47 巨大ゴーレム
バネッサ所長に案内されたのは、管理棟の地下室だった。
地下室と言っても、かなりの大きさだ。ぱっと見、前世の野球場くらいの大きさはあった。その中央には巨大なゴーレムが直立していた。
「このゴーレムは、我が最愛の夫ルークの夢でもあるのじゃ。完成すれば世界最強のゴーレムとなること間違いなしじゃ」
フィオナ嬢が目を輝かせている。
「凄いです!!私の理想にもピッタリです。是非ともお手伝いをさせてください!!」
魔法少女を崇拝するフィオナ嬢の琴線に触れたようで、フィオナ嬢は研究をそれとなく中止させ、無駄な研究費を押さえるという使命を忘れてしまっているようだ。
フィオナ嬢がそう思うのも無理はない。ゴーレムとは言っているが、どう見ても戦隊ヒーローに登場するロボットにしか見えない。俺も子供の頃なら、フィオナ嬢と同じ反応をしただろう。
「ルークの手記を見ながらコツコツと制作をしているが、なかなか上手くいかんでのう・・・特に動力の消費が多すぎる・・・ルークの手記が全て解読できればよいのじゃが・・・」
近くに散乱していた資料を確認する。
思ったとおり、日本語で書かれていた。詳しい魔術式までは理解できなかったが、それでも大まかな理論は分かった。
俺が資料を読み込んでいると、フィオナ嬢が声を掛けてきた。
「もしかして、センパイは読めるのですか?」
ここで俺が「元日本人の転成者です」と答えたとしよう。そうなるとまたフィオナ嬢に勘違いされる。伝説の魔法少年とか言われたら面倒だしな。
なので、少し嘘をついた。
「スキルで大まかな流れは分かると思います。流石に専門家ではないので、詳しいことは分からないかもしれませんが・・・」
「本当か!?頼む!!どうか解読してくれ!!」
バネッサ所長に頭を下げられた。
仕方なく、資料を読み込んでいく。
資料の他にも手記のようなものがあり、そちらも読み込んでいく。
まずバネッサ所長の旦那さんであるルーク・レントン教授は「ゴーレム技師」のジョブ持ちだったようだ。これは前世の日本でロボット技師をしていた関係で、転生の際にそのジョブを選択したようだ。この世界にロボットは無いので、女神様がそれっぽい「ゴーレム技師」を与えてくれたみたいだ。
結構、あの女神様は適当なところがあるなあ・・・
転生したレントン教授は、人を幸せにするゴーレムを作りたかったのだが、ゴーレムは主に兵器として使用されることになった。そのメインパイロットともいえる存在がバネッサ所長だったようだ。二人はそれが縁で結婚するのだが、だんだんと自分が人を不幸にするゴーレムを作っていることに嫌気が差し、当時勤めていた魔法省の開発局へ、退職したい意向を伝えた。
しかし、ゴーレム兵器は国家機密であったため、すんなりと退職は認められず、刑務官としてアトラス刑務所にバネッサ所長とともに勤務させられることになったそうだ。そしてその傍ら、帝国史を教える教授にも就任したそうだ。
本人曰く、これは監視目的の人事異動だったという。
アトラス刑務所に異動してからは、悠々自適にゴーレムを作っていたそうだ。
管理棟の受付をしているゴーレムは自信作の一つで、介護用ロボットを応用したもののようだ。そして、目の前に直立しているゴーレムはというと、手記にはこうあった。
「私の寿命も後僅かとなったので、どうせなら子供の頃の夢を叶えようと思って制作を始めた。私がロボット技師になったのも、子供の頃に戦隊ヒーローを見たのがきっかけだし、最後くらい自分の好きなようにゴーレムを作ろうと思った。しかし作ってみて、大変な物を作ってしまったと思う。世界が滅ぶレベルだ。正直やり過ぎたと思う。だから敢えて動かないように無駄なパーツをこれでもかというほど取りつけた。バネッサには『パーツを取り付ければ取り付けるほど、強いゴーレムになる。動かないのはパーツが足りないからだ』と嘘をついている。バネッサには悪いと思うが、私はバネッサを戦場に戻したくはないのだ」
これはどう伝えるべきだろうか・・・
本当のことを言ってしまえば、このヤバいゴーレムが完成してしまう。かといって、このままだとバネッサ所長は無駄なパーツに延々と予算を突っ込むことになる。
更に資料を読み込んでいくと、ある程度の理論は分かった。スキルのお蔭だ。
ロボットは電気が動力源だが、こちらの世界のゴーレムは魔力が動力源で、ロボットのモーターのに当たるのが魔法陣だ。その辺は違うが設計図は同じなので、ある程度は分かる。もうどのパーツを取り外せば、このヤバいゴーレムが動き出すか分かってしまった。
俺が悩んでいるとバネッサ所長が催促してくる。
「どうじゃ?何か分かったか?分かったことからでいいから、教えてくれ」
世界の平和を取るか、予算の削減を取るか・・・
悩んだ俺は、嘘をつくことにした。
「ある程度のことはスキルで分かりましたが、すぐにこのゴーレムは動きません。ただ、こちらにあるゴーレムをすべて完成させると開発のヒントになるようです。どうしてそうなるのかは、俺にも分かりませんが・・・」
俺は資料にあったゴーレムの設計図をバネッサ所長に見せて説明をした。
その設計図にはトラクターや自動草刈り機、お掃除ロボットのような生活に役立つゴーレムばかりだった。これなら、開発費をそちらに回し、それを囚人たちにレンタルすれば、レンタル料と相殺されて、商品が無償で手に入る。
これが俺が出した答えだ。かなり苦しいけど・・・
バネッサ所長が怪訝そうな顔で言う。
「こんな物を作って、一体何になるのじゃ?妾には理解できん」
まあ、そうだろう。だって、嘘だし・・・
しかし、フィオナ嬢は目を輝かせて言った。
「これは凄いですよ。多分のこの草刈り機は武器として応用できます。回転する風の刃を応用するんです。本当にカッコいいと思います。私も武器として使ってみたいです。流石はセンパイですね」
無駄に俺はフィオナ嬢に信頼されているんだよな・・・
今回は、痛いフィオナ嬢に感謝だ。
リオネッサ将軍も続く。
「それで言うと、このドリルを搭載した穴掘りゴーレムも武器になるな。攻城戦なんかでは、かなり有用な兵器になるだろう」
そういえば、現代の地球でも軍事技術の民間転用は割とポピュラーだった。インターネットやGPS、電子レンジなんかがそうだし、ダイナマイトなんて工事に使われているけど、兵器としても使える。
「総務主任や警備主任が言うのならそうなのじゃろうな・・・よし!!このまま巨大ゴーレムの開発を進めても成果はないし、こちらのゴーレムを開発してみようかのう」
俺はすかさず、この流れに持って行く。
「是非、そうしましょう。これらのゴーレムを作っていけば、きっと巨大ゴーレムは開発できるでしょう。それに作ったゴーレムは囚人たちにレンタルして・・・」
「そういうものかのう・・・なんか騙されておるような気がしてならんなのじゃが・・・」
多少、バネッサ所長には怪しまれたが、何とか承認を得られた。
これがきっかけで、アトラス刑務所は大きな変革を迎える。
まるで、刑務所内の産業革命だった。
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