62 再建
バネッサ所長は、ファーベルを管理棟に連れてきた。
そして、受付をしているゴーレムとバネッサ所長の身の回りの世話をしているゴーレム2体を見せる。
「こちらはゴレとレムじゃ。我が最愛の夫ルークが作った自信作じゃ。まずはお主の知識を試そう。このゴーレムを見ての見解を述べよ」
ファーベルは2体のゴーレムの間を飛び回り、何やら調べているようだった。
「なるほどね。このゴーレムを作った技術者は、なかなかの腕を持っているわね。それと人工精霊を利用しているわね。ただ、意図的に能力が抑えられているわ。製作者が暴走を懸念してのことだと思うけど・・・」
「なんと!!そこまで分かるのか?だったら副所長以下をダンジョンに派遣しよう。好きに使ってくれ。それよりも、早く人工精霊とやらの作り方を教えてくれ」
「それはまず、そちらの人間の働きを見てからね。その条件でどう?」
「構わん。副所長、しっかり頼むぞ」
バネッサ所長はこういう人だ。もう刑務官のルールなんて関係ない。
仕方なく俺は、上司の命令に従うのだった。
★★★
ダンジョンはこの世界の理を外れた存在だ。
ダンジョンの詳しい成り立ちなんかは教えてくれなかったが、基本的なことは教えてくれた。まずダンジョンはこの世界とは違う次元に存在しているようだ。外からは、それほど大きく見えない塔型のダンジョンでも内部に、どう見ても塔の大きさを越えたフィールドが設置されているのも、それが理由らしい。
ダンジョンは、ダンジョンポイントという魔力に似た力で維持、運営されている。ダンジョンはこのダンジョンポイントを集めるための装置らしい。ダンジョンポイントでダンジョンを運営して、更なるダンジョンポイントを集める。なんか投資に似ている気がする。
ダンジョンポイントの集め方だが、ファーベルの話を要約すると入場者の数と滞在時間で決まるらしい。
だからより多くの者をダンジョンに集め、長時間滞在させることがダンジョンポイントを集める定石だという。その他にも細かい収集方法があるらしいが、まあ、俺たちにはあまり関係がない。
「やはり冒険者としては、ワクワク、ドキドキが必要ですね。アッと驚くトラップや希少なお宝なんかは、胸が躍ります。そんなダンジョンを作りたいですね」
「私としては、魔物のレベル管理をしてもらいたい。安全面を考慮すると階層ごとに徐々にランクアップするのが望ましいと思う。一定数の馬鹿は死ぬかもしれんが、きちんとした冒険者なら、安全に活動できるからな。馬鹿な冒険者の救出のためにダンジョンに潜るなんて、嫌だからな」
「そうね・・・私は美しさも大事だと思うわ。ダンジョンは云わば芸術よ」
楽しそうに女子三人が話しているが、そんな未来は訪れないだろう。
このダンジョンは、ダンジョンポイントが圧倒的に不足している。そもそも冒険者が好みそうなアイテムなんて用意できないし、美しい凝ったフロアなんて、夢のまた夢だ。
「でもね・・・ポイントがねえ・・・ポイントがなければ、アイテムもフロアの装飾もできないしね」
ファーベルもそこは理解している。
「魔物はどうなんですか?」
「亜空間に大量に居るわよ。スタンピードは亜空間に収納できなくなって、起こるものだからね。今も増え続けているわ」
「融資は受けられるんですか?」
「私は新人だから、あまり多くは受けられない」
絶望的だ。
ただ、よく分からない魔物が大量に出現するダンジョンなんて、一体どんな冒険者が来るんだ?
腕試しに物好きな冒険者が来たり、軍が訓練に利用したりするくらいしかないだろうな。
あれ?軍だったら・・・
「あのう・・・ダンジョンの移転とかはできるのでしょうか?」
「半径30キロ以内ならポイントは掛からないわ。まあ町のど真ん中とかには移転できないし、それなりに制約はあるけどね」
「魔物は大量に保有しているんですよね?自在に出し入れできるんですか?」
「もちろんできるわよ」
「それで、1日に必要な入場者を教えてください」
「最低10人、いえ、5人でも3時間以上滞在してくれれば、なんとか収支はプラスになるわ」
俺は少し考えて言った。
「それなら何とかなるかもしれません」
「本当に!?期待してないけど言ってみて」
「まず、ダンジョンをアトラス刑務所の外に移転します。ここから約20キロの地点ですから、問題はないと思います。そしてダンジョンのコンセプトですが・・・」
俺がダンジョンのコンセプトを話すと、ファーベルは黙り込んでしまった。
まあ、俺が考えたダンジョンは、今までにないダンジョンだからな。こんなことはダンジョンの専門家は思いつかないだろう。
俺が思いついたのは、単純にダンジョンポイントを効率的に集めることだけに重点を置いて考えたからだ。そこに理想も思いもない。俺も前世では理想や思いを重視して失敗したんだけどな。
「やってみるわ。このまま手をこまねいていても結果は同じだしね。それよりも集客は大丈夫なの?」
「毎日最低10人程度であれば何とかなると思います」
「色々と不満はあるけど、今はダンジョンポイントを貯めることが最優先だしね・・・」
こうして、しがない刑務官の俺は、ダンジョン経営にまで手を出すことになってしまった。
いつになったら、安心安全な生活が送れるのだろうか・・・
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