33 マジノ砦奪還作戦 3
顔合わせの時に司令官は、仕切りに作戦決行日について聞いていた。
フィリップが自信満々に答える。
「もちろん事前に連絡した通り、1週間後だ。期待しておいてくれ」
「分かりました。こちらとしてもしっかりサポートしますよ」
「こちらは長旅で疲れているから、しっかり頼むぞ」
「はい、早速宴を準備しておりますよ」
これも驚きなのだが、作戦の詳細を詰めるでもなく、いきなり宴会を開くらしい。
まあ、作戦自体があってないようなものだからな・・・
それからすぐに、酒が末端の部隊員まで振る舞われた。ほとんどの兵士が久しぶりの酒に歓喜した。
だけど、俺たちはやる事があるから、酒はほどほどに配置に就く。
そして深夜、司令官の側近の男が新マジノ砦からこっそり外に出て、旧マジノ砦方面に向かっているのを発見した。
夜目の利く獣人の部隊員に尾行を指示する。
しばらくして、通信の魔道具を通じて報告があった。
「間違いありません。ドミノ王国軍の奴らと密会して、計画書を手渡していました」
報告を受けたリオネッサ将軍が言う。
「この時点で、作戦の中止を訴えても、どうにもならんな。となると・・・」
「やるしかありませんね。実戦で使われたことのない作戦ですが・・・」
「そこはセンパイを信じる。失敗した場合は私が責任を取る」
この世界に来て、初めてまともな上司に巡り会った気がした。
★★★
次の日から俺たちの部隊は別行動になった。
建て前は従軍商人の護衛だ。実際、食料や物資が少し不足していて、その補充で従軍商人であるクロネコ商会の輸送任務の護衛が必要だったので、これを利用した。新マジノ砦の司令官も冒険者を良く思っていなかったし、フォクスさんが取りなしてくれたこともあって、すんなりと承認された。
まあ、実際は極秘の作戦を遂行するんだけどな。
俺たちの作戦を一言で言えば、トロイの木馬作戦だ。
トロイの木馬とは、古代ギリシャ時代のトロイア戦争において、難攻不落の城塞都市を陥落させた作戦だ。大量の兵士を潜ませた巨大な木馬を贈り物として、城塞都市に送り込み、内部から敵を崩壊させた有名な逸話だ。
この作戦を伝えた時、リオネッサ将軍も判断に困っていた。
しかし、これ以外に方法は今のところないと判断して、この作戦を採用することになった。提案した俺が言うのもあれだが、かなり不安だ。
だって、神話に近い話だし、真偽の程は未だに分からない。救いといえば、旧マジノ砦が難攻不落の要塞ではないことだけど・・・
そんな不安を抱えながらも、作戦を遂行する。
今回は止めたにも関わらず、ミケも同行することになった。
「センパイやフィオナにだけ、危険なことをさせるのは気が引けるニャ。私も商人、リスクは取るニャ」
「絶対に無理をするなよ」
「私は、フィオナではありません。魔法少女ナナです」
フィオナ嬢は置いておいて、今回の作戦の第一段階はミケの腕に掛かっている。
新マジノ砦に到着して3日後、作戦を決行することになった。
俺たちは小隊を装って、旧マジノ砦に潜入する。わざわざ迂回して、ドミノ王国側から砦に入ったことで、特に警戒はされなかった。
今は、砦の門番とミケがやり取りしている。
「配達で来たニャ」
「配達?それもこんな大量に?」
「そうニャ。ここに依頼書もあるニャ」
「確認しよう」
確認した後に門番は怒鳴る。
「おい、お前!!この依頼書はオンボーロ帝国のものじゃないか!?」
「そうニャ。私たちはオンボーロ帝国の従軍商人のクロネコ商会ニャ。分かったのなら、中に入れてほしいニャ」
「馬鹿にしているのか!?ここはドミノ王国の砦だ!!」
「そ、そんな・・・だってここはマジノ砦じゃないのかニャ?」
「ここはドミノ王国が占領して、砦は二つあるんだ」
「そ、そうか・・・じゃあ失礼したニャ。私はこれで・・・」
「この状況で、「はい、そうですか」と言うと思うか?」
当然、ミケは拘束される。
そして、旧マジノ砦の関係者から取調べを受けた。
「悪気はなかったニャ。単純に場所を間違えただけニャ」
「悪気があったら、こんな馬鹿なことはしないだろう。しかしなぜ、ほとんどが酒や嗜好品なんだ?」
「砦で宴会をするらしいニャ。それでこんな感じになったニャ」
この証言は信じられたようだ。
「では、積み荷は没収する。それで命だけは助けてやる」
「そ、それは破産してしまうニャ。せめて半分でも払ってほしいニャ」
「お前たちの命はそんな安いのか?」
「そ、それは・・・だったら三分の一でいいニャ。それに大量にあるから、荷運びはこちらでするニャ」
結局、ミケの主張は受け入れられ、多少の現金が支払われて、積み荷は没収されることになった。
ここまでは作戦通りだ。俺たちは人夫として、砦内に潜入した。
俺たちが、せっせと積み荷を倉庫に運んでいる間に旧マジノ砦の兵士たちは宴会を始めていた。
期日まで、敵が絶対に攻めて来ないと思い込んでいるからだ。リオネッサ将軍がつぶやく。
「こっちもこっちで、腐っているな・・・」
「そうですね。長い間、談合のような戦闘を繰り返してきたんですからね」
「我らオンボーロ帝国の兵士だけではなく、ドミノ王国の兵士も被害者なのだな」
「そうですよ。こんな馬鹿げたことは、すぐに終わらせましょう」
日が完全に沈みきった頃、宴の盛り上がりは最高潮を迎えていた。
「将軍、そろそろやりましょうか?」
「うむ」
いよいよ、作戦を決行することになった。
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