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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第三章 人事異動

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45 帝都へ 2

 実家には母しかいなかった。

 父もマイケルも閑職と呼ばれる部署に勤務しているから、てっきりもう帰宅していると思っていたけど。


「あの人もマイケルも、どういうわけか忙しいのよ。徹夜になることも結構あるのよ」

「それは意外ですね」

「でも充実しているようだから、いいと思うわ」

「そうですね。二人にはよろしくお伝えください。俺もすぐに帰らないといけませんので、これで失礼しますね」

「体に気をつけてね。それとフィリップのことも頼むわよ。偶には職場に顔を出してあげてね」

「はい」


 実家を出た俺は、再びバネッサ所長の邸宅に戻る。

 邸宅の一室で、バネッサ所長はレントン教授の死体を脱いでいた。バネッサ所長はレントン教授の死体を椅子に座らせ、何やら会話をしている。


「ルーク・・・このホットケーキは旨いのう・・・あの時を思い出す」

「・・・・・・」

「すき焼きを久しぶりに食べたが、あれも旨かったぞ」

「・・・・・・」

「最近、職員が増えてのう。生活にも張りが出てきた。実験は相変わらず上手くいっておらんが・・・」

「・・・・・・」


 当然だが、レイトン教授は何も喋らない。

 喋ったら怖すぎるけど・・・


 何か見てはいけないものを見ている感じがする。

 俺は気づかないふりをして、邸宅の入口に戻って声を出す。


「アレクです。ただ今戻りました!!」

「分かった。こちらに来い」


 普通に部屋まで来るように言われた。

 別に見てもいいようだった。


「年寄りになると、色んなことが懐かしくなるのじゃ。この家はルークとの思い出が詰まった場所なのじゃ」

「そうなんですね。何となくですが、レントン教授も嬉しそうに見えますね」

「分かるか?調子が良い時は、笑ったりするのじゃ」

「えっ!!」

「冗談じゃ」


 よかった・・・


 微妙な空気になったので、俺は話題を変える。


「ところで、こちらは?」

「ホットケーキじゃ。これもルークが作ったものじゃ。じゃが、もう在庫がなくてのう・・・」


 一口貰ったが、間違いなく前世のホットケーキだった。

 バネッサ所長が言うには、レントン教授が作ったホットケーキミックスの在庫がもうないとのことだった。


わらわも自分で作ろうと思ったが、どうもふんわりとせんのじゃ・・・」


 多分、ベーキングパウダーを知らないのだろう。

 でも俺は、それっぽいものを知っている。クマーラさんが使っていたからだ。


「完全に再現はできませんが、お時間をいただければ、それに似た物は作れますよ」

「では頼もうかのう・・・」


 俺はすぐに商業ギルドで、この世界のベーキングパウダーを手に入れた。

 この世界では鉱石のままだったけどな。というのも、秘伝に近い扱いだからだ。


 俺はスキルでベーキングパウダー擬きを作り、早速ホットケーキを作っていく。


「これは・・・旨い・・・ありがとう、副所長・・・」

「いえいえ・・・」


 何だかんだ言っても、バネッサ所長はレントン教授のことを愛しているのだろう。

 ちょっと愛の形が歪だけど。



 次の日、アトラス刑務所に戻った俺はフィオナ嬢とリオネッサ将軍にもホットケーキを振る舞った。

 ホットケーキは、二人にも好評だった。

 焼きすぎたので、閣下にも食べてもらった。


「流石はセンパイだな。我も何度か食べたことはあったが、これなら毎日でも食べられるな」

「そうですね。でもある鉱石が必要ですし、精製も少し面倒ですから、毎日は厳しいですね」

「だったら、ドワーフにでも頼めばよい。その鉱石なら採取できるし、精製もドワーフならお手の物だろう」

「分かりました。頼んでみます」


 というか、何でそんなことを閣下は知っているのだろうか?

 まあ、詮索しないことにしたけど・・・



 ★★★


 それからはまた、バネッサ所長の注文が増えた。

 そのため、調達する食材がまた増えてしまった。食に無頓着なのも困るが、こだわりが強すぎるのも困る。今日も三人で、刑務所内の集落を周る。


「本当に商人みたいですね」

「そうだね。こんなことをしてたら、本来の業務ができないよ」


 リオネッサ将軍が言う。


「本来の業務がないのが、悲しい現実だがな」


 リオネッサ将軍が言うとおり、仕事がないのだ。

 俺は別に何とも思わないが、二人は暇を持て余しているようだ。


「まあ、給料が貰えればそれでいいんですよ。公務員とはそんな仕事ですよ」


「センパイは、達観しているな」

「そうですね。流石はセンパイと言ったところでしょうか・・・」


 二人は呆れているようだった。


「まあでも、今日は給料日ですよ。俺たちはこの日のために働いているのですからね」


「そうだな。私も給料日は楽しみだったな。若い頃はすべて酒に消えてしまったがな」

「そういえば、今日いただくのが、初めてのお給料です。冒険者としての報酬はありましたが、刑務官としていただくのは、少し感慨深いですね」


「将軍職の給料とは比べ物になりませんが、それでも嬉しいことには変わりありません。折角ですから、お祝いでもしましょう。ちょっと豪華な料理を作りますよ」


「賛成です!!折角なので、所長と閣下にも声を掛けましょう」

「異議なし。私は秘蔵の酒を出す。ドワーフとエルフの酒だがな」


 そんなウキウキ気分の俺たちだったが、衝撃の事実を知ることになる。

 バネッサ所長に給料日の会食のお誘いで所長室を訪れた時のことだ。


「給料日?そういえば、そんなものもあったのう・・・しかし、無い袖は振れんぞ。予算は全て使い切っておるからのう」


 えっと・・・法務省では3年分の予算を支給しているとか、言われたことを思い出した。


「も、もしかして・・・3年間、無給ということでしょうか?」

「3年ではない。5年分の予算を既に使い切って追加申請の3年分じゃから、正確には8年じゃな」


 おいおい・・・8年間無給だって!?


「それでは、俺たちはどうやって生活をすればいいのでしょうか?」

「別に困らんじゃろ?家賃は掛からんし、食費も囚人たちに分けてもらうか、備蓄食料を食べればよいわけじゃしな」


 バネッサ所長がここまで、常識知らずとは思わなかった・・・


 いや、旦那さんの死体をゴーレム化して利用していることを考えたら、そんなことは些細なことだろう。

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