26 プロローグ
フィオナとミケが無事に貴族学校を卒業し、俺の刑務官生活も2年目を迎える。
フィオナがいなくなったことで、ミケがここに来る回数も減った。少し寂しい感じはするけど、安定した平穏な生活は戻ってきた。
特に刺激もない代わり映えのない毎日を送っている。朝の見回り、リオネッサ将軍との鍛錬・・・そんな感じで毎日が過ぎていく。
そんな毎日が1ヶ月程続いた頃、ミケが久しぶりに訪ねてきた。
俺に相談したいことがあるという。どうせ、新しい商売のことだろう。
「実はここでは話せないことだニャ」
「ヤバい話じゃないだろうな?」
「それが私もよく分からないニャ。お母様が呼んできてほしいって・・・」
「俺がなぜ、お前の母親に会わなくちゃならないんだ?」
「そ、それは・・・センパイと結婚を前提に付き合っていると、嘘をついてしまっているニャ。だから、その・・・」
いつ俺がお前と結婚を前提に付き合った?
眩暈がしてきた。
「だから、会うだけ会ってほしいニャ・・・」
「分かった。会うだけだぞ。それで俺たちは付き合っていないと言うぞ」
「まあ、今はそれでいいニャ」
次の日、俺はミケと共にクロネコ商会を訪ねた。
すぐに応接室に案内されたのだが、応接室は殺気に溢れていた。明らかに軍人と分かる男や手練れの冒険者風の女、総勢8人が俺を睨みつけている。
あれ?「娘を傷物にしやがって!!」とかいうやつか?
俺に折檻するために手練れを集めたのか?
どうする?逃げるか?
若干パニックになった俺だが、すぐに退路を確保するため、気づかれないように窓際に移動する。最悪、窓から飛び降りようと考えたからだ。
そんな時、応接室のドアが開き、猫獣人の女性が入って来た。
「ミケから話は聞いています。私はミケの母でクロネコ商会の会長をしております、ミカと申します。貴方がアレク様ですね?」
「ご挨拶が遅れました。サンドル子爵家の三男で、法務省刑務局で刑務官をしております、アレク・サンドルです」
「それでは、早速本題に入りましょう。皆さん、彼の評価はどうですか?」
すると、一斉に手練れたちが、俺に跪いた。
「「「どうか、我らに力をお貸しください!!」」」
全く意味が分からない。
★★★
しばらくして、ミケの母親が話始めた。
「ミケが貴方と付き合っていると、嘘を言っていることは分かっていました。ですから、ミケを利用させてもらいました。ミケは何も知らず貴方をここに連れて来ました。ミケに悪意はありません。騙し討ちにするようなことをして、申し訳ありません。まずはお詫びを」
「構いませんよ。それよりも事情を説明してください」
「分かりました。但し、この話を受けるにしても、受けないにしても口外しないことをお約束ください」
「口外しないことを約束します」
ミケの母親が話を続ける。
「ここにいる者は、全員が元軍人です。私たちは、あるお方を貴方に救ってほしいのです」
「俺はしがない刑務官ですよ。人を助けられるような能力なんてありませんよ」
「そんなことはありません。貴方は多くの人を救っていますよ」
「そうですかね?偶然じゃないですか?」
「やはり情報通りですね・・・」
どの辺が情報通りなのだろうか?
「話を続けます。あるお方というのは、貴方もよくご存じのリオネッサ将軍です。近々軍法会議で判決が下され、最悪処刑されます」
流石に衝撃を受けた。
この話を受けたら、絶対にヤバいことに巻き込まれる。かといって、リオネッサ将軍を見捨てるなんてできない。
「受けるかどうかの前に、もっと詳しく話を聞かせてください。それと危険なことはしませんよ。俺はそんなに強くありませんし・・・」
「これも情報通りですね・・・」
詳しく聞くと、軍法会議でリオネッサ将軍の弁護活動をしてほしいとのことだった。
実際、俺はフィオナ嬢を助けているから、その手腕を買われたのだろう。リオネッサ将軍の脱獄の手引きをしろと言われなかっただけ、よかったと思おう。
「分かりました。できる限りのことはしようと思いますが、結果は保証できませんよ」
「ありがとうございます。リオネッサ将軍は私たち獣人の誇りですからね・・・多くの同胞が喜ぶと思います」
「そ、その・・・まだ結果は出てませんし・・・お礼なんて・・・」
「いえいえ、貴方が受けてくれたことで、成功間違いなしです。それではこちらの者たちから詳しい事情を説明させます」
8名の代表者で虎人族のトラコという女性が中心となって、事情を説明してくれた。
「アレク殿、マジノ砦については知っているか?」
「はい、一般常識程度なら」
「リオネッサ将軍が軍法会議にかけれたの理由は、2年前にあったマジノ砦紛争にある。その当時、リオネッサ将軍は・・・」
一通り話を聞き、ある程度の事情は分かった。
「分かりました。できれば正式な書類や資料が欲しいですね。他にも当時の状況を証言をしてくれる者を集めないといけません」
「そうか・・・ここにいる者は全員除隊しているから、正式な書類なんかを持ち出すことはできない。それに全員が下士官だったから、軍部に伝手もない・・・アレク殿に伝手はないのか?」
「あることはあるんですが・・・」
現役の小隊長の知り合いというか、身内がいる。
あまり頼りたい奴ではないが・・・
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




