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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第三章 人事異動

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48 エピローグ

 俺が提案したゴーレム開発の所為で、刑務所は様変わりした。

 だだっ広いだけの研究室が、今や工場のようになっている。俺たちだけじゃなく、多くの囚人がここで作業をしている。俺はというと、直接作業には加わらず、作業工程を管理したり、トラブルがあれば対応するようなポジションになっている。

 まあ、これが本来の刑務所の姿だと言われれば、そうなのだろうが・・・


 こうなった経緯を順を追って話していこう。

 新たなゴーレム開発を始めると、バネッサ所長は水を得た魚のように働き始めた。昼夜を問わずだ。食事もほとんどをエナジーバーだけで済ませ、こちらが心配になって止めるほどだった。しかし、俺たちがいくら言っても聞き入れてくれない。なので、閣下にお願いすることにした。

 所長の仕事をセーブするように囚人にお願いするのは、おかしい気もしたけど・・・


「バネッサよ。流石に体を壊すぞ。もう若くはないのであろう?」

「そうですが・・・人も足りませんし、これはわらわの使命なのじゃ」

「だったら人を雇えばよい。ドワーフなんかは喜んで協力するであろう」

「陛下・・・いえ、閣下がそう言われれるのなら・・・」


 流石は閣下だ。俺たちがいくら言っても聞かなかったバネッサ所長の説得に成功した。それでまずは、ドワーフに声を掛けた。

 これには次期族長のマリベラが喜んで協力してくれた。彼女はドワーフだけあって、飲み込みも早かった。


「これは楽しいッス。すぐに何人か連れて来るッス。そうしたらもっと、凄いゴーレムが作れるッス」


 瞬く間に10人程のドワーフが集まって、作業が開始された。

 それでもまだ人手が足りないようだった。


「できれば力仕事をしてくれるスタッフや細かい単純作業をしれくれるスタッフが欲しいッス。そうすれば、もっと開発は進むッス」


「うむ。おい、副所長!!人手を集めて参れ!!」


「は、はい・・・」


 俺とフィオナ嬢とリオネッサ将軍は各集落を周り、人員の募集を行った。


「もう自分が何の仕事をしているのか、分からなくなってきた」

「私もです。工場勤務なのでしょうか・・・」


 俺もそう思う。


 人員の募集は思ったよりもスムーズだった。

 というのも、囚人たちの取引は基本が物々交換で、交換する物品がなければ、それ相応の労働をする文化がある。特に農業用ゴーレムの恩恵を受けているゴブリンたちはかなり好意的だった。ゴブリンたちが言うには、農業用ゴーレムで飛躍的に生産力が向上したようで、普通に農作物を差し出すだけでは足りないと思っているようだった。

 ゴブリンの代表者が言う。


「ここまでしていただいたのですから、我々もできるだけ協力します。恩恵だけ受けるのなら、泥棒と同じですからね」


 そこまでは思わないけど、有難い。


 この動きは他種族にも広がる。

 各種族で一人か二人は、必ず人員を派遣してくれることになった。どの種族も少なからず恩恵を受けているからな。


 そんなこんなで、常駐の職員が10名になり、日替わりで20人の作業員が来てくれる体制にまでなってしまった。

 その為、飛躍的に生産力が向上したことで、ミケも大儲けしたそうだ。その恩恵は俺たちにも返ってきて、更に設備投資を行っている。


「センパイには感謝しかないニャ。お母様が言うには、私をここに派遣したのは失敗を経験させるためだったそうニャ」


 ミケの母親が言うには、クロネコ商会の次期商会長試験は、失敗を経験させることだったらしい。今回は早い段階で、支部を閉鎖する決断をすれば合格だったそうだ。


「商人は損切りも大事だからニャ。でもこんな事態になるとは、想定外だったらしいニャ」

「それはよかったな。これからも頼むぞ」

「はいニャ。それとお母様は、センパイと結婚できれば、すぐにでも商会長の座を譲ると言ってきたニャ。だから・・・」

「それは無理だ」


 ミケをあしらい、俺は勤務に戻る。



 ★★★


 刑務所の一日について説明しよう。

 バネッサ所長だけでなく、常駐の職員はみんな昼夜問わずに作業をしようとするので、強制的に休憩を取らせるため、勤務時間を設定した。まずは作業員が全員揃った午前9時に朝礼を行う。朝礼の司会は、なぜか俺だ。


