54 アトラスの危機 2
女王陛下の元へ、リオネッサ将軍と共に報告に向かった。
「なるほど・・・責任は我が取る。その策でよい」
「ありがとうございます」
「ところで、センパイよ。我に聞きたいことがあるのではないか?」
俺としては、女王陛下の詳しい事情を聞きたかったのだが、今はそれどころではないと思い、別のことを質問した。
「陛下は、どうやってスタンピードの発生が近いことを認知されたのですか?もし、実際に現場を見た者がいるのなら、直接話を聞かせてください」
「ほう・・・気いていたのか?」
「薄々は・・・」
これまでの女王陛下の言動を考慮すると、情報収集に特化した別動隊がいる、又は女王陛下に特殊能力があると考えるのが自然だ。そうじゃないと、俺のプライベートを完全に把握するなんてあり得ない。
女王陛下は、指をパチンと鳴らした。
すると、どこからともなく、3人の魔族の女性が姿を現した。三人共、額に角があるが、顔には見覚えがあった。
「センパイも見たことはあるだろう?」
「はい」
この三人は、「嘆きの塔」にやって来る清掃スタッフだった。
「しかし、あの時は角は無かったかと・・・」
「その程度のことはどうとでもなる。彼女らは、直属の情報部隊の者だ。他にもいるが、今は現場に出ている」
「そうだったんですね」
「うむ。フェイ、詳しいことを話してやれ」
三人のまとめ役であるフェイさんに挨拶をする。
「面と向かって挨拶をするのは初めてですね。アレクと言います」
「よく存じています。信頼を確かめ合うのに、夜のお供をしても構いませんよ」
「えっと・・・それは・・・」
多分、彼女たちに俺は監視されていたのだろう。
「冗談です。早速、情報共有をさせていただきます。百聞は一見に如かず。明日、現地に赴きましょう」
「はい」
俺は部屋に帰り、明日の準備をする。
夜になって、部屋にアラクネのクーネがやって来たが、明日は重要な仕事があると言って、帰ってもらった。
ふと、ドアの外を見ると、フェイさんが笑っていた。
もう怖すぎる・・・
★★★
異動は転移魔法陣だった。
着いた先は、エルフ集落の森を北に抜けた先だった。荒れ地が広がっており、今も多くの者が防衛陣地の構築に汗を流している。
フェイさんが言う。
「今は荒れ果てていますが、昔は豊かな森だったんですよ。こうなったのはスタンピードの所為です」
詳しく聞くと当時、森の半分を犠牲にして戦い、何とかスタンピードを撃退したそうだ。
俺たちが視察をしているとエルフたちが声を掛けてきた。
「我はエルフ族最長老のレドラスと申す。将軍に頼みがあって来た」
「聞くだけは聞く。ただ、確約はできん」
「分かった。頼みというのは、大したことではない。我々長老のエルフは、作戦がどうであれ、この地で最後の最後まで戦わせてほしい・・・」
レドラスたち長老クラスのエルフは、もう200年以上前のことになるが先のスタンピードを経験しているそうだ。壮絶な体験で、多くの同胞の命と大切に育ててきた森の半分を失ってしまった。
「森を犠牲にすれば、生き残ることは可能だろう。しかし、我らはそんな森の最後は見たくはない。森と共に死なせてほしい・・・」
リオネッサ将軍は少し考えて言った。
「なるべく、森に被害が出ないような作戦は立てる。しかし、確約はできん。最悪の場合・・・」
「分かっておる。その場合は、我らはここで散らしてもらう」
「分かった・・・そうならないように願うが・・・」
エルフたちが去った後、作業をしていたドワーフの一人が声を掛けてきた。
「エルフのことは好きになれんが、奴らの気持ちはよく分かる。儂も先のスタンピードで故郷を奪われたからな」
そのドワーフの視線の先には、小高い山があった。
「儂らもあの地で、平和に暮らしていた。あのエルフと同じように故郷を離れるくらいなら、潔く散ろうと思ったドワーフも多かったな・・・この年齢になれば、思い残すことはほとんどないが、できれば、もう一度故郷に帰りたいのう・・・」
これに心を動かされたフィオナ嬢が言う。
「大丈夫です。必ずやスタンピードを撃退し、故郷も奪還致しましょう。何たって、こちらにはゴーレム神様と使徒様がいらっしゃるのですから!!」
フィオナ嬢は完全に俺のことを勘違いしているし、そもそもゴーレムが神様だなんて、どんな思考回路をしているんだ?
俺は取り繕うように言った。
「まずはスタンピード対策です。もしもの時に備えて、非戦闘員は後方に避難をさせないといけません。それから・・・」
リオネッサ将軍が言う。
「センパイよ。今はそのような細かな指示をする時ではない。自信を持ってこう言ってやればいい。「必ずやお前たちの故郷を取り返してやる」とな」
リオネッサ将軍も勘違いしているのかもしれない。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




