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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第四章 女王の帰還

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59 復興と開発

 スタンピードから3日が経過した。

 こちらは警戒体制を維持しながら、残っている魔物を討伐したり、討伐した魔物から魔石や素材を回収して復興の足しにしていた。

 今のところ、新な魔物の群れはやって来ない。もうスタンピードを鎮圧したと言っていいだろう。


 これがゲームや小説なら、「スタンピードを鎮圧しました。めでたし、めでたし」で終わるのだろうが、そうはいかない。新たな問題も発生する。今も会議は紛糾している。


「とにかく、あの場所は我らエルフの森だったのだ。すぐに元の森に戻さなければならん。森の中のトラップも早々に元に戻してくれ」

「なんだ、その言いぐさは?」

「アラクネ族としては、あの森を引き続き開発することを提案する。アラクネ族ならば、もっと森を有効活用できる」

「それは我らリザードマンも同じだ。魔素が強いから、いい湿地になるぞ」

「黙れ!!即刻森から出て行け!!」


 ずっとこんな調子だ。

 元々が多種多様な種族の集まりだ。文化も価値観も違う。今まで争わずにやって来れたのも、スタンピードを鎮圧するという共通の目的があったからだ。それが無くなった今、元の状態に戻っている。


「そんなことよりも、ドワーフの悲願である聖なる山の奪還を提案するッス!!」

「何で、ドワーフのために俺たちが手伝わなくちゃならないんだ?」

「オーク、肉がほしい。オーク、頑張った。肉は多めに貰う」

「オーガはオークよりも魔物を倒した。オークよりも多く貰う」


 もう何の話をしているのか、分からない状態だ。

 リオネッサ将軍に小声で言う。


「将軍、どうするんですか?」

「私は政治的なことに口出ししないようにしている。軍人は政治に口出ししないほうがいい。嵐が過ぎ去るのを待つのみだ」


 頼りになるバネッサ所長は、巨大ゴーレムが大破したことで、ショックを受けて会議を欠席している。

 女王陛下はというと、何も言わず会議を見ている。多分、何か思うところがあるのだろう。


 そんな中、机が壊れる大きな音がした。

 その方を見ると、怒りをにじませたフィオナ嬢だった。


「なんと嘆かわしい!!ゴーレム神様が今の貴方たちを見たら、どう思われるでしょうか?」


 一同が静まり返る。


「ゴーレム神様は、その身を犠牲にして私たちを守ってくださったのですよ。その感謝はないのですか?」


「あるに決まっているッス!!」

「当たり前だ!!」

「ゴーレムに感謝!!」

「それは俺たちも同じだ。だったらどうしろと言うんだ?」


 フィオナ嬢は落胆の表情を浮かべながら言う。


「そんなことも分からないのですか?ねえ・・・センパイ・・・」


 ここで俺に振るのか?

 俺だって、何をしていいか分からないのに・・・


「そ、そうだな・・・フィオナ嬢、説明してあげたらどうだ?」


 俺は生粋の事なかれ主義者だ。こういった状況でも自分に責任が来ないように立ち回ることを優先させる。


「まずはゴーレム神様の復活です。併せてあの場所を聖地に指定して、神殿を建設します。ゴーレム神様は生きています。私たちの心の中に・・・」


 おいおい・・・ヤバい宗教の教祖みたいなことを言っているぞ・・・


 しかし、これは一同の心に響いたようだ。


「異議なしッス!!私たちは大切なことを忘れていたッス」

「ああ・・・申し訳ありません、ゴーレム様」

「もしかしたら、あの場所にゴーレム神様のパーツがあるかもしれん。まずはその捜索をするぞ」

「ゴーレムに感謝!!ゴーレムに感謝!!」


 フィオナ嬢が満足げに言う。


「つまりそういうことです。心を一つにしてゴーレム神様を復活させましょう!!」


「「「ゴーレム!!ゴーレム!!」」」


 会議はそれで終了してしまった。

 会議終了後に女王陛下に伺いを立てる。


「今後の方針ですが・・・」

「期待していおるぞ、センパイ」


 これって・・・俺が責任者ということか?



 悪い予感ほど、当たるものだ。

 俺が復興と開発の責任者にされてしまった。のんびり刑務官ライフから一変して、ブラック企業もびっくりな勤務が始まってしまった。


 フィオナ嬢を含めて、こういった企画や運営ができる者は、俺以外にいない。

 ミケが輸送なんかを手伝ってくれているが、焼け石に水状態だ。今日も徹夜で仕事をしていると女王陛下が声を掛けてきた。


「お疲れのようだな?」

「ええ・・・限界に近いです。どこからか文官でも来てくれませんかね。それに文官仕事ができる魔族を育成するのも必要ですね。今はそれどころではないですが・・・」

「ほう・・・それなら用意できるぞ。文官仕事ができて、文官を養成できる者ならな」

「ほ、本当ですか?早急にお願いします」


 言ってみて気づいたが、誰の事だろうか?


 その疑問はすぐに晴れることになる。



 ★★★


 3日後、俺は任命式に出席していた。


「貴殿を魔王国の宰相に任ずる」

「拝命致します。陛下のご期待に添えるように誠心誠意努力して参ります」


 式典が終わり、誇らしげなルートナー伯爵に声を掛けられる。


「やっと宰相となれたのう。国は違うが感慨深い」

「おめでとうございます。サイショウさん。でもいいのですか?」

「そういえば、センパイには言ってなかったのう。儂はずっと陛下の影としての仕事をしていたのじゃ。そうでなければ、「嘆きの塔」で10年も勤務せんわ。センパイなら既に分かっていると思っていたのじゃが?」

「そ、そうですか・・・」


 そんなこと、夢にも思わなかった。


「それにしても、儂を呼び寄せたということは、()()()()ということじゃなあ・・・」

「それって、どういうことでしょうか?」

「センパイなら、分かっておるじゃろうに・・・」


 ルートナー伯爵も俺のことを勘違いしている。俺はしがない刑務官なんだよ。

 それにしても、「いよいよ」って何だ?

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