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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第三章 人事異動

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43 アトラス刑務所の日常

 アトラス刑務所の勤務は、一言で言えば理想の職場だった。

 仕事なんて、あってないようなものだ。本当にすることがない。ここに居ることが仕事なのだ。定期的にリオネッサ将軍に訓練をさせられたり、囚人たちと模擬戦をする以外は、本当にのんびりと過ごしている。


 こんな日がずっと続けばいいのに・・・


 勤務開始から一週間は、そう思っていた。

 しかし、流石に我慢できないことがあった。それは食事だ。


 詳しくは教えてくれなかったが、バネッサ所長の亡くなった旦那さんは、どうも転生者だったようだ。食事は旦那さんが開発した備蓄食料がローテーションで出される。

 ただし、インスタントラーメン、レトルトカレー、エナジーバーの三種類しかない。最初に食べた時は、懐かしい味に大喜びだったが、毎回これでは流石に飽きてくる。


 バネッサ所長は食事には無頓着だが、それでも旦那さんのことは愛していたようで、食事の時はいつも同じ話をしてくる。お年寄りが同じ話を繰り返す感じだ。実際、かなりの高齢なのだけど。


「これはラーメンというのじゃ。お湯を入れて3分でできる画期的なもので・・・」


 もう何度目か分からないないラーメンの解説を聞きながら、インスタントラーメンをすする。

 流石に我慢ができなくなっていたので、それとなく言う。


「所長の旦那様は、料理に造詣が深かったようですね?俺も料理は嫌いじゃありませんから、資料なんかがあれば、再現してみせますよ」


 こんな食事が続くのであれば、自分が作ったほうがいいと思っての提案だった。

 流石に飽きたとは言いづらかったので、回りくどい言い方をした。


「資料ならあるが、わらわにも読めん暗号で書かれておる。それに食材もないしな」


 資料は後で見せてもらうとして、食材がないってどういうことだ?


「刑務局からそれなりに予算が出ていると思うのですが?」

「すべてわらわの研究費に消えておるのじゃ」


 それって完全な、公金横領だろうが!!


 ツッコミは入れなかったけど・・・


「どうしても食材が欲しければ、町に出て買って来るか、自給自足に近い生活をしている囚人たちから分けてもらうとよいぞ」


 そもそもの話、アンタが研究費に使っている資金は、囚人たちの食費も含まれていると思うのだが・・・


 ★★★


 そういう訳で、俺とフィオナ嬢とリオネッサ将軍は各種族が暮らす集落を巡回して、食材を集めることにした。町で買ってもよかったが、この機会に刑務所の中を見て周ろうという話になった。仕事がほとんどないので、フィオナ嬢もリオネッサ将軍も退屈していたことが大きい。

 まあ、俺クラスになると全くそんなことは思わないけど・・・


 最初に向かったのは、エルフの集落だった。

 エルフは外の世界でも見かけることはあるが、基本的に閉鎖的な種族なので、他種族との交流はしないらしい。外で見かけるエルフは、人間とのハーフエルフか外の世界を見て周りたいという少し変わったエルフらしい。


 早速事情を説明して、何か食材になりそうなものを分けてもらう交渉をする。

 族長の男に事情を説明するとこう言われた。


「まずは弓の腕前を見せてもうらおうか?」


 リオネッサ将軍は強いけど剣しか使わないし、フィオナ嬢は生粋の魔導士だ。

 となると俺しかいないな・・・


 俺はエルフに借りた弓を手に課題をこなしていく。

 ジョブの「マルチタレント」のお蔭で、思ったよりも上手くできた。族長の男も感心する。


「人間にしては良い腕をしている。この集落の子供並みの腕はしているな」

「ありがとうございます」

「それでは話を聞いてやろう」


 何とか上手くいき、野菜やフルーツ、果実酒なんかを分けてもらうことができた。

 代金を支払おうとしたが、断られた。刑務所内では物々交換が基本らしい。何か渡せる物はないかと考えていたら、こう言われた。


「弓の腕を見せてもらった。いい余興になったから気にするな」


 文化の違いなんだと思うことにした。


 続いては、ドワーフの里に赴いた。

 ここではドワーフの少女マリベラが好意的に歓迎してくれた。ここでも事情を話すと簡単な雑用をすることで、火酒と燻製肉を分けてもらった。リオネッサ将軍は、模擬戦で勝ちまくって、かなり業物の剣をもらっていたけど・・・


 そんな感じで、色々な集落を周った。

 流石にすべての集落は回れなかったけど、食材はそれなりに集まったので、管理棟に帰還することになった。



 ★★★


 早速料理に取り掛かる。

 ホーンブルという巨大な牛の魔物の肉が手に入ったので、それをメインにした料理にすることを決めた。折角なので、バネッサ所長にも喜んでもらおうと思って、バネッサ所長の旦那さんの手記にあった料理を作ることにした。


 予想した通り、バネッサ所長の旦那さんは元日本人の転生者だった。

 バネッサ所長が暗号と言っていたものは、日本語だった。手記には個人的な内容が多く含まれており、旦那さんは、バネッサ所長にも知られたくなかったのだと推察する。


 まあ、そんな話は置いておいて、料理にを作る。

 もちろん俺はプロの料理人じゃないから、凝った料理は作れない。でも簡単で美味しい料理には、それなりに自信がある。それで選んだのは、すき焼きだった。

 初代スペンサー侯爵が元日本人ということもあり、この地は米も醤油もある。砂糖はそれなりに貴重だけど、何とかなった。後は肉の質で料理の味が決まる。ホーンブルの肉を試食したら絶品だったので、失敗のしようがないくらいだ。


 出来上がった料理を所長以下みんなに振る舞った。


「センパイはやっぱり凄いです!!」

「ああ、これは旨いな・・・酒が進むな」


 バネッサ所長はというと、涙を流していた。


「ああ・・・懐かしい・・・若い時、給料が入ったら、よく二人でこれを食べていたな。体だけでなく、心も温まる・・・」


 それからみんなは、一心不乱に食べた。普通はワイワイ言いながら食べるんだけどな。


 お腹も落ち着いてたところで、バネッサ所長が言った。


「副所長。お主には料理の才能があるとみる。これからも、わらわを満足させる料理を作るように」


 指示はいいんだけど、予算を出してほしい・・・

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