24 フィオナの逆襲 6
フィオナ嬢は風魔法と土魔法の二重詠唱を行った。
土魔法で発生させた砂を風魔法で巻き上げ、砂嵐を作った。アーノルドの視界が奪われる。そして、死角から風魔法で攻撃をする。これをフィオナ嬢に教えた時、リオネッサ将軍は「こんなことは誰も考えつかなかったな。単純な原理なのに・・・」と驚いていた。
「これが貴殿の奥の手か?だが、この程度なら・・・」
アーノルドは流石は「上級剣士」だけあり、死角から迫ってくる風魔法を紙一重で躱している。
「我慢比べなら負けんぞ!!それにもうそろそろ、魔力が切れる頃だろ?」
「それはどうでしょうか?」
「レイモンドとの戦いを見て分かっている。貴殿は限界のはずだ。もう降参しろ」
アーノルドの見立て通り、フィオナ嬢の魔力は切れかかっている。だが、フィオナ嬢の奥の手がこれだけじゃないことをアーノルドは知らない。
突然、砂嵐の中からフィオナ嬢が現れ、猛然とアーノルドに向かって行く。
「一か八か最後の賭けに出たようだな?だが無駄なことだ!!」
アーノルドが上段から渾身の一撃を繰り出した。誰もがフィオナ嬢の負けを予想したのだが、その予想は裏切られることになった。
「必殺!!トルネードブロウ!!」
右の拳に風魔法を発生させ、振り下ろされた剣諸共、一気に殴りつけた。
アーノルドの剣は折れ、アーノルドは場外に吹っ飛ばされた。勝負ありだ。
俺が伝授した技も前世の日本のアニメを参考にした。これはフィオナ嬢の琴線に触れたようで、感動して言われてもないのに、どんどんと改良を加え、かなりの威力になったのだった。しかし、フィオナ嬢が素手の格闘術に優れているわけではないので、わざわざ砂嵐を発生させ、不意打ちに近い形で使用したというわけだ。
アーノルドが立ち上がれなかったので、そのまま試合はフィオナ嬢の勝ちで終了した。
★★★
フィオナ嬢はかなり疲弊していた。
魔力も限界に近いようだ。ミケが手配したスタッフがマッサージやポーションで必死に回復を試みている。
「フィオナ嬢、次の相手はレオナルドとアーノルドに比べれば大したことはない。節約作戦で行くぞ」
「はい。やっとあの武器が使えるのですね?」
「だが、あれも多少魔力は使うから、十分注意しろよ」
そんな話をしているところに大会運営委員がやって来た。
「も、申し訳ありません。また、試合順が変更になってしまって・・・プログラムを作成した私たちのミスです。すみません」
申し訳なさそうに女学生が言う。
彼女も仕方なくやっているのだろう。しかし、本当に卑怯な奴らだ。
「いいですわ。どんな困難な状況にも立ち向かうのが、真の魔法少女ですから・・・」
ちょっとおかしなことを言っているが、スルーすることにした。
そして、3回戦が始まった。
相手も観客もフィオナ嬢が手に持った武器に驚愕している。フィオナ嬢が手に持っている武器、それは鎖鎌だった。この国にそんな武器はない。日本でもキワモノ扱いの武器だ。それでも鎖鎌を選んだのには訳がある。
この鎖鎌は特注品で、鎖部分が希少鉱石のミスリルで出来ている。作戦は鎖に風魔法を付与して、自由自在に操作して戦う作戦だ。フィオナ嬢は風魔法のスペシャリストであるため、相性のいい武器なのだ。それにミスリルは魔力伝導率がいいので、少ない魔力で鎖を操作するとができる。
試合開始と同時に戸惑っている相手にフィオナ嬢が鎖を飛ばす。
初撃は躱されたが、それでも魔法で鎖を操作しているので、死角から相手の頭部に鎖がヒットする。あっという間にフィオナ嬢が勝利した。
戦闘職志望とはいえ、普通の学生が初見で対処するなんて、絶対無理だろう。
そんな感じでフィオナ嬢は何と決勝まで勝ち上がった。
準々決勝と準決勝の対戦相手は、フィオナ嬢に勝てないとみて、全身鎧に身を包んで、フィオナ嬢の体力と魔力を削るだけに専念していた。観客がブーイングするくらい酷い試合だった。
「勝ち負けは別にして、正々堂々と全力で戦いたかった・・・」
「俺もだ・・・こんなの親父には見せられん・・・恥ずかしい・・・」
準々決勝と準決勝でフィオナ嬢と戦った二人が愚痴をこぼし合っていた。多分、指示があったのだろう。彼らには同情する。
★★★
決勝までは少し時間が空いた。
控室で待機していると隣の控室から、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
「うっうっうう・・・武人として恥ずかしい。父上、私は家名に泥を塗りました。自害してお詫びを・・・」
「自害するのは我のほうだ。我に力が無いばかりに・・・」
そんなことを聞いてしまったら、正義感の強い自称魔法少女のフィオナ嬢は放っておけない。
ノックもせずに控え室に入った。
「どうしたのですか?事情をお伺いいたします」
「そ、それが・・・」
この女性はスピノラという女学生で、皇太子と準決勝で対戦したという。
なかなかの槍使いで、レイモンドやアーノルドには劣るものの、学生としては十分な実力で、俺もチェックはしていた。あの別格の二人と比べたら、流石にかわいそうだ。
そのスピノラだが、皇太子の関係者から「ワザと負けろ。応じないと、領地の街道を封鎖する」と脅され、これに従ったようだ。
皇太子だが、学生としては弱くはないが、決勝に残れるだけの実力はない。こんなことをされたのは、彼女だけではないのだろう。
正義感の強いフィオナ嬢が言う。
「私が代わりにボコボコにして差し上げます。星に代わって、お仕置きですわ!!」
「ありがとうございます。でも、私が話したことはどうか、ご内密に・・・」
「もちろんですわ。生まれてきたことを後悔するくらいにお仕置きして差し上げます」
控え室に戻った俺たちがだが、予想外のことが起きる。
フィオナ嬢を慕う学生が10人程、控室を訪ねて来た。「ワザと負けてほしい」と言ってきたのだ。フィオナ嬢に脅しは通用しない。だから、他の学生を利用したようだ。
ミケが怒鳴る。
「圧力に屈しては駄目だニャ!!」
「分かっているよ・・・でも俺の実家は吹けば飛ぶような田舎領主だ。俺はいいけど、領民たちが・・・」
「ごめんなさい・・・就職を取り消すと言われて、仕方なく・・・」
「恥ずべきことをしているとは分かっている。でも・・・どうしようもないんだ。皇太子殿下には逆らえない」
さっきまでの勢いはどこへやら、フィオナ嬢は涙目になって、俺を見つめてくる。
「せ、センパイ・・・私はどうしたらいいのでしょうか?正義とは一体何のでしょうか?」
そんなことを俺に聞かれても困る。
どうしようもない。小説やアニメだったら、気持ちよく皇太子に勝つことが正解なんだろうけど、これまでの状況を考えると、本当に報復される可能性は十分にある。それにゆくゆくは皇帝になる奴だから、今後のことを考えると、大人しく従うのも一つの方法ではある。
痛い兄貴のフィリップなら、間違いなく前者を選ぶだろうけど、答えの出る問題ではない。
俺は自嘲気味に言った。
「ごめん、俺に答えられない。俺は魔法少年じゃない・・・ただのしがない刑務官だからな・・・」
フィオナ嬢は覚悟を決めたような表情に変わり、そして言った。
「すべては星の導き。そういうことですよね?」
どういう意味だろうか?
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