31 マジノ砦奪還作戦
俺は今、冒険者ギルドに来ている。
フィリップの弟アレクとしては断られたが、別名で冒険者登録し、別人として志願すれば大丈夫だと考えたからだ。俺が受付で新規の冒険者登録を行っていたら、声を掛けられた。ドゥウェインさんだ。
「おい、アレク。何をやってんだ?」
「アレクでは、ありません。自分は魔法少年クルクルです・・・」
「そうか・・・辛い事でもあったのか?話くらいなら聞いてやるぞ」
「は、はい・・・」
因みに俺は、フードを被り、マスカレードマスクを着用している。
痛い格好をして、身バレしてしまった。辛すぎる・・・
仕方なく、事情を説明する。
「なるほどな。だったら、登録名の変更だけで何とかなるぞ」
「そうですね・・・でも、アレクと魔法少年クルクルが同一人物だと分かると・・・」
「その辺は俺が何とかしてやるよ。国から照会があっても、秘匿にするように指示しておいてやる」
「では、それで・・・」
まあ、この際それでもいい。冒険者として、一生過ごすわけでもないからな。
俺はギルドカードを魔法少年クルクルで再発行してもらい、第三駐屯地に戻って再度志願した。すぐに手続きは終了した。後日、冒険者ギルドに確認して問題なければ採用となるようだ。
再度、冒険者ギルドにやって来て、その旨をドゥウェインさんに伝えた。
「これは貸しだからな。また何かあれば頼むぞ」
「はい」
そんな話をしていたところ、驚きの人物が登場する。
「魔法少年の登録があったと聞き、馳せ参じました!!・・・ってセンパイじゃないですか?」
「えっと・・・一応、魔法少年クルクルです・・・」
ドゥウェインさんが説明してくれる。
「フィオ・・・じゃなかった魔法少女ナナとの特別契約で、魔法少年や魔法少女の新規登録があれば、すぐに教えるってことにしているんだ。Aランクの特権ってやつだ」
フィオナ嬢はAランクになっていたようだ。
Aランク冒険者には特権がある。その特権を使って、そのような契約をしているようだった。仕方なく、フィオナ嬢にも事情を話すことになった。
「是非協力させてください。何ならパーティーを組みましょう」
正直、少しでも戦力は欲しい。
なので、俺はこの話を受けることにした。
★★★
俺と魔法少女ナナことフィオナ嬢は、「嘆きの塔」に向かった。
俺の本業はこっちだし、俺が長期間ここを空けるとなると迷惑が掛かる。下手したらクビだ。上司にその説明を行ったり、リオネッサ将軍や閣下にも挨拶くらいはしておかないとな。
まず上司のほうだが、こちらはすぐに承認が下りた。
俺の気持ちを理解してくれただけでなく、今回の作戦に志願すれば、刑務局としてもポイントが高いからだ。
「しっかり頑張りなさい。戦死したら、遺族年金が出るようにするからな」
「はい、ありがとうございます」
続いて、リオネッサ将軍と閣下にも事情を説明する。
リオネッサ将軍が怒鳴る。
「私のためにセンパイがそこまでする必要はない!!戦場は何が起こるか分からん。いくらセンパイといえど、死ぬかもしれないんだぞ!!」
「それは十分に理解しています。でも兄のことが・・・」
「そもそもの話、この作戦自体が破綻している。一体、上層部は何を考えているんだか・・・」
「俺が作戦に参加することで、必ず作戦を成功させられると思うほど、自惚れてはいません。でも、兄一人くらいは守れるとは思うんです・・・」
少し、考えたリオネッサ将軍が言う。
「だったら私も行く」
「それは駄目です。だって、脱獄扱いになって有罪に・・・」
「私がどうなろうと構わん。私の所為で多くの命が奪われることのほうが耐えきれない」
俺たちはリオネッサ将軍を救うために頑張っているのに・・・
どうにも上手くいかない。
そんな時、閣下が笑いながら言った。
「将軍がセンパイに同行するればいいという話だな?」
「そういうことでは・・・1日2日であれば、何とか誤魔化せるかもしれませんが、長期間は無理ですよ。定期監査もありますし・・・サイショウさんに偽装工作をお願いするにしても、まず無理です」
「監査を乗りきれれば、大丈夫いうことだな?」
「まあ、理論上は・・・」
「だったら、問題はない」
閣下は、ルートナー伯爵に何やら指示をしていた。
3時間程して、驚きの人物が現れた。フィオナ嬢も驚いている。
「教授?なぜ?」
目の前に現れたのは、小柄で頭のハゲ上がったよぼよぼの老人、帝国史の教授であるレントンだった。
相変わらず、焦点の定まらない目でこちらを見ながら言った。
「へい・・・閣下から話は聞いておる。早速、やってやろう。そこの獣人娘、妾・・・ではなく、儂について参れ」
レントン教授はリオネッサ将軍を連れて、居室に入っていった。
フィオナ嬢が言う。
「レントン教授は何者なんでしょうか?」
「それは分からない。でも、無詠唱で精神攻撃魔法を一流の魔導士に気づかれないように掛けたり、無駄に深い知識を持っていることを考えると、只者ではないとは思う。閣下絡みだし、深く聞かないほうがいいかもな」
「そうですね・・・」
しばらくして、居室から二人のリオネッサ将軍が出てきた。
「どちらが本物か分かるまい?」
ぱっと見では判断がつかない。
「では少し動かしたり、喋らしたりしてみよう」
一方のリオネッサ将軍は少し動きがカクカクしていて不自然で、言葉も少しおかしかった。
「こっちのほうはゴーレムじゃ。もっと時間があれば、精巧にできるのじゃが、即席でこのレベルなら、上出来じゃろう?」
フィオナが驚きの声を上げる。
「傀儡魔法?そんな・・・伝説に近い魔法じゃないですか・・・この魔法が使えるのは・・・」
言い掛けたところで、レントン教授が遮る。
「お嬢さん、あまり詮索せんでくれ。この意味は分かるな?」
「はい・・・」
傀儡魔法の達人でもこんなことはできない。何代か前の宮廷魔導士団長が傀儡魔法の達人だったという話は聞いたことがあるけど・・・
レントン教授はルートナー伯爵を呼びつけた。
「おい、小僧!!」
「は、はい」
「操作マニュアルはここに置いておく。それとしっかりメンテナンスをするようにな」
「承知いたしました」
ルートナー伯爵を小僧扱いなんて・・・
閣下が言う。
「将軍、センパイ、フィオナ嬢、しっかりやれよ。帰って来たら英雄譚を聞かせてくれ」
リオネッサ将軍が来てくれれば、戦力は十分だ。
でも何か、絶対知ってはいけない重大な秘密を知ってしまったような気がする・・・
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