36 エピローグ
リオネッサ将軍が釈放されて、数日が経過した。
俺は今、閣下と二人きりで、お茶を飲んでいる。
「センパイ、浮かない顔をしているな?」
「はい・・・本当にこれで良かったのかと・・・」
リオネッサ将軍は「元帥」に昇格したのだが、「元帥」はただの名誉職だった。
指揮する部隊もないどころか、部下の一人もいない。業務も講演や訓練指導などの形だけのもので、飼い殺しにされることになってしまった。
リオネッサ将軍の後任は既にいるし、その者を押しのけてリオネッサ将軍が元の将軍職に就くと混乱が生じる。それにリオネッサ将軍の支持が高いことを恐れた上層部が、そのような決定を下したのだろう。
「政治とはそんなものだ。センパイが気にすることはない」
「そうなんでしょうね・・・」
閣下が気を遣って、話題を変えてきた。
「ところで、その後の旧マジノ砦について、センパイはどう運用するのがいいと思う?私見で構わん」
「そうですね。俺でしたら、賠償金かなんかを貰ってドミノ王国に明け渡したほうがいいと思いますね」
「その心は?」
旧マジノ砦は防衛に向かない。
旧マジノ砦を確保し、若干領土が広がったとしても、防衛コストが掛かりすぎるし、その領土を利用して利益を上げることも難しい。だったらドミノ王国に恩を売って、明け渡すのも一つの手だ。
「しかし実際には、そうはしないであろうな?」
「はい・・・面子が大事ですからね」
「うむ。それで、センパイがドミノ王国側の責任者だったとして、今後はどういった策を練る?」
「ドミノ王国としても、是が非でもほしいものではありません。ですので・・・」
ドミノ王国としても、国の命運を懸けて奪還するメリットはない。
もう少し、ドミノ王国側に行ったところに防衛拠点を作れば、事足りる。俺がドミノ王国側の責任者だったら、定期的に砦付近で、嫌がらせの軍事演習でもするだろう。それだけで、オンボーロ帝国の戦力を割くことができる。ドミノ王国とオンボーロ帝国の国境はマジノ砦付近だけではないから、それなりに有効な手段だとは思う。
「なるほどな・・・」
「はい。ドミノ王国がオンボーロ帝国と全面戦争をして、勝つのは無理でしょう。なので、少しでも戦力を割きたいはずですからね」
「では、どうしたらドミノ王国はオンボーロ帝国に勝つことができる?」
「一国では無理でしょうね。我がオンボーロ帝国は周辺国の恨みを買っていますから、その周辺国と連携をするしかないでしょう。ただ、上手く話がまとまるかは分かりませんがね」
閣下はしばらく考えて言った。
「それでは周辺国が連携したと仮定して、どういった策を取る?」
「なるべく戦闘はしたくありませんから、間者や工作員を送り込んで、内戦でも起こさせるでしょうか?どの国でも多少の火種はありますからね」
実際、皇太子に対する評価は下がる一方で、皇太子を蹴落とそうとする動きも、水面下で起きていると聞く。まあ、あんな馬鹿だから、そう思う気持ちも分からなくはない。
閣下が笑いながら、意味深に言う。
「もうその工作が始まっているかもな?」
「流石にそれは・・・」
多分、冗談だろう。
★★★
その日の夜、部屋で休んでいると、入口のドアがノックされた。
今日はクマーラさんと約束のある日だった。いけないとは思いつつも、ズルズルと関係を引きずっている。
「開いてますよ」
すぐにドアが開かれた。
するとそこにはクマーラさんではなく、驚きの人物が立っていた。リオネッサ将軍だ。
「将軍!?どうして?」
「帝都を離れることになってな。挨拶と改めて礼を言いに来た」
「そんな・・・気にしないでください」
「それでは私の気が済まない。礼はさせてもらう」
そう言うが早いか、俺は押し倒された。
戦闘は長時間に及ぶ。もう精魂尽き果てた・・・
「ベッドの上では、なかなか上手くいかないな。戦場とは違う」
「いえいえ・・・結構なお手前でした・・・」
「世辞はいい。こっちのほうは、まだまだセンパイには及ばない。また手ほどきをしてくれ」
「は、はい・・・」
気まずい雰囲気になったので、話題を変える。
「ところで、帝都は離れてどちらに?軍の任務ですか?」
「いや、軍は休職扱いにしてもらった。これからは冒険者として、自由に生きてみるよ」
「そ、そうですか・・・将軍なら、どこへ行っても引く手あまたでしょう」
「そうだといいがな・・・改めて礼を言う。もう会うことはないかもしれんが、機会があれば、また再戦しよう」
そう言うと、リオネッサ将軍は部屋を出て行った。
ど、どうしよう!?
元被収容者とそういうことになるのは、OKなのか?
とりあえず、深呼吸して規定を確認しようと思ったところ、またドアが開いた。
クマーラさんだ。
「じゃあ、早速始めようか?」
「えっ!!ちょっと待ってください。もう体力的に・・・」
「ごちゃごちゃうるさいよ!!それと私も、もうすぐここを出て行くからさ・・・」
「えっと・・・」
「まあ、細かいことはいいよ」
意識が遠くなった・・・
★★★
ヤバい!!寝過ごした!!
慌てて、制服に着替えて出勤し、通信の魔道具で上司に報告する。5分程、報告が遅れてしまった。
「少し弛んでいるのではないかね?」
「い、いえ・・・」
「お客さんが減ったからって、基本に忠実に勤務してもらわないと困るよ」
「は、はい・・・」
「まあいい。それにしても、君が遅刻するのは珍しいな。何かあったのか?」
「特に何も・・・」
何とか誤魔化し、閣下に朝食を届ける。
閣下が笑いながら言った。
「昨日は楽しんだか?」
何でこの人、知っているんだ?
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次回から新展開となります。




