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異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!  作者: 楊楊
第三章 人事異動

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38 護送

 とうとうこの日がやって来た。

 今日で俺は「嘆きの塔」からアトラス刑務所に異動する。そして、アトラス刑務所副所長としての初めての任務に就く。


 朝食を食べ終えた閣下に向き合う。

 俺のただなる雰囲気を感じた閣下が言う。


「どうした?私に愛の告白でもするのか?」

「そうではありませんが、落ち着いて聞いてください。大変心苦しいのですが・・・」


 俺は一度深呼吸して、命令書を閣下に示し、告知する。


「識別番号1番、貴殿を懲役200年の刑に処する。なお、未決拘留期間をこれに当てるものとする。よって、これより、貴殿をアトラス刑務所に移送する」


「そうか・・・とうとうこの日が来たのだな。分かった・・・」


 懲役200年なんて、実質の終身刑だ。その告知を俺にさせるなんて、法務省も法務省だ。


 閣下はマスカレードマスクを着用し、フードを深く被っているから表情は読み取れなが、全く動揺してはいなかった。


「それで我はどうすればいいのだ?」

「これより、専用の馬車でアトラス刑務所に向かいます。護送責任者は俺です。というのも、俺もアトラス刑務所で勤務することになったんです」

「そうか。それは楽しみだな」


 監視をルートナー伯爵に任せ、俺と上司はこれからの手続きと護送要領を確認する


「暴れなくてよかったな。私なら発狂するだろう。よく分からない御仁だったが、何か風格を感じるな。まあ、ここで君ともお別れだ。しっかりと頑張りなさい」

「はい」


 今思えば、最高の上司ではなかったけど、そんなに悪い上司ではなかったな。


「それと、護送部隊については精鋭を用意したぞ」

「ありがとうございます」

「囚人には珍しい賑やかな大行列になるだろうが・・・」


 その意味はすぐに分かった。


 ★★★


 まず今回の護送部隊だが、なんとフィリップの部隊だった。


「アレク、お前と一緒の任務だなんて感激だ」

「フィリップ兄さん、どういうことですか?」

「俺はアトラスにある北部方面隊の隊長になったんだよ。赴任するついでに任務を与えられたってわけだ」

「そうなんですね・・・」


 フィリップが危険な戦場に行かなくて、ほっとする。

 だが、フィリップは知らないだろうけど、北部方面隊は軍部では閑職だ。アトラスはフィオナ嬢の父親であるスペンサー侯爵が治めるスペンサー侯爵領の領都だ。普通はこんな場所に方面隊なんて置かない。建前は刑務所から脱獄した凶悪犯を捕縛することが任務だが、脱獄事件はここ100年は起きていないという。つまり、建前で設置しているだけの部隊なのだ。

 だから、当然優秀な軍人は配属されない。


「参謀本部から直々に、重要な任務だから頑張れと激励されたんだ。プレッシャーはあるけど、何とかやってやるよ」


 希望に満ちたフィリップを見ると、何も言えない。知らぬが花だ。

 フィリップの後ろでは、副官のフォクスさんがため息をついている。


「フォクスさん、引き続き兄をお願いします」

「はい、誠心誠意お支え致します」


 そんな挨拶を交わしているところに上司がやって来た。


「今回は長旅になるから、補給のために商会も手配した」


 これもびっくりなことに責任者はミケだった。


「実はアトラスにクロネコ商会が進出することになったニャ。それで私はそこの責任者をすることになったニャ」

「そ、そうか・・・」


 ミケとの腐れ縁はまだ切れないようだ。

 そして、もう一人・・・


「クマーラさん?どうして?」

「実はクロネコ商会に雇われることになってね。アトラス支部の料理部門の責任者をすることになったんだよ。またよろしく頼むよ、センパイ。()()()()()でね」


 また関係を引きずりそうだ・・・


 上司が言う。


「それと罪人とはいえ、かなりの貴人だから身辺警護要員で精鋭の女性冒険者を用意したぞ」


 こちらも驚きだった。

 マスカレードマスクを着用した二人の女性・・・


「フィオナ嬢・・・それに将軍?」


「魔法少女ナナですわ。以後お見知りおきを」

「わ、私は・・・ライオンマスクだ・・・」


 フィオナ嬢は堂々とリオネッサ将軍は、恥ずかしそうに答えた。

 後で聞いた話だが、リオネッサ将軍は冒険者となったが知り合いがいなかったようで、フィオナ嬢を訪ねたそうだ。その際、マジノ砦の作戦の時に結成した冒険者クラン「仮面舞踏会」として、活動することにしたそうだ。ギルマスのドゥウェインさんの話だと、定期的に実績を上げてくれたほうが偽装した事実がバレないから、協力してもらったらしい。

 まあ、登録ではAランクだから、こういった案件が舞い込んでも不思議ではない。


 閣下とフィオナ嬢とリオネッサ将軍が馬車に乗り込み、護送体制が完了したところで、見送りに来ていた上司とルートナー伯爵に挨拶をした。


「大変お世話になりました。向こうでも頑張ります」


「思えば君は、手の掛からない部下だったな。もしかしたら私の理想の部下だったかもしれない。しっかり頑張りなさい」

「センパイ、頑張れよ。後のことは儂らに任せろ。まあお客さんはいないがな」

「そういうことだ。今のところ貴族が大量に収容されることはないからな。内戦でも起きれば別だが・・・」


「それでは出発します。何かあれば通信の魔道具で報告致します」


 こうして俺は、思い出のつまった「嘆きの塔」を後にしたのだった。

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