19 フィオナの逆襲
明日、フィオナ嬢が出所する。
今日はフィオナ嬢の実家から届いた大量の高級食材を使って、クマーラさんの本気のコース料理を味わっている。当然、ミケも参加しているし、ルートナー伯爵もいる。ルートナー伯爵は、今回の功労者の一人だからな。
「こ、これが伝説の熊山亭の味なのかニャ・・・旨すぎるニャ!!」
「これが私の本気さ。皇族方も唸らせる味だよ。いつもの貧乏節約料理とは違うよ」
リオネッサ将軍が言う。
「私はいつもの料理も好きだぞ。この料理は旨いが毎日食べるには重すぎるな」
「それはそうだよ、将軍様。これは特別な日に特別な人と食べる特別な料理だからね」
ミケは相変わらず、良からぬことを考えているようだった。
「旨いニャ・・・これで熊山亭を復活させれば、大儲けだニャ・・・」
デザートを食べ終わり、まったりしているとリオネッサ将軍が言った。
「ところでフィオナ嬢、今後はどうするのだ?」
「はい、領地に帰ろうと思っています。この状態で復学するのは気が引けます。まあ、レポートを出せば卒業資格は与えられますから・・・」
「私は反対だな。やられっぱなしでいいわけがない!!私なら力でねじ伏せるぞ。生まれて来たことを後悔させるくらいにな」
流石にこれは止める。
「将軍、出所してすぐに暴力事件を起こしたら大変なことになりますよ」
「私は何も殴れと言っているわけじゃない。合法的なやり方はいくらでもある。それに学生なんだから、学生のやり方でやればいいのだ」
「それって、どんなことですか?」
「私も学生だったから分かる。もうすぐ、二大イベントがあるだろ?」
卒業前の二大イベント、最終試験と武闘大会だ。
文官志望の学生は、最終試験の結果で就職先が大きく変わるし、宮廷魔導士や近衛隊を目指す学生は自分をアピールする大チャンスだ。
因みに俺は、文官になれる最低限の上位20パーセントの成績を取り、武闘大会の時は、大会運営委員をしていた。あまりいい成績を取り過ぎると高級文官になって苦労するし、大会に出て活躍すれば軍に入れられる可能性も出てくるからな。大会運営委員だったら、それなりに評価ポイントが入ってくるから美味しいんだよ。
ルートナー伯爵が言う。
「だったら儂も協力しよう。センパイよ、後輩を助けてやれ。それが真の魔法少年というものじゃ。ここの管理は儂に任せて、潜入捜査と称して貴族学校に行ってこい。今ならフィオナ嬢に対する補充捜査と言えば何とかなるじゃろう」
ルートナー伯爵は、未だに勘違いをしている。
俺は魔法少年ではなく、ただの刑務官だ。
「私も全面協力するニャ。最後だから、けちょんけちょんにやってやるニャ!!」
「ミケは関係ないだろ?」
「関係なくはないニャ。私には私の戦い方があるのニャ!!」
「いいぞ、ミケ殿。その意気だ。私も協力しよう。勉強はさっぱりだが、訓練はつけてやろう」
こうして、フィオナ嬢の復讐計画が始まってしまった。
また面倒事の匂いがする・・・
★★★
二大イベントの一つ、最終試験の対策は俺が担当することになった。
フィオナ嬢とミケと話し合ったところ、目標をフィオナ嬢を学年トップの成績に、更にフィオナ嬢を慕う学生で上位20パーセントを独占することに設定した。そうすれば皇太子の派閥やフィオナ嬢に冷たくしていた上級貴族の子弟たちに一泡吹かせることができる。だって、彼らの将来の選択肢の一つを奪えるからな。
まずは候補者集めからだ。
「ミケ、そんなに人数が集まるのか?かなり大変だと思うぞ。それに俺の言うことを聞いてくれるか、分からないし・・・」
俺の不安要素は試験の予想問題を作成することじゃない。
正直な話、上位20パーセントでいいのなら作れないわけじゃない。だけど、俺の予想問題を信じて、それぞれで努力してもらわなければならない。
どこの誰とも分からない俺の言うことなんて、聞いてくれるだろうか?