「本日は草刈りゴーレムの刃を中心に作ってもらいます。研究班はいつもどおり、研究を続けてください。進捗状況はその都度、総務主任に報告を御願いします。メンテナンス班は警備主任と共にケンタウロスの集落での作業をお願いします。連絡事項は以上です。所長、一言お願いします」


「よし、今日も頑張るぞ!!作業の安全を願い、ゴーレム神に祈りを捧げるのじゃ!!」


 作業員全員が、作業場の中央に直立するゴーレムに祈りを捧げている。

 もうどこかの宗教団体だ。いつの間にか巨大ゴーレムが神様になっているし・・・


「偉大なるゴーレム様!!我に力を!!」

「感謝します、ゴーレム神様」

「ゴーレム、ゴーレム!!」

「ゴーレムは偉大なり!!ゴーレムは偉大なり!!」

「ゴーレム様、昨日作業をサボってしまいました。どうかご慈悲を!!」


 この教団の目的は巨大ゴーレムを動かすことのようだけど、種族が違うので、お祈りの仕方はバラバラだ。


 まあ、俺は仕事が何であれ、安定した穏やかな生活が送れればそれでいいのだが、そうもいかない事態に陥る。これは俺も想定しなかった事態だけど・・・


「魔力伝導率の改善方法が分かったぞ。これを応用すれば巨大ゴーレムを動かせる日は近いぞ。流石は我が最愛の夫ルークじゃ。わらわたちにこのことを伝えたかったのじゃな・・・」

「そうッス!!もうゴールはそこまで来ているッス」

「嬉しいかぎりです。私はこのゴーレムが悪者を蹂躙する姿が目に浮かびますわ」


 バネッサ所長は大魔導士だし、ドワーフのマリベラは一流の職人だ。そこに風魔法の達人で、かなりの実力者のフィオナ嬢と、やる気に満ち溢れたスタッフが集えば、どんどんと技術が向上していく。

 こんな最終兵器に近いゴーレムを動かしたら、本当に大惨事になる。


 堪り兼ねた俺は、閣下に相談することにした。

 刑務官が囚人に悩み相談をするなんてと思うが、もう今更だ。俺は自分が転生者であることを隠して、スキルですべての資料を読み解いたと嘘をついて、閣下に事情を説明した。


「ハハハハ・・・嘘から出た誠とはこのことだな」

「閣下、笑い事じゃないですよ。あんなゴーレムが動いたら大変なことになります。それに今更、嘘でしたとは言えませんし・・・」

「嘘には人を傷つける嘘と人のためにつく嘘がある。レントンも、センパイもよかれと思って、嘘をついたのであろう?」

「それはそうですが・・・ここまでのことになるとは・・・」


 閣下は少し考えて言った。


「我から言えることは、嘘をつき通せということだな。センパイなら、それなりに方法は思いつくだろう?それは時間稼ぎにしかならんが、その間にあのゴーレムの平和的利用方法を考えるのだな」

「分かりました」


 時間稼ぎの方法なら、何とかなるかもしれない。物事を先延ばしするのは得意だからな。


 次の日の朝礼で俺は一計を案じた。


「今日は研究班に指示があります。一旦、現在の作業を中止して、資料にあるゴーレムの開発を行ってください」


 怪訝な顔でバネッサ所長が聞いてくる。


「なぜじゃ?わらわは魔力伝導率の改善のほうが重要じゃと思うのじゃが?」

「とりあえず、資料を確認してください。これは画期的なゴーレムだと思うのです。ただ、設計図はなく、メモ程度のものしかありませんでしたが・・・」


 もちろん資料は俺の偽造だ。

 前世の知識を使って、ドローンぽいゴーレムのメモを書いた。設計図を作るところから始めないといけないので、かなり時間が掛かると思ったからだ。


「こ、これは・・・空飛ぶゴーレムか?」

「す、凄いです!!魔法少女にピッタリのゴーレムです」

「早速、取り掛かるッス!!」


 どうやら上手くいったようだ。


 ただ、このメンバーなら、すぐに開発してしまうかもしれない。

 何とか次の時間稼ぎの方法を考えないとな・・・


 安心安全な生活を守るために、俺は今日もせっせと、新作ゴーレムの資料を偽装するのだった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から新章となります。いよいよ世界が動き始めます。

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