30 再捜査 4
家族会議という名の捜査会議が始まる。
まずは俺から会計報告を行う。
「経費を差し引いても、かなりの額が集まりました。これなら高ランクの冒険者を一定期間雇えますよ」
父が言う。
「上出来だ。使い道はおいおい決めよう。いつ入用になるかもしれんしな」
続いて、母とマイケルから情報を集約した内容が発表された。
「リオネッサ将軍の悪い噂は聞かないわね。嘘をつくような人ではないとの評価よ。だけど、リオネッサ将軍のことを良く思っていない者も一定数はいるわ。リオネッサ将軍がいなければ、自分が将軍だったとか、獣人でしかも女の指示に従うのは許せないとか・・・まあ、組織とはそういうものだからね」
「作戦については、軍でも評価も分かれていますね。敵に大打撃を与えたことを評価する一方、マジノ砦と領土を奪われたことに責任追及する声もあります。また、マジノ砦について、きな臭い情報もありますが、噂の域を出ない情報です。弁護に使えるかどうかと聞かれれば、現段階では使えないでしょうね・・・」
マジノ砦はきな臭い噂がある。
マジノ砦の司令官が敵と通じているという噂だ。マジノ砦の司令官が一枚噛んでいる可能性が高いが、現時点で証明する手段がない。
「それで弁護方針だが、一番確実なのは情状に訴え、自ら将軍職を辞することを条件に出せば、名誉除隊で済むとは思う。その方針で行くのなら、すっきりはしないが、こちらも動くことはできる。ただ・・・」
「フィリップ兄さんは納得しないでしょうね・・・」
反リオネッサ将軍派閥の者からすれば、リオネッサ将軍が軍から去ってくれれば、一応の目的は達成される。流石に極刑や重い刑罰を科す程ではないと思っているはずだ。しかし、何ともすっきりしない。大人の事情というやつだ。
「ところで、フィリップ兄さんは、どうしたのですか?」
「復帰したばかりだから、張り切って仕事をしているのだろう。フィリップも小隊長だから、それなりに溜まっている仕事があるのだろう」
幸いというか、フィリップはこの会議に遅れている。
仕事が溜まっていると父は言うが、部下のフォクスさんが全部やっているので、仕事が溜まっていることなんて、ないはずだが・・・
そんなことを思っていたら、フィリップがやって来た。
「遅くなって、申し訳ありません」
「気にするな。小隊長ともなれば大変だろう?」
「そうよ。無理はしなくていいわよ」
「ありがとうございます。それと報告があるのです。実は・・・」
衝撃の報告だった。
「なんと、中隊長に昇進しました!!まだまだ同期たちには、追いついていませんが、これからも頑張りますよ」
「それはめでたいな。やっとフィリップの頑張りが認められたのだろうな」
「そうね。お祝いをしなくちゃね。すぐに準備しましょう」
しかし、次のフィリップの発言で、おめでたい雰囲気は一変する。
「そのことなんですが、これからまた駐屯地に戻らないといけないんです。というのも、俺はマジノ砦奪還部隊の隊長を拝命しましたからね。何でも、今回は志願兵と合同の部隊になるようなので、その部隊編成やなんかで、忙しくて・・・すみません」
「仕事なら仕方がない。しっかりやりなさい」
「そうね・・・体には気をつけてね」
「はい!!それではこれで・・・」
物凄い雰囲気になった。
国家存亡の危機でもないのに志願兵を募るなんて、あり得ない。絶対に何か裏があると思うのは俺だけではなかった。
マイケルが口を開く。
「リオネッサ将軍の支援者を一気に始末する作戦でしょうね・・・軍がここまで腐っているとは、思いませんでした。それとなく、フィリップに辞退するように・・・」
「それはできん。命令に従うのが軍人だからな。個人的な理由でそんなことはできん」
「心配ねえ・・・」
リオネッサ将軍を支持する者は多い。
それは貴族、平民問わずだ。理由は、ただの憧れや尊敬、戦場や魔物討伐の現場で命を救われたというような個人的な理由など様々だ。特に直接命を救われたような者たちは、命を投げ出してでも、リオネッサ将軍を助けようとするだろう。それが軍の上層部には危険と判断し、だったらこの際、まとめて処理しようと考えたのだと推察する。
俺の目標は安心安全で、安定した生活を送ることだが、家族を犠牲にしてまで、手に入れようとは思わない。フィリップは痛い兄貴だが、弟思いの優しい兄貴でもある。
どうして、こんなことに?
そんな思いから、つい言葉に出してしまった。
「俺がこんな話を持って来なければ・・・」
「アレク、それは違うぞ。まだフィリップが死ぬと決まったわけではない。我々にもできることは、まだあるはずだ」
「そうだぞ、アレク。俺はまず、誰がこんな馬鹿げた命令を出したのかを調査する。そして、鉄槌を喰らわせてやる。多分、その命令を出した奴が黒幕だと思う。弁護方針は変更だ。無罪を勝ち取るぞ」
「そうね・・・流石にここまでされたらねえ・・・私もできることはするわ」
「そ、そうですね・・・俺もできることをやりますよ」
こんな時覚悟を決めて、冷静に動けるのは正直尊敬する。
父も兄も、宮廷魔導士団に所属していた経験があり、軍人としての基本はできている。母なんて、近衛隊に所属していたから、「命を懸けて皇族を守れ」と指導されてきたのだろう。それを差し引いても、本当に頼もしい家族だと思った。
★★★
次の日、俺は第三駐屯地を訪ねた。
志願兵の手続きに来たのだ。しかし・・・
「フィリップ兄さん、受け付けないってどういうことですか!?」
「アレク、気持ちは分かるが、ここは俺に任せておけ。まあ、心配するな。俺は中隊長だからな」
心配するなというほうが無理だろう。
というか、中隊長だから大丈夫という論理は謎だし、また馬鹿なことをして戦死することは、目に見えている。
フィリップの昇進に併せて昇進した、副官のフォクスさんが言う。
「お気持ちは有難いのですが、かなり危険な任務なのです。中隊長と一緒に戦いたいというお気持ちは分かりますが、ここは辞退してください・・・」
「分かりました・・・また来ます・・・」
俺は第三駐屯地を後にした。
でも、やれることはあるはずだ。
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