23 フィオナの逆襲 5
とうとう武闘大会の当日がやって来た。
俺はルートナー伯爵に「嘆きの塔」の管理をお願いし、フィオナ嬢のセコンドにミケと共に就く。因みにリオネッサ将軍と閣下は映像記録の魔道具でリアルタイムで観戦するという。というのも、武闘大会は国家的にも注目のイベントだから、中継があるようだ。まあ、それを見られるの一部の有力貴族や軍の関係者くらいなんだけどな。映像記録の魔道具は高価で希少性がある。ルートナー伯爵が手配したみたいだ。被収容者にそんなことをしていいのかと思うが、もう今更だ。
トーナメント表を見たミケが言う。
「これは流石にやり過ぎだニャ!!」
「そう言うな。これも想定内だ。しかし、あからさますぎるな・・・」
トーナメント表を確認すると、フィオナ嬢の一回戦の相手は、なんと宮廷魔導士団長令息のレオナルドだ。それにレオナルドに勝っても、二回戦で第一騎兵隊長令息のアーノルドと対戦する。対策を練ってきた二人とこんな序盤で対戦するとは、流石に思わなかった。
「多分、私に活躍させないためでしょう。誰に負けようと一回戦負けは一回戦負けですから、それで溜飲を下げようと思っているのでしょうね」
そうなんだろうな。
それにしても、いきなり強敵との連戦か・・・
俺が皇太子の立場だったらと考えると思ったよりもいい作戦に思える。フィオナ嬢はこういったトーナメント戦に慣れていないし、ペースが掴めないうちに叩き潰そうというのは、理に適っている。
「望むところですわ!!」
フィオナ嬢は気合い十分だ。
★★★
一回戦の最終試合がフィオナ嬢の試合だ。
注目の魔導士対決ということで、場内は一回戦にしては珍しく、盛り上がりを見せている。フィオナ嬢とレオナルドが試合会場で対峙した。
レオナルドは金髪の痩せた男で、フィオナ嬢をじっと見ている。そして、口を開いた。
「フィオナ様・・・いや、フィオナ。ここでどちらが最高の魔導士か決しようではないか。初戦に貴殿と対戦することを進言したのは俺だ。弱り切った貴殿を倒しても、何の自慢にもならんからな」
「そうですか・・・正々堂々、魔法勝負と行きましょう」
「望むところだ!!」
試合が始まる。
会場の誰もが、魔法の撃ち合いになると予想していたようだが、そうはならなかった。フィオナ嬢は猛然とレイモンドに向かって行く。
「血迷ったか!?喰らえ、サンダーボルト!!」
レイモンドは得意の電撃魔法を速射する。俺よりも強力で俺よりも速い。まあ、本職の魔導士だからな。
しかし、フィオナ嬢は難なく躱す。
「なに!?一介の魔導士に躱せる魔法ではないぞ・・・」
普通の魔導士同士の対戦では、遠距離から魔法を撃ち合い、相手の魔法を魔法障壁で受け止めるのが定石だ。しかし、フィオナ嬢はそれをしなかった。
焦ったレイモンドは、サンダーボルトを乱射する。それをフィオナ嬢は躱しながら間合いを詰めていく。
そして、レイモンドの電撃魔法の切れ目にフィオナ嬢は風魔法を発動した。しかし、これはレイモンドの魔法障壁に防がれた。
そういった攻防が繰り返された。
次第にレイモンドが肩で息をし始めた。そしてフィオナ嬢の作戦に気付く。
「そ、そうか・・・身体強化魔法に加えて、風魔法で移動速度を上げていたというのか・・・」
「流石はレイモンドさんですね。普通にやっては勝てませんからね。これでも貴方の実力は認めているんですよ。もう降参してはどうでしょうか?」
「そうもできない事情がこちらにはあるのだ。行くぞ!!」
レイモンドはそれでも電撃魔法を連発する。
そして決着の時が訪れた。魔力が完全に切れたレイモンドは膝から崩れ落ちた。魔力切れによる気絶だ。
審判が勝負を止める。
「勝者、フィオナ・スペンサー!!」
勝ち名乗りを受けたフィオナが戻って来る。足元がかなりふらついていた。
「思った以上に粘られ、魔力をかなり使ってしまいました」
「なかなかの相手だったな。勝っただけで、よしとしよう」
俺がフィオナ嬢に教えたのは、風魔法で移動速度を上げることだった。
単純な発想だが、フィオナ嬢に言わせるとかなり難しいらしい。というのも手や杖から魔法を出すのではなく、足や背中から魔法を発動させるからだ。そもそも普通の魔導士に手や杖以外から魔法を発動させるという発想がないらしい。
俺がこれを思いついたのは、前世のロボットアニメからだ。背中のバックパックから炎を噴射して、加速していたからな。子供の頃に試しに火魔法でやってみたが、大火傷をした。なので、それ以後は風魔法にしている。
「支援隊すぐに準備ニャ!!フィオナをすぐに担架に乗せるニャ!!」
「ミケ、そこまでは・・・」
「少しでも、体力を温存するニャ!!」
その後、フィオナは担架で運ばれ、ポーションとマッサージで体力と魔力を回復させていた。
★★★
またまた、卑怯なことをされた。試合順を変更され、試合間隔が狭まった。
説明では諸事情らしいが・・・
「フィオナ嬢、大丈夫か?」
「ミケのお蔭で、7割程は回復しました。何とかなります」
「クソ!!卑怯すぎるニャ!!」
「ミケ・・・どんな困難にも負けないのが、魔法少女ですわ」
「それは意味が分からないニャ・・・」
努めて明るく振る舞うフィオナ嬢だった。
そして二回戦が始まった。対戦するのは大柄で黒髪のアーノルド。
「上級剣士」のジョブを持つ、かなりの剣士だ。万全の状態でも、正面から戦えば厳しい相手だ。
フィオナ嬢と握手を交わしたアーノルドが言う。
「貴殿が万全の状態で戦いたかったが、仕方がない。主君の命令に忠実に従うのが騎士だ。手加減はせん」
「お構いなく。こっちはいつも全力全開です」
戦闘が始まった。
身体強化魔法と風魔法で移動速度を上げた。作戦としては、距離を取って逃げながら魔法攻撃で削っていく作戦だ。高速の移動能力を手に入れたフィオナ嬢に並みの剣士は勝てない。しかし、アーノルドは並の剣士ではなかった。
「スラッシュ!!」
フィオナ嬢の風魔法に斬撃を飛ばして、相殺してくる。
「この程度か?」
「仕方ありません。奥の手を使いましょう」
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