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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第四章 女王の帰還

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51 女王の帰還

 今日はいよいよお祭り当日だ。

 朝から騒がしい。そういえば、お祭りの進行なんかはノータッチだった。まあ、飲んで騒いで踊る、その程度だろう。


 会場には神殿のような物が建設され、その中には巨大ゴーレムが祀られている。

 これには理由がある。地下室でゴーレムを完成させた場合、管理棟を壊さないと巨大ゴーレムは出撃できない。流石にゴーレムを出撃させるために管理棟を壊すなんてありえない。

 バネッサ所長が言う。


「そんな単純なことも気づかなかったのう・・・」


 バネッサ所長ような人は総じて、どこか抜けていることが多い。今の段階で気づいたことは、不幸中の幸いだと思う。


 神殿の周りには、各種族を象徴するゴーレムも祀られている。

 今もクーネがゴブリンの子供たちをアラクネゴーレムに乗せてあげている。俺に気づいたクーネが手を振ってきたのだが、どうにも気まずい。

 その周りには、多数の屋台が立ち並んでいて、既に出来上がっている者も大勢いた。


 俺が一番驚いたのは、来賓だ。

 スペンサー侯爵御一家はもちろんだが、帝都で何度か顔を見た貴族もいる。確実に分かるのは法務大臣だけだが、誰もが局長や大臣クラスなどの上級官僚だと思われる。そんな中、何とミケが来賓席に座っていた。


「何でお前がここにいるんだ?」

「それはセンパイでも言えないニャ。クロネコ商会の次期商会長としての出席とだけ言っておくニャ。それ以上のことは、口が裂けても言えないニャ」


 意味が分からない。

 同じ来賓席には、正装をしたレントン教授が座らされているが、他の出席者に比べたら、今更だと思う。


 俺は一緒に会場を周っていたフィオナ嬢に聞いてみた。


「フィオナ嬢は何か知っているのか?」

「はい・・・でも言えないんです。流石にセンパイでも・・・」


 謎は深まるばかりだった。


 しばらくして、リオネッサ将軍の気合いの入った声が響き渡った。


「総員傾注!!静粛に!!これより御帰還の儀を執り行う!!」


 リオネッサ将軍が司会?

 それも聞かされていない。それに御帰還の儀ってなんだ?


 バネッサ所長が仮説ステージに登場し、遅れて閣下もステージ上に現れた。

 そして、閣下は何とマスカレードマスクを外し、フードを脱いだ。閣下は褐色の肌をした魔族の女性だった。俺たち人間と姿形は変わらないが、額に角が生えている。

 魔族なんて、絶滅したというのが定説だ。俺はかなり驚いていたが、来賓はおろか、会場の誰も何も言わない。


 式典は進行し、バネッサ所長が閣下の前に歩み出て、書状を広げて読み始めた。


「魔王国女王ヴィクトリア殿。ここに懲役200年の刑が終了したことを認める。第110代オンボーロ帝国皇帝ドリエスト・オンボーロ」


 閣下が魔王国の女王?

 それに200年の刑が終了した?

 流石に皇帝陛下の名を騙ることはないだろうけど。


 俺が困惑していると、再びリオネッサ将軍の気合いの入った声が響き渡る。


「総員!!敬礼!!」


 来賓の貴族を含めて、会場にいる全員が跪いた。

 跪いていないのは、俺とレントン教授だけだった。そのレントン教授もバネッサ所長が魔法で操って、ワンテンポ遅れて跪く。


 俺は空気が読めるほうだ。

 流石に立ったままだと、不味いと感じた俺は、みんなに習って跪いた。意味が分からないけど、そうすることがこの場では、正解だと判断した。


 一呼吸おいて、バネッサ所長が言う。


「お帰りなさいませ、女王陛下」


 それに合わせて、皆が唱和する。


「「「お帰りなさいませ!!女王陛下!!」」」


 しばらくして、閣下が話し始める。


「うむ。皆の者、待たせたな。あれこれ長い話をする気はない。難しい話は明日行う。今日は盛大に飲んで騒げ。我の出所祝いだ。飲んで歌え!!」


 そこからは、乾杯の合図もなく、盛大な宴が始まった。

 そこら中から、「女王陛下バンザイ!!」という声が聞こえてくる。呆気に取られている俺にフィオナ嬢が言う。


「これは私も最近知ったことなんですが、閣下は、魔王国のヴィクトリア女王陛下だったのです。スペンサー侯爵家では、当主と次期当主以外は知らされない情報です。私は陛下と近い関係にあり、そのうち知ることになるということで、早めに教えていただきました」


 俺とフィオナ嬢が話していると、ミケもやって来た。


「クロネコ商会も陛下とは関係が深いニャ。私も次期当主に認められて初めて、このことを知ったニャ。これは極秘事項だから、センパイにも言えなかったニャ。ごめんなさいニャ」


「情報が情報だけに怒っていないよ。でも流石に思考が追いつかないな・・・」


「私も聞いた時はびっくりしました。詳しい事を教えて差しあげたいのですが、どこまで話していいのか分かりませんので、直接陛下にお聞きになられてはどうでしょうか?」


「直接聞くのか?」


「ええ・・・陛下はセンパイのことを高く評価しているので、教えてもらえると思いますよ」

「私もそう思うニャ」


 俺はフィオナ嬢とミケに促されて、女王陛下の元に向かう。

 貴族や各種族の族長たちが、女王陛下への挨拶の順番待ちで列をなしていた。順番を待ちながら、どんな作法なのかを学ぶ。どうやら、決まった作法はないようだった。

 俺の順番が来たので、皆に習ってお祝いの言葉を述べる。


「女王陛下、この度はご帰還おめでとうございます」

「センパイ、驚いたか?」

「はい、とても・・・」

「時間がないので、今この場で詳しいことは教えてやれないから、バネッサにでも聞いてみることだな。我が許可したと言えば、教えてくれるだろう」

「ありがとうございます」


 別れ際、女王陛下は言った。


「センパイからは多くのことを学んだ。センパイが常々口にしている「安心」「安全」「安定」「穏やかな生活」・・・その意味が分かった気がする。つまり、誰もが安心して平和に暮らせる国を作り、安定させよ、ということだな?引き続き我に力を貸してもらうぞ」

「は、はい・・・」

「期待しているぞ」


 女王陛下も俺に勘違いをしているようだった。俺はただ安心安全な生活を求めていただけで、国を良くしようとかは、微塵も思っていない。


 その場の空気に流されて、女王陛下に力を貸すと約束してしまったが、このことがきっかけで、安心安全な人生とは程遠い人生を送ることになるとは、この時は夢にも思わなかった。

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