導員のアレクです。サンドル子爵家の三男で、冒険者ランクはCランクです。普段はアトラス刑務所で勤務しており、冒険者といっても趣味程度のものですがね・・・」


 スティーブやその取り巻きたちから、ため息が漏れる。


「研修に来られた学生さんの実力差が大きいので、こちらも準備はしていました。私のサポートをしてくれる指導員を紹介します」


 学生たちから驚きの声が漏れる。


「補助をしてくれる指導員は二名です。こちらはAランク冒険者の魔法少女ナナさん。そしてこちらがオンボーロ帝国軍元帥であらせられるリオネッサ元帥閣下です。皆さんもよくご存じですよね?」


 もちろんリオネッサ将軍は有名人で知らない者はいない。

 それと魔法少女ナナだが、昨年の武闘大会で大活躍したことは記憶に新しい。女子学生を中心に熱狂的なファンがいるのだ。痛いことに、既に魔法少女ナナがフィオナ嬢ということは、学生の間では周知の事実なのだが、フィオナ嬢は未だにバレていない設定のまま、魔法少女ナナを貫いている。


 事前に学生名簿を見て、こうなることはある程度予想できていたから、その対策もしていたのだ。


「それで、これからの日程ですが、まずは指定された各班で3日間活動をしてもらいます。その後、実力や希望を聞きながら、私が担当する初心者コース、リオネッサ元帥閣下が担当する近接戦闘コース、魔法少女ナナさんが担当する魔導士コースに分かれて研修してもらおうと考えています。そして・・・」


 言い掛けたところで、スティーブに遮られた。


「実力がない者と3日も活動するのは、無駄だ。俺はすぐにでもリオネッサ殿に指導してもらいたい」


 おいおい・・・3日くらい我慢しろよ・・・

 流石にこれは想定外だった。


 そんな時、一人の学生が声を上げた。


「スティーブ、我儘を言ってはいけないよ。この研修は個人の実力を高めるためだけが目的じゃない。実力がない者を引っ張ていくことを学ぶのも研修の内だ。計画どおりにやろう」

「殿下・・・殿下がそう言われるなら・・・」


 スティーブを諫めたのは、オンボーロ帝国第二皇子アンドリュー・オンボーロ殿下だ。

 金髪青目の美少年で、今回の研修で一番の要注意人物だ。ウイリアム皇太子の弟だから碌でもない奴だと思うかもしれないが、資料によると控えめな性格で、特に問題は起こさないとあった。フィオナ嬢に聞いても、同じような評価だった。

 今回どういった意図でスティーブを諫めたかは分からないが、それでもウイリアム皇太子に比べれば、まともに思える。


「アレク先輩、引き続き説明をお願いします」


 俺にまで気を遣ってくるなんて、本当に出来た人物なのかもしれないな。


 普通の貴族なら、ここで自分を売り込むのだろうけど、俺はそんなことはしない。

 偉い人とお近づきになっても、出世を望んでいない俺にしてみたら、いい事なんて一つもないからな。


 俺はアンドリュー皇子にお礼だけ言って、事務的に説明を続けるのだった。


「ありがとうございます、殿下。それでは・・・」

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