25 エピローグ
俺は今、「嘆きの塔」の中庭でリオネッサ将軍、閣下、それにミケとルートナー伯爵と一緒に食事会をしている。因みにフィオナ嬢は参加していない。
リオネッサ将軍が言う。
「センパイ、早く続きを聞かせてほしい。試合の途中から、急に映像が映らなくなったからな」
ルートナー伯爵も続く。
「いい所だったからな。あの後、魔法省に問い合わせたら、魔力障害が何とか言っておった。本当のところは分からんがな」
「そうでしょうね。あれは流石に中継できませんよ・・・じゃあ、詳しく話しましょう」
★★★
あの日、控え室を出て、試合会場に向かうフィオナ嬢は、決意に満ちた顔をしていた。
決勝戦だが、俺は何もアドバイスをしなかった。フィオナ嬢が本気で戦うのなら、作戦も何も関係なく勝てるだろうし、それ以外の選択をしても俺がどうこう言うことではない。
試合前にフィオナ嬢と皇太子ウイリアムが言葉を交わしていた。
「ここまでよく頑張ったなフィオナ。俺は元婚約者のお前に手を挙げたくはない。分かってくれるな?」
「もちろんです。殿下の御心は、痛いほど分かります。私がフィオナであれば、そのお話はお受けしたでしょう。しかし、私はフィオナではありません」
「な、何を言っているのだ・・・」
試合開始となった。
フィオナ嬢は風魔法と土魔法の二重詠唱で砂煙を発生させた。会場全体が砂煙に包まれた。
しばらくしてフィオナ嬢が姿を現したのだが、ピンクのマントを着用し、ピンクのトンガリ帽子を被り、マスカレードマスクを装着していた。魔法少女スタイルだ。変身の仕方がアニメっぽい。
「数々の悪行、許すことはできません!!星に代わってお仕置きですわ!!」
「フィオナ!!ど、どういうことだ?」
「私は魔法少女ナナ、フィオナではありません」
「な、何を言っているんだ・・・おい!!やめろ!!」
フィオナ嬢は両拳に風魔法を纏わせて、皇太子をタコ殴りにしていた。フルボッコというやつだ。
あっと言う間に皇太子は意識を失い、地面に倒れ込んだ。それでもフィオナ嬢は攻撃を止めず、今度は何度も踏みつけていた。
審判が止めようとしたところで、フィオナ嬢が言った。
「また、つまらない物を狩ってしまいましたわ!!」
そしてフィオナ嬢は勝ち名乗りを受ける前に会場から颯爽と去って行った。
会場が物凄い空気になった。試合結果は勝ち名乗りを受ける前に試合会場を飛び出したことで、棄権扱いとなり、皇太子ウイリアムの優勝となったのだった。
こんな状況なので、当局が中継を打ち切ったのも理解できる。
これで一応は、皇太子との取引に応じたことになったのだが・・・
★★★
「決勝戦は、もはや試合と呼べるものではありませんでした。ただのリンチでしたし・・・まあ、その後の処理のほうが大変でしたけど・・・」
「それで大会終了後も、しばらくこちらで勤務しなかったのだな?」
「そうです。苦労しましたよ・・・」
「私はその話も聞きたいぞ」
★★★
事後処理をどうするかを検討するため、俺は会場に試合を見に来ていたフィオナ嬢の父親であるスペンサー侯爵と協議することになった。というのも、スペンサー侯爵が俺を指名してきたからだ。スペンサー侯爵は金髪でナイスミドルといった感じの紳士だった。
「君がセンパイ君だね?」
「ま、まあ・・・」
「フィオナから聞いている。君に言えばすべてが解決するとな。流石の私でも、この状況でどうすればいいか分からない。よければ、知恵を貸してくれないか?」
俺はそんなことできないぞ!!フィオナ嬢は、俺のことを何だと思っているんだ?
少し考えた俺は、とりあえず策を言ってみた。
「かなり強引で、成功するか分からない手ですが、多くの人の協力があれば、できないことはないです。あまりお勧めできませんが・・・」
「聞くだけ聞かせてくれ」
「それはですね・・・」
俺が考えたのは、「極度のポーション酔い」で、フィオナ嬢が正常な判断ができなかったということにして、押し切る作戦だ。
極度の緊張状態で、数種類のポーションを短期間に大量に飲んだことから、酩酊状態となり、決勝戦の時点では、すでに前後不覚になっていたということにした。実際、言動がおかしかったしな・・・
まあ、言ってはみたものの、無理があると思う。
「なるほど・・・かなり無理があるが、それくらいしか手はないな。それで具体的にどうすればいいんだ?」
「そ、そうですね・・・まずはポーション酔いの症状について詳しく・・・」
「そうか!!報酬は出すから、是非手伝ってくれ!!」
断れるわけもなく、俺は奔走することになる。
当日、フィオナ嬢の言動がおかしかったことは、俺やミケを含め多くの者が見聞きしているから、その証言を集め、ポーションをがぶ飲みしていたことも、ミケがかなり盛って証言している。
そして、魔力酔いの具体的な症状については、冒険者ギルドに協力してもらった。こちらも、ちょっとデータを改ざんしたけど、皇太子の馬鹿がやった事に比べたら、許される範囲だろう。
そしてスペンサー侯爵が動いて、政治的に解決した。詳しくは聞かなかったが、結構な資金とコネを使ったらしい。
それでフィオナ嬢だが大会後、すぐに療養という名目で領地に戻っている。実際はちょくちょく魔法少女ナナになって、冒険者活動をしているみたいだけど・・・
一応の解決がなされた後、スペンサー侯爵に言われた。
「本当にありがとう。感謝する」
「いえいえ、大したことはしてませんよ。ただの刑務官ですし・・・」
「君はそういう奴だったな・・・」
どういう奴だよ?
「もし困ったことがあれば、何でも言ってくれ。力になろう。それではまたの機会に・・・期待しているぞ!!魔法少年」
勘違いしているようだが、もう面倒くさいので何も言わずその場を辞した。
★★★
「それで、フィオナ嬢は最近ここに来ないのだな?」
「はい。それに卒業式は出ないみたいですね。それまでは実家で療養ということになっています」
「そうか・・・」
フィオナ嬢にお別れを言えなかったリオネッサ将軍は、少し寂しそうだった。
空気を変えようと思ったミケが言う。
「それにしても、今日の料理は旨いニャ。ただ肉を焼いただけなのに・・・」
「この肉はワイバーンの肉だ。フィオナ嬢が冒険者たちと一緒に討伐したワイバーンだよ」
実際、フィオナ嬢が「オールアウトアタッカーズ」と合同で討伐したワイバーンの肉だからな。一番いい部位を送ってくれていたのだ。
「そうか・・・元気にしているようで、安心したニャ」
閣下も続く。
「センパイ、ご苦労だった。また期待しているぞ」
「そんな、ただの刑務官に期待しないでくださいよ。これからは、のんびりと安定した生活が待ってますしね」
「そうなるといいがな・・・」
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次回から新章となります。リオネッサ将軍の話です。




