60 調査
ルートナー伯爵が宰相に就任したことで、かなり仕事は楽になった。
文官として刑務所内の魔族を何人か採用したことも大きく、俺はというと新しく採用した文官を指導するだけでよかったからな。
復興のほうも順調だ。
巨大ゴーレムの開発が始まったことで、バネッサ所長も元気を取り戻した。
「今度は更に頑丈に、そして何物も壊せる武器を搭載するぞ」
それはやめてくれと思ったが・・・
神殿の建設も始まった。
神殿に併設して、ゴーレム工場も移転することになった。設定ではゴーレムの聖地だからな。
なので、ゴーレムの技術者を中心に移住者も増えた。それとエルフの森についてだが、エルフが言うには「これはお前たちに渡すのではない。ゴーレム神に寄進するのだ」ということで、アラクネやリザードマンたちは罠を張った場所に棲みつくことが認められた。まあ、曲がりなりにも共存している。
仕事が楽になった俺だが、別の仕事が舞い込んでくる。
「発生源の調査ですか?」
「そのとおりだ。軍人や冒険者なら当然だろ?」
「それはそうですが・・・もしかして、俺もですか?」
「当たり前だ。今は復興やゴーレムの制作で忙しいから、私とフィオナ嬢、それにバネッサ殿も行く」
そうだよな・・・俺もCランクの冒険者だし、後の者はそれぞれ忙しいしな。
「分かりました。それで出発は?」
「3日後だ。それまでに仕事を片付け、準備もしておいてくれ」
こうして、俺たちはドワーフの元居住区である聖なる山に調査に向かうことになった。
リオネッサ将軍やフィオナ嬢が調査に参加するのは当然として、バネッサ所長も同行することが少し不思議だった。
「所長はなぜ調査に?」
「あれから色々と妾なりに反省したのじゃ。妾に全盛期の力があったなら、巨大ゴーレムを壊さなくて済んだかもしれんと思ってのう。その失敗を繰り返さないために訓練も定期的にしようと思って参加したのじゃ」
バネッサ所長が言うには、ここ何十年と戦闘をしていなかったので、腕が鈍っているとのことだった。俺には全く分からなかったし、今のままで十分だと思うけど。
バネッサ所長は既にゴーレムに搭乗している。本人曰く、当時から愛用していた戦闘用ゴーレムを整備したらしい。
パーティーとしての運用だが、積極的に戦闘がしたいとのことで、前衛を任せることになった。
防衛戦で倒しきれなかった魔物を討伐しながら進んで行く。
スタンピードで発生した魔物は単体ではそれほど強くはない。バネッサ所長のゴーレムに蹂躙されていく。倒し損ねた魔物もリオネッサ将軍とフィオナ嬢が討伐するので、俺はすることがなかった。まあ、俺は戦闘狂ではないから、別にいいんだけどな。
ということで、俺はサポーターのポジションに徹することにした。
「こんな弱い魔物では、訓練にもならんぞ」
「バネッサ殿、油断はなりませんよ」
バネッサ所長をリオネッサ将軍が諫めている。
しばらく山道を進んでいたところ、フィオナ嬢が声を上げた。
「洞窟があります。坑道はもっと先なのに・・・」
ドワーフの情報によると、山の中腹付近から坑道や居住区が設置されていたというが、こんな二合目で洞窟なんて聞いてない。
「もしかしたら、ダンジョンではないのか?」
「その可能性は高いですね」
「では、ここからは気を引き締めて向かうぞ」
「はい」
俺たちは装備を点検し、細かい打合せをした後に恐る恐る洞窟に入った。
「なぜこんな所に宝箱が?ダンジョンなのか?」
「ダンジョンでなければ、こんな所に宝箱なんてないですよね。でも入ってすぐに宝箱があるのは、どうもおかしいですね」
「センパイ、宝箱に罠がないかどうか、調べられるか?」
「やってみます」
俺は盗賊のスキルも、ある程度は使える。
慎重に宝箱を調べていくと、特に罠なんかはなかった。
「罠がないので、開けてみますね」
「うむ」
「なんだ・・・空っぽか・・・」
一同が落胆する。
それからも、どんどんと奥に進んでいくが、魔物は一切出現しなかった。
「なんじゃ、これでは特別にカスタマイズした武器が使えんではないか!!」
バネッサ所長は次第に不機嫌になっていく。
それに宝箱は道のど真ん中にいくつか設置されていたが、どれも空っぽだし、罠やトラップも設置されているが、申し訳程度の物ばかりだった。
「これは酷いですね・・・冒険者ギルドに報告しても、落胆するでしょうね」
俺もそう思う。一応、発見報酬くらいは貰えるだろうけど。
「まあいい。こちらは調査が目的だ。気を緩めずに進むぞ」
リオネッサ将軍の指揮で、どんどんと進んで行く。
ダンジョン自体は3階層までしかなかった。そして、他のフロアと少し違った扉を発見した。
「ダンジョンのセオリーでいうと、この先にダンジョンボスがいるはずですね」
「なに!!それでは妾が粉砕してやる。戦闘したくて、うずうずしておったのじゃ」
バネッサ所長が戦闘モード全開だった。
リオネッサ将軍に指示を仰ぐ。
「ダンジョンボスか・・・まずはバネッサ殿に任せて、我々はサポートしよう」
「はい」
「分かりました」
ここで、あれこれ作戦を練っても、バネッサ所長は従わないだろうし、それが最善の作戦だろうと思う。
緊張しながら、扉を開けて中に入る。
しかし、そこにはボスどころか、何もなかった。
「どういうことだ?」
「分かりませんね・・・少し調査してみましょう」
俺はそう言うと、集中して壁や床を調べ始めた。
しばらくして、少し材質の違う壁を発見する。
「もしかしたら、隠し扉かもしれません」
「ほう・・・センパイは何でもできるな。斥候部隊や特殊部隊にも、すぐに入れるぞ」
「遠慮しておきます・・・」
バネッサ所長が言う。
「早く開けろ。妾は早く戦いたいのじゃ」
「分かりましたから、落ち着いてください。それと、物騒な武器をこっちに向けないでください」
俺は壁に掛かっている魔法を解除した。
するとそこにドアが出現した。
「では行くぞ!!」
リオネッサ将軍の指示で中に入る。
そこは何の変哲もない普通の部屋だった。中央には光り輝く魔石が台座に設置されている。
「なんじゃ?ボスはおらんのか?まあ仕方がない。あの魔石だけでも、貰って帰るか?」
「そうですね・・・でもあれは普通の魔石ではないように思います。持って帰るにしても、調査が必要ですよ」
「言われてみればそうじゃのう。折角じゃから、巨大ゴーレムのパーツに使おう」
「いや・・・それは・・・」
もうヤバい改造はしないでほしい・・・
そんな会話をしていたところ、手のひらサイズの羽の生えた妖精が現れた。
激しく動揺している。
「ど、どうして人間がここに?貴方たちは誰?」
お前が誰だよ!?
それが俺たちのファーストコンタクトだった。
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