41 アトラス刑務所 2
アトラス刑務所は、高さ100メートル以上の壁に囲まれている。
驚いたことに受付は生気のない声を発するゴーレムだった。
「マッテ、マシタ。コチラへ、ドウゾ」
流石にフィオナ嬢もリオネッサ将軍も驚く。
「噂には聞いていましたが、本当だったとは・・・」
「うむ。実際に見ると驚く」
二人はある程度、この刑務所の内情を知っているようだった。
ゴーレムに導かれ、俺たちは所長室に案内された。そして、所長席に座っていたのは、これも驚いたことに赤髪の幼女だった。10歳くらいの美少女だが、変に風格がある。
俺が戸惑っていると、幼女が怒鳴る。
「おい!!挨拶くらいせんか!!最近の若い者はそんなこともできんのか?嘆かわしい。この国もいよいよ終わりじゃな」
若い者って・・・お前よりは俺は年上だぞ!!
フィオナ嬢が俺の脇腹を肘で突き、耳打ちをしてくる。
「彼女が所長のバネッサ様です」
思考が追いつかない。
そんな中、リオネッサ将軍が声を発する。
「リオネッサであります!!警備主任として着任致しました」
フィオナ嬢も続く。
「フィオナ・スペンサーです。総務主任として着任致しました」
あれ?
フィオナ嬢とリオネッサ将軍がここの職員に!?
それにあの幼女が所長?
全く訳が分からないが、二人に併せて着任の挨拶をする。
「アレク・サンドルです。副所長として着任いたしました。併せて識別番号1番の護送任務も完遂致しました」
「うむ。まずはそこの囚人を特別房に連行せよ。話はそれからじゃ」
俺は言われるがまま、閣下をゴーレムの案内で連れて行く。
閣下が特別房に入っていく。ぱっと見た感じ、かなり豪華な部屋だった。まるで王侯貴族の居室だ。
「バネッサめ・・・気を遣うなと言っておったのに・・・」
閣下がつぶやく。
もう何が何だか分からない。
★★★
所長室に戻る途中、フィオナ嬢から事情を聞いた。
「どうしてフィオナ嬢がここに?」
「それは冒険者一本だと、設定的にあまりよくないかと・・・しがない刑務官だけど、実は魔法少女というところが、肝ではないかと。センパイと一緒ですよ」
フィオナ嬢なりのよく分からないこだわりがあるようだ。
それにどうもフィオナ嬢は、俺を勘違いしている。俺は本当にしがない刑務官なんだ。
変身して魔法少年になるわけではない。
「将軍もどうして刑務官に?冒険者をされるはずでは?」
「冒険者はどうも性に合わなくてな。設定にこだわったり、やたらと制約が多いし・・・」
それは冒険者がどうのという問題ではなく、クラン「仮面舞踏会」の問題だと思う。
まあ、これ以上はツッコムことはしなかったけど。
「話は変わりますが、所長があんな幼女って、どういうことですか?」
「暴虐のバネッサ・・・聞いたことくらいはあるだろう?」
暴虐のバネッサとは、伝説の大魔導士で宮廷魔導士団の名誉顧問だ。
その伝説の数々は知っているが、かなり高齢のはずだけど・・・
「実験中の事故で、あのような姿になったのだ。年齢は聞かないようにな」
「そ、そうなんですね・・・」
「このことも極秘事項だ。他国に知られるわけにはいかん。存在だけで抑止力になるからな」
リオネッサ将軍によると、幼女の姿になってから、アトラス刑務所の所長をしているようだ。
ここなら、誰とも会わなくても何とかなるからな。
そんな話をしながら、俺たちは所長室に戻った。
バネッサ所長が俺たちに言う。
「妾は所長じゃが、仕事はせん。実験が忙しいからのう」
いきなりの職務放棄宣言だった。
やる気のない文官たちでさえ、ここまで大ぴらに宣言はしない。働いているフリくらいはするはずだ。
「ということで、副所長。刑務所の仕事は全部、お主がするように」
「は、はい・・・」
続いて、フィオナ嬢にも指示をする。
「それで総務主任は、妾の実験助手をしてもらおう。魔法が得意のようじゃし」
「はい」
もはや刑務官の仕事ではない。
リオネッサ将軍にも。
「警備主任には、囚人の相手をしてもらおう。腕に覚えがある者も多いからな」
「はい、望むところです」
警備主任だから、囚人が暴れた時の対応を指示されるのは当然だ。
しかし、今までどうやって囚人を管理してきたのかと疑問に思ってしまう。
「まあ、指示はしたが、今のところ特にやらなければならん業務はないのじゃ。指示があるまでゆっくりと過ごすがよい」
意味の分からない俺は、質問をする。
「あのう・・・仕事がないってどういうことでしょうか?それに囚人の管理は?逃げだしたら、大変なことに・・・」
言い掛けたところで、話を遮られた。
「そうじゃ!!肝心なことを忘れておった。最近、物忘れが酷くてのう・・・囚人どもにも紹介してやらんとな」
そう言うと、バネッサ所長は通信の魔道具を手に取って叫んだ。
「おい!!点呼をするぞ!!3時間後に中央広場に集合じゃ!!遅れたら死刑じゃ」
囚人の点呼をするらしい。
遅れたら死刑って・・・
3時間後、俺たちは中央広場に向かった。
そこには驚きの光景が広がっていた。
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