61 調査 2
バネッサ所長が言う。
「なんじゃ?ここのダンジョンボスは羽虫なのか?拍子抜けじゃな・・・」
これに妖精がキレてしまった。
「なんてことを言うのよ!!由緒正しきダンジョンフェアリーのファーベル様に向かって、その口の利き方は何?ガキンチョだからって、容赦しないわよ!!」
「なんじゃと!!妾はガキではない!!歴とした大魔導士じゃ」
「黙れ!!ガキンチョ」
「うるさい!!羽虫め!!」
どういう訳か、喧嘩が始まってしまった。
何も知らない者が見れば、妖精と幼女の微笑ましい喧嘩に見えるが仲裁に入る。
「落ち着いてください。我々はスタンピードの調査に来た者です。それでそちらは?」
「私はファーベル、由緒正しきダンジョンフェアリーよ。それにここのダンジョンマスターよ」
「ということは、このダンジョンの管理者ですか?」
「そうよ、凄いでしょ?」
これにバネッサ所長がツッコミを入れる。
「どこがどう凄いのじゃ?こんなゴミダンジョンなど、ダンジョンと呼ぶにも値せんわ」
「ウッウッウウ・・・だって仕方ないのよ・・・ダンジョンポイントがもうないの・・・」
ファーベルは泣き出してしまった。
何とか落ち着かせようと、優しく声を掛ける。
「ダンジョンを作れること自体が凄いと思いますよ。何かお困りのようでしたら、できるかぎりお手伝いさせていただきますよ」
「そう?でも、人間にどうこうできる問題じゃないわ・・・」
「事情だけでもお聞かせください。力になれるかもしれません」
まあ、なれることは何もないとは思いながら、そう口にした。
今は情報を引き出すことが最優先だからな。
「一言で言えば、私は嵌められたのよ・・・もう終わりなのよ・・・スタンピードも発生させてしまったしね・・・」
あれ?コイツがスタンピードの元凶なのか?
キレそうになるバネッサ所長を押さえて、俺は努めて冷静に質問する。
「スタンピードというのは、どういうことでしょうか?それに嵌められたとは?」
「私はね、新人ダンジョンフェアリーの中でも、トップクラスに将来を嘱望されていたのよ。でも・・・騙されてしまって・・・ウッウッウウ・・・」
この妖精はかなり、情緒不安定だな。
それでも俺は根気強く話を聞きくことにした。
ファーベルが言うには、ダンジョンフェアリーが中心となって、世界中のダンジョンを作っているそうだ。そして、目の前にある魔石がダンジョンコアというダンジョンの心臓に当たるものらしい。ダンジョンフェアリーの学校を卒業した際に「君にしか立て直せないダンジョンを任せたい」と言われ、このダンジョンのダンジョンマスターになったそうだ。
「来てびっくりよ。ここはダンジョンとは名ばかりの魔物のゴミ捨て場だったのよ」
前のダンジョンマスターが酷い奴だったらしく、ダンジョンポイントなるものを貰う代わりに各地のダンジョンから不要となった魔物を引き取っていたそうだ。しかし、いよいよダンジョンに収納できなくなって、夜逃げしたようだ。そして、何も知らないファーベルがやって来たところ、ダンジョンが魔物で溢れかえっていたそうだ。
「私も必死でスタンピードを食い止めようと頑張ったわ・・・でも・・・無理だった・・・」
バネッサ所長が言う。
「つまり、このダンジョンがスタンピードの発生源ということじゃな?」
「そうよ」
「しかし、女王陛下の話では、200年前はもっと北でスタンピードが発生したとのことじゃが・・・」
「それは前のダンジョンマスターがダンジョンを移設したからよ。発覚を遅らせるための偽装工作だったようね」
ファーベルが嘘をついていないと仮定すると、悪いのは前のダンジョンマスターということになる。
「事情は分かりました。つまり、もうスタンピードは発生しないということですね?」
「そうね。後200年程はね」
「それはどういうことですか?」
「契約自体はまだ生きているの。だから定期的に不要な魔物がどんどんと送られてくるのよ。ダンジョンのキャパから考えて、200年は大丈夫だろうけど」
「契約は後どれくらい残っているのですか?」
「後500年かな?」
普通に考えたら、200年後に必ずスタンピードが起こるということだ。
「スタンピードを防ぐ方法はないんですか?」
「私には無理ね・・・もう処分されるだろうし・・・」
詳しく聞くと、スタンピードを発生させた責任を取らされるみたいだった。
「スタンピードを発生させただけなら、大した処分は受けない。でもスタンピードによって1000人以上の人命を奪った場合は、問答無用で死刑よ。あの規模のスタンピードが起きたんだから、下手したら1万人規模の人命が奪われても不思議じゃないわ。スカルドラゴンなんて、災害級だしね・・・」
あれ?
スタンピードによって、土地やゴーレムは多く被害を受けたけど、負傷者が出ただけで死者は出ていない。
リオネッサ将軍が言う。
「スタンピードによる死者はゼロだ。安心するといい」
「そ、そんなの嘘よ!!慰めはいらないわ」
「だったら実際に見てみるといい」
俺たちはファーベルとともにダンジョンから出て、建設中の神殿に向かった。
バネッサ所長が言う。
「あれがスカルドラゴンの残骸じゃ。ゴーレムの素材に使う予定じゃがな」
「よかった・・・人名が奪われなかっただけでも感謝しないとね。でも私はどうせ終わりよ。1年後に既定のダンジョンポイントを収めないと処分されるわ。私を嵌めた奴らを何とかしてやりたかったけど、それは無理そうね・・・」
ファーベルは安堵の表情を浮かべた後、落ち込んでしまう。
「センパイ、何とかなりませんか?私は他人事に思えなくて・・・」
「私も同じ経験をしたから、何とか力になってやりたいとは思う」
フィオナ嬢もリオネッサ将軍も、そういう経験があるからな。それは十分に理解できる。
でも確実に面倒事を背負い込むことになる。
「俺としても、何とかしてあげたいとは思います。でも俺たちは刑務官で、勝手な仕事はできませんよ。スタンピード対策については、刑務所の治安維持ということで言い訳は立ちますが、流石にダンジョンの再建となると、上司の許可が必要になります」
「つまり、所長が承認すれば大丈夫ということでしょうか?」
バネッサ所長が言う。
「おい羽虫。ダンジョンの再建を手伝ってほしくば、妾に詫びを入れ、懇願するとよいぞ。それならば、考えてやらんこともないぞ」
「ガキンチョに頭を下げるのは嫌よ。でも・・・あっ!!こういうのはどう?貴方はゴーレムを作っているようだけど、知能を持ったゴーレムは作れてないようね?その技術を提供するというのはどう?」
バネッサ所長は悩んでいる。
知能を持ったゴーレムは刑務所に2体だけある。受付をしているゴーレムとバネッサ所長の身の回りのお世話をしているゴーレムだ。これはバネッサ所長の夫であるレントン教授がスキルを使って生み出したもので、流石のバネッサ所長も作れないでいる。製法についてはレントン教授の資料に記載があったが、俺はそれを公にしていない。
だって、知能を持った巨大ゴーレムなんて作られたら、怖すぎるだろ?
暴走したら、それこそ世界の終わりだ。
だからファーベル、余計なことはするな。
「即答はできん。まずはお主の実力を見てからじゃな」
どうやら、バネッサ所長がファーベルの試験をするようだった。
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