50 種族ゴーレム
俺が提案した作戦は各種族の姿や能力を模したゴーレムの製作だった。
これは巨大ゴーレムを崇拝する者たちの琴線に触れ、食いつきはいいとは思ったが、正直ここまでとは思わなかった。
みんな、大盛り上がりだ。
「オーク強い!!一番強いゴーレムはオーク!!オーク最強!!」
「オーガこそ最強だ!!オークなんかに負けんぞ!!」
「エルフは弓を撃てるゴーレムを作るぞ。それに耳を長くしよう」
「ケンタウロスは、最速だ!!スピードこそすべて!!」
そんな中、感動に打ち震えていたのは、アラクネの女性作業員クーネだ。
アラクネは下半身が蜘蛛の種族だが、普通のアラクネは足が8本あるのだが、クーネは生まれつき足が4本しかない。
この世界には魔法があり、かなり高度な魔法で使い手もほとんどいないのだが、部位欠損を治療する魔法は存在する。しかし、生まれつきの疾患は治療できないようだ。なので、クーネは足が4本のままだ。アラクネの集落では「足なし」と嘲笑され、逃げるようにゴーレム工場の作業員になった経緯がある。
「私が種族を称えるようなゴーレムを作れるのですね・・・感謝いたします、ゴーレム様」
それからは予想通り、各種族が競争するようにゴーレムを作り始めた。
当然だが、ゴーレムによって完成するスピードはバラバラだった。オークとオーガはとにかくパワーがあるゴーレムを作った。性能もほぼ同じだったので、パワーゴーレムと名付けられた。
ゴブリンは小型のゴーレムを作り、性能よりもゴーレム同士の連携を重視している。これはゴブリンが集団行動が得意という特性のためだと考えられる。
またエルフはゴーレムの性能よりも、装備する弓にこだわっていた。
そんな中、一番作業が進んでいなかったのは、アラクネのクーネだった。
アラクネゴーレムは足が8本あるから、それだけで動きが複雑になる。他の種族が次々と試作品を完成させていく中、クーネは足の部品の製作だけで手一杯という感じだった。
クーネはどんどんと落ち込んでしまう。
「所詮、足なしの私には無理だったんですね・・・」
流石に可哀想になってきた。
俺もアラクネゴーレムを作るのはかなり難しいと分かっていた。それでも制作を提案したのは、単純に作業を遅らせるためだ。しかし、不幸な人を作りだしてまで遅らせようとは思っていなかった。
そんなことを思っていたら、自然とクーネに声を掛けていた。
「クーネさん、ゴーレム製作に足の数は関係ありません。ゴーレムを思う気持ちと技術が何よりも大事なのです。ここは俺に任せてください」
「は、はい・・・」
俺は作業員に声を掛ける。
「皆さん!!少し聞いてください。アラクネゴーレムの制作が難航しています。一旦作業を中止して、アラクネゴーレムの制作を手伝ってください!!」
これには作業員から不満の声が上がる。
「俺はオークよりも強いゴーレムを作るんだ。そんな時間はない」
「オークがオーガに負ける。絶対ダメ!!」
「今は弓の開発が急務だ。無理だ」
「これは競争だ。種族のプライドを懸けたな」
その気持ちは理解できるが・・・
そんな時、フィオナ嬢が声を上げた。
「これはもしかしたら、ゴーレム神様の思召しかもしれません。センパイは神の使徒、何か考えがあるはずです」
いつから俺が神の使徒になったんだ?
「ゴーレム様の思召しなら仕方がない」
「オークも手伝う」
「協力してやろう」
それで納得するのかよ・・・
こうして、瞬く間に開発は進む。
バネッサ所長も自分の研究を中止して、手伝ってくれた。そして3日も立たず、アラクネゴーレムは完成することになった。
クーネは涙を流しながら、お礼を言う。
「皆さん・・・本当にありがとうございました。感謝してもしきれません」
「感謝を捧げるのは俺たちにじゃない。ゴーレム様にだ」
「ゴーレム様に感謝を」
「ゴーレム神様!!バンザイ!!」
「ゴーレム!!ゴーレム!!」
みんなが盛り上がっている中、マリベラがやって来た。
ゴーレム製作を途中から止めて、ずっと引きこもっていたけど・・・
「クーネにこれをプレゼントするッス」
マリベラがクーネに手渡しのは、義足だった。
「細かい調整はまだッスけど、結構な自信作ッス」
早速、クーネが義足を取り付ける。
「動きます・・・まるで自分の足のように・・・」
「ゴーレムの技術を応用したッス。アラクネは総じて魔力が強いから、魔石も必要ないッス」
ずっと引きこもっていたのは、義足を作ってあげてたんだな・・・
バネッサ所長が涙ながらに言う。
「ルーク・・・お前が願っていたのはこういうことなんじゃな?ゴーレムを作るのが真の目的ではなく、人の幸せを作るのが真のゴーレム職人という言葉の意味は、まさにこのことじゃ・・・」
フィオナ嬢も続く。
「ゴーレム神様は、各種族が協力することを求められているのです。いがみ合うのではなく、協力してより高度なゴーレムを作ることの重要性を私たちに教えてくれていたのです。感謝いたします」
そこからは、巨大ゴーレムを称え、祈る時間が始まってしまった。
もうヤバい宗教団体もびっくりな状況だ。
数日後。更に強力なゴーレムが多数誕生することになる。
オークとオーガが協力して、更にパワーを増したパワーゴーレムが誕生したり、エルフの弓を持ったケンタウロスゴーレムが誕生したり・・・
どうやら俺は、更に凶悪なゴーレム軍団を誕生させるきっかけを作ってしまったようだった。
★★★
ある日の夜、俺の部屋にクーネが訪ねて来た。この展開はもしや・・・
「アレク様・・・お礼に参りました。私に『足の数は関係ない』と言ってくれたことは、人生で一番嬉しかった・・・」
「そ、そんな・・・お礼なんて・・・」
「そう遠慮なさらずに!!さあ!!」
俺はクーネの出した蜘蛛の糸で拘束され、為すがままにされた。
どうやら、アラクネも獣人と同じ感覚のようだった。
次の日、閣下に声を掛けられた。
「昨日は楽しんだか?」
何でこの人、知っているんだ?
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