32 マジノ砦奪還作戦 2
俺は今、部隊長を集めた戦略会議に出席している。
ここに来るまで、多くの人の助けがあった。順を追って説明する。
まず、兄フィリップの副官をしている狐獣人のフォクスさんに秘密裏に連絡を取った。
これは、獣人の退役軍人のまとめ役をしている虎人族のトラコさんの伝手を使ってだ。フォクスさんは優秀で、話の分かる人だったので、話は早かった。
「一応、冒険者部隊のまとめ役という形であれば、何とかこちらで会議には出席できるようにします。但し、それなりに条件が・・・」
フォクスさんが言うには、部隊長になるには、冒険者としての実績と配下の隊員数が必要とのことだった。とりあえず、トラコさんたちに配下になってもらい、人数は何とかなった。
なので、またまたドゥウェインさんにお願いすることにした。
「流石にこれは・・・バレたらクビになるレベルだな」
「そこを何とか・・・」
「まあ、国のためだ。何とかしておいてやるよ。但し、借りは返せよ」
実はリオネッサ将軍は若い頃に冒険者登録をしていて、冒険者ランクはAランクだ。それにフィオナ嬢もAランクだし、トラコさんを含めた5人がBランクだった。これを利用して、総勢30名の冒険者クラン「仮面舞踏会」をAランククランとして登録してもらった。実力はさておき、経歴は偽造だけどな。
クランというのはパーティーが寄り集まったもので、Aランククランともなれば、大きな権限が付与されるようだった。その権限を使って、冒険者部隊の代表という地位を手に入れた。
ここでなぜ、「仮面舞踏会」というクラン名かというと、全員がマスカレードマスクを着用しているからだ。フィオナ嬢は趣味で、俺とリオネッサ将軍は素性を明かせないので、マスカレードマスクを着用することになったのだが、他のメンバーもマスカレードマスクを着用したいと言い出したので、こうなってしまった。
客観的にみれば、かなり痛い集団だ。
まあ、そんなこんなで戦略会議に出席することになったのだが、酷いものだった。
何が酷いって?
それは中隊長のフィリップだ。
「とにかく、気合いと根性だ。心を一つにして、正面突破するぞ!!」
「「「おう!!」」」
それで、作戦は終了だった。
流石のリオネッサ将軍も愚痴をこぼす。
「ここまで、軍の劣化が進んでいるとは・・・」
いや、フィリップだけだと思う。
その後、フォクスさんから部隊輸送の説明があった。救いはミケの実家であるクロネコ商会が従軍商人を請け負うことだ。まあ、補給がしっかりしていれば、まだ何とかなるからな。
会議終了後にフィリップが声を掛けてきた。一瞬バレたかもしれないと思ったが、そうではなかった。
「君たちはカッコいいな。期待しているぞ。俺もマスクを着けようかと思うんだ。おい、フォクス!!俺の分のマスクを用意してくれ」
「中隊長、それは無理ですよ。中隊長がそんな恰好はできませんよ」
「そうか・・・残念だ」
お前の頭が残念だ・・・
リオネッサ将軍は、深いため息をついていた。
★★★
1週間後、俺たちは帝都を出発した。
大々的に出発式まで行われた。トリの演説はフィリップだった。民衆に熱く語り掛け、かなり評判が良かった。しかし、疑念が残る。
「こんなに大々的に宣伝して何を考えているのだか・・・」
リオネッサ将軍の気持ちも分かる。
普通の軍事作戦であれば、秘密裏に行うだろうしな。こんなに大々的に出発式をしたら、絶対に敵を警戒をさせてしまう。
「多分、失敗してもらいたいんでしょう・・・」
「そうだな・・・」
「だったら、プランBですね」
「そうなるだろう」
従軍商人として同行しているミケに指示をする。
今回ミケも責任を感じて同行しているのだった。
「ミケ、あちら側の関係はどうなっている?」
「抜かりはないニャ。噂や情報を分析したら、間違いなくマジノ砦の司令官とドミノ王国の司令官はつながっているニャ」
「そうか・・・本当にこの国の軍部は腐っているな」
マジノ砦の司令官は代々、ドミノ王国側の司令官と秘密裏に交渉をしていた。
先代までは、なるべく戦闘が起きないために動いていたようだが、今の司令官になってから、状況が一変する。定期的に戦闘を起こさせて、利益を得ていたのだ。
戦闘が起きれば、予算も増額される。相手の司令官も自分の地位が高まるので、ウィンウィンの関係だ。ほとんどが小競り合い程度のものだが、それでも少なくない数の兵士が犠牲になる。兵士の命を利用した、悪魔のような金儲けをしていたのだった。
「後はどう処理するかだな・・・」
「そこが問題ニャ。普通に訴えても無視されるだけニャ」
リオネッサ将軍が言う。
「当然センパイは、考えがあるのだろう?」
「あるにはありますが、かなり危険なものになるでしょうね」
「危険は承知の上だ。聞かせてもらおうか?」
俺は作戦の詳細について、説明した。
「流石にセンパイは考えることが違うな。私の側にセンパイのような参謀がいれば、こうはならなかったかもしれんな・・・」
「買い被りすぎですよ。普通に考えれば、誰でも考えつきますよ」
「そうとは思えんが・・・」
そんな感じで、時折ミケからもたらされる情報を精査しながら、作戦を修正していく。
そして、帝都を出発して1週間で新マジノ砦に到着した。新マジノ砦は、山岳地帯に地形を利用して構築されていて、素人が見ても、陥落させることは難しいと感じた。一方、眼下に見える旧マジノ砦は、素人が見ても、なぜこんな所に?という場所に設置されていた。
情報によると現在、旧マジノ砦はドミノ王国軍が占拠しているという。
フィオナ嬢が言う。
「ドミノ王国も大変でしょうね。あの砦を守ろうとすれば、多くの人員と物資が必要でしょうに」
リオネッサ将軍が答える。
「そうだ。あそこに居てくれるだけで、人員と資源を浪費してくれている。あの場所をドミノ王国に渡すまでは、こちらがそのような状況だったからな」
「そうですね・・・それを思うと、無理に奪還する必要なんてないのに・・・」
★★★
到着してすぐ、新ドミノ砦の司令官と顔合わせがあった。
小太りのいけ好かない中年男だった。フィリップにはおべっかを使っていたが、冒険者部隊には冷たい態度を取る。
「金目当ての冒険者など連れて来おって・・・大した戦力にもならんのにな・・・」
まあ、キレそうになっている者もいたが、今はそれどころではない。
それから、簡単な打ち合わせをして、その日はそれで終了した。
まあ、ここからが俺たちの仕事だけどな。
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