21 フィオナの逆襲 3
俺は今、リオネッサ将軍と閣下と共に「嘆きの塔」の中庭で優雅にお茶を飲んでいる。
リオネッサ将軍が言う。
「そういえば、フィオナ嬢たちの最終試験はどうなったのだ?」
「はい、今日にも結果が出るそうで、分かり次第、すぐにこちらに報告に来ると言っていました」
「そうか。いい結果であればよいが、悪くても悔やむことはない。結果に関わらず、努力したことは、後で生きてくるからな」
「そうですね・・・」
そんな話をしているところにフィオナ嬢とミケがやって来た。
フィオナ嬢は出所してからも、ちょくちょく来るので、出所した感じがあまりしない。
「センパイ、将軍、閣下、本当にありがとうございました。最高の結果です」
「やってやったニャ!!けちょんけちょんニャ!!」
二人が言うには、上位20パーセントの独占どころか、トップ30をフィオナ嬢を慕う学生たちが独占したそうだ。そして、トップはダントツでフィオナ嬢だったらしい。
「いい気味だニャ。しかも皇太子とその取り巻きたちは帝国史を落第したニャ。これで二期連続で落第したから、お叱りを受けたらしいニャ。皇族が帝国史を二期連続で落第するなんて、前代未聞だニャ。アイツらは結果発表の時、青ざめていたニャ」
「試験の明暗が分かれたのは、帝国史でしたね」
「そうニャ。あの皇太子たちは試験発表後も往生際が悪く、文句をつけていたニャ。でも、却下されていたニャ」
詳しく聞くと、皇太子たちは「騙された」「不正があった」「全員寝ていたのにおかしい」と騒ぎ出したそうだ。
だが、この主張は受け入れられなかった。というのも、半分近くの学生は合格しているからな。ミケが無料サンプル版として、平民や下級貴族の学生を中心に帝国史の予想問題だけは配っていたらしく、そのような結果になったらしい。
そして決め手となったのは、トップを取ったフィオナ嬢たちの証言だったという。
「私は授業をちゃんと聞いていれば、誰でも解ける問題だと主張しました。その時のノートも見せました。そして『授業の最後に教授が、「古代神話集」と言うところを間違えて「帝国史大全」と言ったのは事実ですが、授業を聞いていれば、明かに言い間違いだと分かります』と言ったのです」
「私もノートを見せたニャ。そして『みんな寝ていたと言うけど、寝ていたのに何でみんなが寝ていたと分かるのかなニャ?』って言ってやったニャ!!」
これで不正ではなく、真面目に授業を受けずに居眠りをしていたということになって、皇太子たちは更にお叱りを受けたそうだ。
「それもこれも、先輩やリオネッサ将軍、閣下のお蔭です。ありがとうございました」
「まあ、可愛い後輩のためだからな。しかし、あの教授の目的は何だったんだ?」
閣下が笑いながら言う。閣下が笑うなんて珍しいな・・・
「まあ、いつか分かる時が来るであろう。その時に楽しみは取っておけ」
謎は深まるばかりだが、これ以上は追及しないほうがいいかもしれないな。何か危険な感じがする。
リオネッサ将軍が言う。
「よくやったぞ、フィオナ嬢。それにミケ殿も。それで今度は武闘大会だな?まあ、任せておけ」
★★★
訓練に入る前に作戦会議を行った。
リオネッサ将軍の見立てだが、何とかこれまでの失点を挽回しようと、皇太子たちは、なりふり構わず、汚い手を使ってくる可能性があるとのことだった。俺もこれには同意する。
「センパイ、頼んでいた仕事はできているか?」
「はい、ここに」
俺がリオネッサ将軍に頼まれていたのは、情報収集だ。
もちろん対戦相手のだ。これには教育省に勤務するマイケルに資料の提供を頼んだ。
「では、センパイの見立てを聞こうか?」
まずフィオナ嬢だが、1年足らずでCランク冒険者になるくらいだから相当な実力者だ。普通に戦っても、その辺の学生に負けることはない。ただ、不利な点もある。それは彼女が魔導士であるということだ。武闘大会はトーナメント戦で連戦となる。そうなると魔力が最後まで持たない可能性がある。
一般的にこういった大会は魔導士は不利だと言われている。連戦による魔力の枯渇もそうだが、魔道士は総じて1対1の戦闘に向いていない。冒険者パーティーでも、軍の任務でも、味方に守られながら戦うことが常だからな。その癖が抜けない者も多い。
でもフィオナの場合、冒険者としてソロ活動もしていたようだから、一般的な魔導士よりは上だと思う。問題は有力選手だ。
「・・・ということで、一般学生であれば問題はありません。問題は如何に有力選手を倒すかです。有力選手は2名、宮廷魔導士団長令息のレオナルドと第一騎兵隊長令息のアーノルドです。個別のデータは用意してありますので、訓練はその対策に当てることに注力します」
リオネッサ将軍が感心したように言う。
「なるほど・・・申し分ないな。それにしてもセンパイは凄いな。軍の参謀本部に推薦してやろうか?」
「いえいえ・・・俺は刑務官が天職ですから」
「また、それか・・・」
フィオナ嬢も言う。
「センパイは秘密の使命があるのです。ご理解を・・・」
あれ?フィオナ嬢って、本気で俺が魔法少年だと思ってないよな?
「よし、フィオナ嬢。それでは早速訓練をしよう。訓練をしながら対策を練っていこう」
こうして、フィオナ嬢の特訓が始まったのだった。
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