「その辺は大丈夫ニャ。先輩は今でも伝説の人物だニャ。それに私の顧客だけで30人はいるのニャ。3科目限定のギリギリパックの売り上げだけで・・・し、しまったニャ!!」
「ミケ!!どういうことか説明してもらおうか!?」
何のことはない。ミケは俺の予想問題を使って、商売していたのだ。
3科目限定のギリギリパックが銀貨5枚(日本円で約5000円)、主要科目すべてを含んだバリューパックが金貨3枚(日本円で約3万円)、そして全科目をカバーしたパーフェクトパックが金貨10枚(約10万円)で販売していたのだ。
「ほう・・・わざわざ高額のパーフェクトパックをメニューに加えることで、本命のバリューパック購入の心理的ハードルを下げる作戦だな?」
「我ながらいい戦略だと思うニャ。ただ、ほとんど売れないパーフェクトパックを用意するのに苦労したのニャ。自分の単位に関係ない科目まで勉強するのは、頭がおかしくなりそうだったニャ」
「おい!!お前の勉強に付き合った俺の立場はどうなるんだ!?フィオナ嬢やミケが困っていると思って・・・」
俺は知らず知らずのうちにミケの怪しい商売の片棒を担がされたことに激怒した。
「それで今回はどうするんだ?」
「今回はみんなの成績を上げることをメインにするニャ。だからパーフェクトパックのみ、金貨1枚の破格の値段で販売するニャ」
「金は取るんだな・・・」
まあ、乗り掛かった舟だから仕方ない。
俺はフィオナ嬢にも苦言を呈する。
「フィオナ嬢、ただ単に落第しないようにしたり、上位20パーセントにギリギリ入るのと、トップを取るのは全く違う。寝る暇がないと思ったほうがいい。予想問題プラス難問も解けるようにしなけらばならないんだ」
「それは十分理解しています。だから、お願いします」
「分かった。じゃあ、俺もできる限りのことをするよ」
プロジェクトは始動した。
まず、ミケが選定した勉強が得意な学生10人に俺のノウハウを教え込んだ。俺は何も特別なスキルを使って、予想問題を作っているわけじゃない。過去問や教授の癖を把握して予想問題を作っているだけだ。それに教授の立場に立つと、できれば落第させたくないというのが本音だ。貴族の子弟の親はモンスターペアレントが多いからな。
だから、授業中にヒントを出してくる。
分かりやすい例で言うと、あからさまに「ここは将来、絶対に役に立つ」とか言う教授がいる。大半の学生が「この公式が何の役に立つんだよ?この公式を覚えて、人生がよくなるなら、不幸な人はこの世にいない」と思うだろう。ここで教授が言っている「将来」は、就職してその後の人生を指しているのではない。1ヶ月後に行われる試験のことを言っているのだ。
こういったヒントはたくさんあるし、特に1ヶ月前から、多く出してくれる。
それを見逃さなければ、何とかなる。それを勉強が得意な学生に教え込んだ。結果は上々だった。俺とミケは集まった情報を分析するだけでいいからな。
「センパイのやり方をもっと前からしていればよかったニャ。時間を返してほしいニャ」
「利益を独り占めしようとした結果だ。時間効率を考えれば、このやり方が断然お得だろ?大商人はウィンウィンの精神を学ばないとな。まあ、来年も頑張れ」
「来年はもう卒業しているニャ!!」
そんな他愛ない会話ができるくらい余裕があった。フィオナ嬢は俺たちの側で必死に勉強しているけどな。
図書館の閉館時間になったので、帰ろうとしたところ、フィオナ嬢に呼び止められた。
「センパイ、少し相談が・・・トップはおろか落第しそうな科目があるんです・・・」
フィオナが落第?
一体どんな科目だろうか?
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