35 軍法会議
いよいよ軍法会議が始まった。
今回俺は傍聴席にいる。弁護人は父ピーター、助手は兄マイケルが務めている。二人は俺が従軍している間、帝都で弁護活動や情報収集を行っていたし、まあ、大丈夫だと思う。
裁判が始まると罪状が読み上げられ、争点は予想通り、リオネッサ将軍の立案した作戦の評価と参謀本部が作戦を承認した事実の有無になった。
こちらの証人が次々と証言し、作戦が大きな成果をもたらしたことを強調していく。そして、こちらの最後の証人が証言台に立った。フィリップだ。
法廷がざわつく。
というのも、旧マジノ砦を奪還した部隊の隊長であり、軍部にも民衆にも多くの支持を得ているからだ。
「この度の作戦成功は、すべてリオネッサ将軍のお蔭です。私はリオネッサ将軍が立案した作戦を忠実に遂行しただけなのです」
更に法廷は騒がしくなった。
弁護人である父が、証拠資料を提出するとともに概要を説明する。
「こちらは、リオネッサ将軍が立案した作戦になります。この作戦では、一度旧マジノ砦を敵に明け渡した後、相手が油断している隙に再攻勢を掛けて、旧マジノ砦を奪還して、敵に壊滅的な打撃を与えるとなっています。つまり、リオネッサ将軍の作戦では旧マジノ砦の奪還までがワンセットとなっているのです」
これには参謀本部側の担当者が反論する。
「だったらなぜ、今の今までその事実を黙っていたのですか?」
もっともな反論だ。
しかし、これについては、事前にこちらが工作をしている。
フィリップの副官であるフォクスさんと退役軍人であるトラコさんを証言させて、証明していく。まあ、実際は捏造だけどな。
「・・・先程の証人の証言のとおり、軍部に内通者がいると睨んだリオネッサ将軍は、トラコ殿に作戦計画書を託し、『信頼できる指揮官に手渡してほしい』と依頼しました。兼ねてから交流のあったフォクス殿に相談し、我が愚息フィリップに作戦計画書を渡したのです」
これには参謀本部側の担当者も黙るしかなかった。
作戦計画書の砦奪還任務については、「敵が油断している隙に真正面から突撃する」としか記載されていないが、実際その通りのことをして旧マジノ砦を奪還しているから、どうしようもない。軍は結果がすべてといった風潮があるしな。
そんな作戦なんて、そもそも存在しない捏造だけど、嘘だと証明することはできない。
当のフィリップもフォクスさんに言い含められて、信じきっている。自分の立案した作戦だと強調しないところがフィリップがフィリップたる所以なのだ。まあ、フィリップは尊敬しているリオネッサ将軍から認められたことで、大喜びしていたらしいが・・・
そして、次の争点である参謀本部が作戦を承認したかどうかに移っていく。
こちらは、詳しい法廷戦術を父から聞いていない。父が言うには大人の決着を図るとのことだった。父とマイケルを信じるしかない。
参謀本部側の担当者が証言をする。
「リオネッサ将軍は参謀本部に作戦の承認を求めたことは事実だと考えます。現在捜査中で、まだ推測の域を出ない話ですが、旧マジノ砦の司令官が一枚噛んでいると思われます。参謀本部でも検討致しましたが、もし参謀本部にそのような話があれば、間違いなく承認していたはずです。つまり、この作戦を成功させたくない誰かが、妨害工作をしたものと推察されます」
またしても法廷がざわつく。
だって、参謀本部がリオネッサ将軍の作戦を評価したのだ。多分これが父の言う、大人の決着なのだろう。というのも、リオネッサ将軍の作戦については、旧マジノ砦の司令官は知らない。極秘で行っていたからだ。そう考えると参謀本部に作戦を握り潰した犯人がいる可能性が高くなる。
だが、それを認めることはできない。
そこで参謀本部は旧マジノ砦の司令官にすべての罪を着せることにしたようだ。拷問でも何でもして、供述を引き出すくらい何とでもなるからだ。
そして、父とマイケルが政治的な逃げ道を用意したのだろう。それに参謀本部が乗っかる形になった。
どうもスッキリしないが、リオネッサ将軍の無実を証明するには、これが限界だろう。
父が、大げさに言う。
「私も宮廷魔導士団として、従軍の経験があり、当時から参謀本部の見識の高さには感嘆しておりました。先程、話されたようにこの作戦が正確に参謀本部に伝わっていたのなら、間違いなく承認されていたでしょうな」
「その通りです。このようなことをした司令官は厳罰に処してやりますよ」
参謀本部も馬鹿ではない。
最低限の面子が保たれたことで、これでよしとしたようだ。
★★★
判決が言い渡された。
「判決。旧マジノ砦奪還及びドミノ王国に多大な損害を与えた功績を称え、「元帥」の階級を与えるものとする。拘束期間中に凍結されていた給与は全額支給し、併せて報奨金も支給する」
これ以上ない成果だと思う。「元帥」なんて、過去30年で一人しかいない名誉な階級だ。
俺はもちろん、フィリップは大喜びしていた。
しかし、父とマイケルは浮かない顔をしていた。
どういうことだろうか?
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